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世界文明

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2010年11月 4日

ロシアから帰っての印象

シェレメチェヴォ空港には新しいターミナルができた。
RIMG0301.JPG(シェレメチェヴォ空港の新ターミナル)
あの不評さくさくでロシアのイメージを下げていた(それでも1980年頃できたばかりの頃は素晴らしかったのだが)旧ターミナルと違って美しく、清潔で明るい。

ソ連崩壊後まもなく建設のプランはできたのだが、その後15年ほどもかかってやっとオープンになったのだ。中国でのインフラ建設の速さに比べて雲泥の差だ。この空港の場合、ロシア人にとっては大きな収入源になるので、モスクワ州とモスクワ市が管轄権を争い、いつまでも決着がつかなかったことが大きい。ロシアでは共産党という調整機関がもはや機能していないが故に、土地がいくら国に属していても、再開発は容易でない。それでも、モスクワの第3環状線は東京だったら建設に50年もかかるだろうようなところを通っているのに、数年で完成してしまったが。
RIMG0302.JPG(シェレメチェヴォ空港新ターミナルの内部)
で新しいターミナルでは都心行きの電車の駅まで、雨や雪に濡れることなく、屋根の下を歩いて行けるようになった。旅券審査は以前より迅速になり、係員が微笑してくれるようにもなった。

しかしそれでも、北京空港などに比べればターミナルの規模、サービスの充実度とも雲泥の差だ。荷物引き取りホールでは、荷物用のトロリーが広いホールの片方の端にしか置いていない。そして荷物がなかなか出てこない。バーはソ連時代の店のように、やっているのかいないのかわからない状態。ウェイターは客を見ようとしないのだ。

そして、自動販売機からは釣り銭が出てこない。セキュリティ・チェックの入り口ではソ連風のおばさんがどっかと座り、客のボーディング・パスにはんこを押す。その後は、彼女の前にある自動化されたゲートを通らなければならないのだが、乗客にはどのようにボーディング・パスを当てたらいいのかわからない。おばさんがそのたびに腰を上げて、乗客を助けている。

極めつけは19:40の出発時刻を過ぎたのになんのアナウンスもなく、5分もしてやっと、「日本からの機がまだ到着していませんので、出発は21:00までお待ちください」というアナウンスがあった。何のアナウンスもなく6時間くらい乗客を待たせて平気だったソ連時代に比べればましだが、それでも西側とは雲泥の差だ。客のことを誰も考えない。責任をもって現場を統括する者がいないのだ。

帰りのアエロフロートでは、日本人が多かった。ソ連崩壊後のアエロフロートに乗る日本人乗客はどこか自国の経済力を勝ち誇り、ロシア人のスチュワーデスは敗戦国の住人よろしく自信なげにサーブしていたものだが、2000年以降ロシアのGDPが7倍にもなる一方で日本経済は足踏みということになると、構図は少々変わってくる。日本人乗客はどこか疲れた、不機嫌な風情(ローマから乗って、モスクワ空港のトランジットで疲れたのだろうが)、特に男性は内にこもっていらいらしている風情だったのに対して、スチュワーデスはあと半年もするとさぞ居丈高になっているのではないかと思われた。ソ連崩壊から20年経ち、ものごとはそれ以前の力関係に戻りつつあるのか?
この20年間は、ロシアにとっていったい何だったのか? 変革のための20年ではなく、ただ沈んでいただけの異常な20年だったようだ

ロシアの空気を18日も吸ったあと、日本でCNNを見ると新鮮だ。「ああ、アメリカには『精神』がある。一定の価値観がある。公正さとオープンであることが当たり前とされる社会なのだ。もちろんいろいろウラはあるにしても」と思う。一本芯が通っている、人間としての基調がある、とでも言おうか。見ていてほっとするのだ。

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