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世界文明

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2017年12月19日

日本 モデルのメルト・ダウン 製造業の実相

(これは12月12日発刊のNewsweek日本語版に掲載された記事の原稿です)

 日本の経済を支えてきたのは、製造業が稼ぎ出す富。しかしこの頃は、家電、パソコンの多くは中国や台湾企業に売りに出され、テレビや携帯電話もサムソン、アップルなどに席巻されている。電気掃除機まで英国のベンチャー企業、ダイソンが幅を利かせる。東芝は言うに及ばず、三菱や日立の重電部門も世界では、シーメンスやGEのはるか後塵を拝する。日本の企業は正直が取り柄だったのに、神戸製鋼所や日産等は製品の性能を偽っていたり、品質検査をごまかしていた―製品は問題を起こしていないようなので、基準設定の方に非現実的なところがあったのかもしれない―ことが明らかになっている。安泰に見える自動車も、米国や中国の企業に電気自動車という新しいパラダイムを強いられて、新規まき直しの戦いに臨んでいる。ロボットは日本が「進んでいる」と思っている人が未だに多いが、対話ロボット「ペッパー」の頭脳はフランスのベンチャーが開発したものだし、身体部分は台湾の鴻海-シャープを買収した企業―が、中国の深圳で組み立てている。

日本は大きな新しいシステムをゼロから考案するよりも、今あるものを「磨く」ことに長ける。しかも、英語力に決定的に欠ける。だから金融や、コンピューター・ソフトの制作では米欧中の後塵を拝し、今ますます激しくなっているサイバー・テロの防止策についても、世界の議論を引っ張れない。

日本の製造業は今、大きな曲がり角にある。しかし状況は、各分野、そして各企業で異なる。市場・工場の現場を知る努力をせず、これまでの枠の中でつつがなくやっていくことしかできない「優等生」的経営陣しかいない企業は、軒並み駄目だ。また、いくらヴィジョンがあっても、大きくなり過ぎ、いろいろなものを作り過ぎている有名大企業では、有望な商品にヒトとカネを集中できず、韓国や米国の企業に負ける。

そしてもう一つ。政府や公営企業からの指示や注文に依存してきた企業は図体は大きいものの、世界での人脈を欠くために、グローバルな競争では市場のニーズも把握が不十分、かつ営業力を大きく欠く。それは、国内の電力会社の注文に依存してきた重電諸企業、そしてNTTドコモを向いてしか携帯を開発していなかった家電各社のことである。

戦後の日本企業はみなブラック。残業に次ぐ残業で生産性を上げ、実質はチープ・レーバーでのし上がって来たのだが、1985年のプラザ合意で円レートを二倍に押し上げられた上、90年代には中国という本場のチープ・レーバーが出現、自分の工場はなくとも頭だけで斬新・画期的な商品を設計する米国企業が日本などから最良の部品を注文、中国の工場でこれを組み立てる鴻海やTSMCなど台湾の組み立て受託専門(EMS)企業と組んだから、日本企業はたまらない。日本経済は、と言うより日本の企業人材は、根底からの叩き直しを迫られているのだ。

幸い、状況はブルー一色ではない。富士フィルムはデジタルへの移行を予見して早くから業容転換をはかった好例だし(米国のコダックは倒産している)、コマツでは現場からたたき上げた社長達が商品をグローバルに展開する態勢を早くから作って来たし、東レはヒートテックや炭素繊維に軸足を移し、セーレンは絹の成分に眼を付けて繊維から薬品企業に脱皮、そして生活用品製造販売のアイリスオーヤマは新しい需要を自ら創出する意気込みで、今や家電の新たな雄になりつつある。

そして家電や携帯電話でも、部品の分野では日本の優位が変わらず、中国や韓国の企業も村田製作所TDKなどの先端部品なしには、優良な製品を作れない。日本の企業は、電子部品の世界生産の3分の1以上をまだ占めている。そして、これら部品を組み立てて最終製品にするための機械の生産でも日本は優位を維持しているし、人間との会話はできなくても複雑な作業を迅速にできるロボットの分野では、FANUC安川電機などが世界の先をいく。これからのIoTの時代、日本は多量の情報を処理するプログラミングでは負けるかもしれないが、モノやヒトに装着するセンサーの開発では、ソニーキーエンスなどが頑張っていくだろう。

もっとも、こうやって国に分かれて、企業の浮沈に一喜一憂する時代はいつまで続くだろう? ブロックチェーンで決済を一元化、そしてロボットで大量生産ができるようになれば、企業が地元にあろうがあるまいが、人々は一様に豊かになるのでなかろうか。
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