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世界文明

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2017年8月18日

チェレプニン教授の思い出 ハーバードと音楽と日本と

「ハーバード大学は『音楽』で人を育てる」(菅野恵理子著)という本が評判になっている。

それで僕もずっと昔の留学時代のことを思いだす(と言うか、心は今でもあのあたりをさまよっているのだが)。外務省からハーバードに留学に送られて、ソ連のこととロシア語を徹底的に勉強することとなった。朝から晩まで図書館、食堂、教室、寮の間をうろうろするだけ。24時間開いているすさまじい図書館が近くのMITにはあった。

これは、頭脳にとっては大変な負担なのだ。「ソ連研究」と言うと、ロシアの歴史から、革命後の歴史、そしてソ連の計画経済、何のかんのと、嫌いじゃないけど、たまらない。誰が何年に銃殺されて、誰がマルクス主義とかいう大袈裟なことを考え付いて国民全体に実験し、その結果大失敗するというようなことを延々と読むのだ。心がひからびる。その時、心のオアシスだったのが音楽だったのだ。

ハーバードには音楽学科というのがあって、そこは作曲、楽理を教えるところとしては世界有数。ロースクールの横に立つ、赤っぽい小さなレンガの二階建てが音楽学科。僕はクラシック音楽が好きなので、これを理解するには作曲を学ぼうと思った。で、何とかクラスにもぐりこんで――そこには今の世界的チェリストのヨーヨーマがいて、当時から皆のアイドルになっていたけど、僕はそんなこととは知らず、失礼しました――、2年間和声とか対位法を習ったのです(習うことと、ものにすることとは違います)。

1年目はアルメニア系の女性のヴォスガシアン教授。名物教授で、僕を何とかクラスに入れまいとしたのだけれど、根負けして聴講生にしてくれた。そして2年目がイワン・チェレプニン教授。彼のことを書こうと思って、この文章を書いている。

チェレプニン教授はなぜか東洋的な顔立ちの人。すらっとしてかっこよかった。彼は、バッハのコラールを徹底的に教えてくれた。バッハのコラールは和声法と対位法の百科全書のようなものだからである。僕も一回、全くの偶然で良いコラールを「作曲」して誉められたのだが、それからは全く鳴かず飛ばず、いつも「コラ」程度で終わっていた。で、最近インターネットで発見したのだが、このチェレプニン教授は日本と少なからぬ因縁を持っている。

彼の父アレクサンドルはサンクト・ペテルブルクにいたロシアの作曲家。祖父も作曲家。
ロシア革命で一家は亡命。日本、中国でも長期間過ごし、日本には1934ー37年滞在。その時父アレクサンドルは伊福部昭、早坂文雄、江文也等の作曲家を育て、出版社も立ち上げた(以上、Wikipedia等による)。

そして中国にいた時に、父アレクサンドルはピアニストのLee Hsien Mingと結婚している。だからイワンは中露混血だったのだ。でも、生まれたのは1943年フランス。僕がボストンにいた1972年に、ハーバードのElectronic Music Studio長になっていたのだそうだ。知らなかった。そして彼は、1998年ボストンで若死にしている。1996年にはDouble Concerto for Violin, Cello and OrchestraでGrawemeyer賞を受けている。子息のセルゲイとステファンも音楽家なのだそうだ。セピア色の思い出。懐かしい。

因みに冒頭の「ハーバード大学は『音楽』で人を育てる」という本は、音楽を情操教育にシステマチックに使っていることを描いているようだが、それだったら日本の大学でもやっていた。東京大学の駒場に教養学科というのがあって、これは3年、4年になっても法律、経済、文化などの境界に縛られず、いろいろな科目を勉強するLiberal Artsの場なのだが、ここではその後国立音楽大学の学長になった海老澤敏さんが「モーツァルト論」の授業をやっていた。で、悪いけど、これが一番面白い課目だったのだ。
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