Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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世界文明

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2020年8月29日

メルマガ文明の万華鏡第100号発刊

26日に、メルマガ「文明の万華鏡」の第100号を発刊しました。その冒頭の部分をここにアップしておきます。
今日28日は、安倍総理が辞任表明をした日として歴史に残るでしょう。いろいろ問題はありましたが、かけがえのない総理でした。近衛氏と同じで、3回目の登場があるのではないでしょうか。

はじめに

このメルマガも遂に100号。8年と4カ月というわけです。定期購読いただいている皆様に感謝申し上げます。この8年余、世界はどんどんほどけてきている感じで、今はコロナもあって混乱も極まれりというところ。その割には、生活は落ち着いているので、この乖離はいったいどうしてかと思う今日この頃です。

米国は言うに及ばず、中国習近平政権もこの頃は鳴かず飛ばず、韓国・北朝鮮も手詰まりの様相を強めています。ロシアではハバロフスクで反政府デモが続きましたし、ベラルーシでは大統領選挙の結果に抗議するデモが吹き荒れました。しかしロシア、ベラルーシとも、適当な「役者」が野党にいないことで尻すぼみに終わっていますし、経済、日常生活は安穏に続いています。中国やロシアでも、見回してみれば、生活はけっこういいし、言論の自由もけっこうある、というのが実相でしょう。それは、政府が数年も放置していた爆発性物質が大爆発を起こしたレバノンでも、同じこと。もっとも、ここでは、家を爆風で吹き飛ばされたとかいうゴーン氏が今どうしているか興味があります。

日本でもリーダーシップの消滅、大袈裟に言えば無政府状態への傾きが顕著です。「官邸補佐官」たちが総理のためということでいろいろ思い付きをしかけては失敗し、すっかり総理の顔に泥を塗ったことと、二階自民党幹事長が岸田氏の幹事長就任を阻止するために動き回っていること、それに総理の健康問題が絡んできたことが主な原因でしょう。このメルマガ第100号も、安倍総理の辞任表明と同時、ということになりかねません。

にもかかわらず、東京の道路は渋滞だらけ。4-6月のGDPは年率換算で年率27.8%下がったというのが、どこの国の話しかと思わせるものがあります。それでも、コロナがいつ収まるかわかりませんし、それまでいろいろな企業、組織でもたないところも多数出てくるでしょう。そこから生じる多数の失業をどうするか、受け皿を整える必要があります。農業、宅配などが「避難先」になるでしょう。落ち目の新聞配達店を業容転換し、活用していくチャンスでもあります。

コロナでテレ・ワークが定番に?

 「コロナ後の経済・社会・世界はまったく違ったものになる」という議論が出回っています。その中で一番多いのは、「在宅勤務が一般的になる」というものです。これは、大袈裟なのではないかと思います。大きな事業をやろうと思ったら、組織を作らざるを得ず、組織は成員同士よく知っていて、信頼関係がないと(憎みあっている方が多いかもしれませんが)よく動かないもの。そしてそのためには、日ごろ同じ場所で顔を突き合わせている必要があります。営業職ももちろん、顧客との関係は在宅では成り立ちません。

従って、「どこかの企業に就職したが、ずっと在宅勤務」というのは、ごく一部の職種に限られるわけです。だからコロナ明けには、祝いの飲み会で、その頃まだつぶれずに残っている居酒屋はてんてこ舞いの忙しさになるでしょう。以前に戻ろうとするバネにはすさまじいものがあり、1週間で多くは元に戻るでしょう。

なお、居酒屋、レストランライブ・ハウスなどは今後も新種の感染症が出てくるのに備え、「常時消毒」の体制をとっておいてほしいです。そのためには、消毒機能つきのエア・クリーナーを備えるのがいいでしょう。殺菌能力の強い紫外線を室内に照射することなく、機械の内部だけで照射することで空気を殺菌するクリーナーも、できています。

学校のあり方こそ、考え直す好機

学校はどうなるでしょう? これまでのままでいい、とする人たちは 「学校は知識を伝えるだけの場所だけではない。子供を預かって親の手間を軽くする機能もあるし、子供が仲間の中で揉まれて人間関係形成の訓練をする場所でもある」と言うでしょうが、何かそれだけでは納得できないものがあります。

コロナの前から、先進国での学校教育は小学から大学まで、時代に後れてきていたのではないかと思います。子供をやたら子ども扱いして、知識をちびちび伝えるのにやたら時間を使っている。歴史や社会など、同じことを何回も教えているのは馬鹿らしいと思います。近い将来には、一定の知識はUSBから脳にアップロードできるようにもなるでしょう。ですから、例えば「学校はモノの見方、分析の仕方を習うところだ。教科書、カリキュラムはそのように変えて、クラスの編成も変える。そして放課後はスポーツ・文化・社会奉仕などの活動で人間関係の中での生き方を学ぶ」というような観点に立って、果敢、かつ柔軟に変えていかないといけないと思います。そしてそのためには、何よりも教師の再教育が必要になります。

コロナ後も変わらない課題

 コロナ後も変わらない世界的な課題は、いくつもあります。一つは、格差の増大を止めることです。産業革命、つまり工業化は比較的賃金の高い工場労働者の大群を生み出し、彼らは中産階級を構成して近代民主主義の基盤となってきたわけですが、一部の先進国で製造業が海外に流出、つまり空洞化したことで、中産階級までが空洞化することになりました。

米国などは金融・ITサービス業で経済を回すようになっていますが、この2部門は雇用人数も製造業に比べて小さく、かつ上下の所得格差の大きな部門です。その結果、かつての中産階級が経済的に困窮したことが、多くの先進国でポピュリズムを増長させていますし、消費不足から成長率の低下と慢性デフレ傾向を招いています。

 格差の問題は、賃金水準の高い職を大量に作るか、カネを広く配るか、どちらかの方法でしか解決できないでしょう。しかしAI、ロボットの発達に伴って、賃金水準の高い職は益々減ってきます。一方、AI、ロボットの下働きのような職(例えばAIに読んでもらう資料を選ぶとか)は増えてくるでしょうから、これに高賃金を出すのが一つの解決策でしょう。しかしそれでも数はさばけないでしょうから、そうなると「最低所得保証」のような、カネを配るやり方が必要になってきます。そしてこれは、後で触れる、「緊縮財政の見直し」につながるでしょう。

 次に、気候変動への対処が非常に大きな課題として残っています。一言で言えば、度を越えた風害、水害、暑熱への対処です。二酸化炭素を減らすことだけに注意が向けられていますが、これは最近の気候変動の主因ではないでしょう。今の気候変動は人間の力が及ばない自然の変化によるもので、こうした変動は地球史上何回も繰り返されてきたもの。二酸化炭素を減らす努力は、新エネルギー源の開発などで経済を活性化させるでしょうから、これからも続ければいいのですが、これで異常気象がなくなると思ったら間違うでしょう。堤防や家の強化など、風害、水害、暑熱害に対する措置をもっと充実させる必要があります。

 AIの将来も、大きな問題です。AI、ロボットが人間のやることの殆どをやる社会では、最先端を開拓する人間の他は、「毎日ごろごろして」いればいいはずで、それは人間の退化を意味するからです。既に退化している人間もいますが。
閑になった人間は「創造的なこと」をしていればいいという人もいますが、一億みな画家、ピアニスト、コラムニストになっても、聞き手、読み手がいないでしょう。多分、「全員閑居して不善を成す」になるのだと思います。

コロナを契機に変わりえること

 コロナを契機に変わるかもしれないこともあります。まず政治。現代の先進国社会で潜に進んできた、「政治家は実はいらないのだ。いなくても経済・社会は回る」ということが、コロナで露になりました。政治家が機能してもしなくても、ゴミ収集車がちゃんと来れば、電車が動けば、郵便・宅配便が機能していれば、電話・インターネットが機能していれば、スーパーがやっていれば、生活は支障なく回っていきます。

何か、予算の使い道を大きく変えるような時には、政治家が必要になる、と言うか、そのことを「あいつの言うことなら」と国民に納得させることのできる「役者」が必要になるわけで、それだったら国会とか国会議員とか金をかけて維持しておかなくても、どこかの興行事務所からテレビ映りのいい「政治家」役のタレントを借りて来ればいいのです。

 次に、コロナの時、経済救済のために先進国政府はどこも多額の資金を社会に出しましたが、普通こういう場合に起きるとされるハイパー・インフレは起きていません。消費者から企業や商店に回るカネの量が減っている、その分を政府が紙幣を印刷して補ってあげましょうということなので、市場に出回る紙幣の総量は変わらない、インフレは起きない、ということなのでしょう。限度の問題はありますが、これまでの緊縮財政至上主義は見直し、新たな限度をどのあたりに置き、それをどうやって守っていけるようにするかを議論するべきだと思います。
 安倍政権後は、これまで抑えつけられていた財務省が、均衡財政原理主義を振りかざして、新しい首脳陣を祈伏にかかるでしょう。日経によれば、稲田朋美幹事長代行はそういうことを安倍首相に言って、斥けられているようです。
ということで、今月の目次は以下のとおりです。

世界メルト・ダウンの諸様相
  (米国)
(同盟国に突き放されたトランプ外交)
  (沈黙してしまった習近平中国)
  (推進力を失ったロシア、旧ソ連諸国)
  (朝鮮半島情勢もガス欠)
 この15年、当てた予言、外した予言
 国際情勢への註: 「中ロ貿易でドル決済分が急減」
 国際情勢への註: イランはホルムズ海峡閉鎖を準備?
 今月の発見: バングラデシュにサイが住んでいる!
 今月の随筆:われらが共通の祖先「ルーシー」叔母さん

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