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経済学

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2011年5月25日

原発なしで電気をやっている国々

原発をめぐる議論が、誰が何を言った言わない、やったやらないの問題にすり替えられようとしている。そりゃ責任問題は重要なのだが、これからどうするのか、いつ冷却水用パイプがずれて過熱し放射能を漏らすかもしれない原発が50以上もある狭い国土で暮せというのかどうか、「原発なしには電力が十分供給できない」の一言で思考停止して、次の地震では狭い国土の中を放射能から逃げて右往左往しろというのかどうか、はっきりして欲しい。

この有様では、原発が立地する地方自治体は多額の交付金がもらえる、マスコミは年間200億円にも及ぶ東電の宣伝費が欲しさに原発叩きを抑え――云々の週刊誌報道が正しいということになっていまう。

僕には、15年ほどかけて原発を完全撤廃していく途上で、日本経済に代替エネルギー源普及という新たな需要を起こすことができるし、売電とスマートグリッドを組み合わせることで供給増と供給の安定の双方を確保することもできると思う。それでは化石燃料を使わざるを得ず、CO2排出が増えるという向きもあるだろうが、原発なしに石炭発電に多くを依存しているオーストラリアのような例もある。

それに、責任の所在があいまいで、しかも強力なリーダーができない日本の社会では、原発のような巨大装置は危ないことこの上ない。近代的軍隊とか「国民国家」などの巨大装置を扱いきれなかったから、アメリカと戦争するような羽目に陥ったのではないか。

とは言っても、僕は専門家じゃないので、ここではいくつか、もっとフォローするべきと思われる点を列挙しておく。本来なら、経済産業省とか、他ならぬ民主党自身とか、「仕分け」の蓮舫大臣から、もっとダイナミックな提案を聞きたいのだが。なぜかそうなっていない。原発撤廃は一部の野党勢力が標榜するところとなっているが、民主党とか自民党はそれでいいのか? 原発への懸念は社会に随分広がっているから、票としては随分なものになるのだが。

いっそ、この腐った戦後の惰性社会を作り直すために(たたき壊すのではない。原発で雇用対策をしていた県には、水素製造プラントとかスマートグリッド用機器製造工場などの立地を優先的に行うような配慮が必要だ)、青年たちがたとえばNPOフランチャイズ方式で政党を作ったらどうだ? 「それ、ホントに必要なんですか」というコピーの下に、我々は倹約を強いられようとしているが、これではじり貧になるだけだ。原発政策についてこそ、「それ、ホントに必要なんですか」と聞きただし、新しいエネルギー体制を作っていくべきだ。

(1)大企業の自家発電能力、関東だけで750万キロワットの余力4月22日の日経によれば、関東地区には約1640万キロワットの自家発電設備があり、昨夏の平均稼働率は5割強で、計算上は約750万キロワットの余力があるのだそうだ。原発1か所分くらいに相当する。三菱化学は7月から、鹿島コンビナートの自家発電設備で発電した電力のうち20万キロワットを東京電力に供給する。

(2)原発のないニュージーランドのうち北半分(南半分は電力の殆どを水力に依存)は09年10月現在、水力に27%、天然ガスに34%、石炭に13%、地熱に19%(日本は世界3位の地熱大国なのだそうだが、地熱利用のためには国立公園関連規則を変え、温泉業界の反対も説得しないといけない)、風力に5%(ニュージーランドは風が強い)を依存している(Wikipedia)。発電は自由化されていて、電力料金は変動制のようなのだが、まだ資料を読んでいない。多分、日本の方が電力料金は高いのだろうと思う。

同じくオーストラリアは07~08年現在で、石炭に発電の76%(この国は石炭大国だ)、天然ガスに16%を依存している(デンマークも原発がないが、不足する場合は周囲から電力を輸入している)。

(3)「原発は発電コストが安い」と言うが、補償金とか廃棄の費用とかを含めると割高になる。原発の代わりにLNGで発電しても、費用はそれほど変わらないのでは? 仮に少々高くなったとしても、安心して住め、経済活動もできる国にした方が、外国も日本と取引しようという気になって、株価も上がってくることだろう。

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