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経済学

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2023年12月17日

「少子化だから縮小」の自縄自縛  阿呆かと思う

(これは11月末発行のメルマガ「文明の万華鏡」第139号の一部です)

 人間は何か悪いことがあると、その原因を見つけようとする。それはいいのだが、何か変わったことを言われるとそれに飛びついてしまうことがある。「誰もそういうことは教えてくれなかった。政府は隠しているのだろう。これこそが、政府の隠していた真相なのだ」というわけで、日本経済停滞の原因として少子化が定説と相なった。「人間の消費がGDPを決める。だから人口の多い国は経済大国、人口の小さい国は小国となる」というわけ。

2010年に出た藻谷浩介の「デフレの正体」は、労働人口の減少が日本経済の成長率低下の原因だと評して、日本人の見方をすっかり縮小指向に変えてしまった。この本が出たあとも、女性の就労率上昇、高齢者の就労増加で、日本の労働人口は増加を続けたのだが。
 
もうかる商品、サービスを増やせば、少子化でも経済は成長する

 藻谷氏は、自分は経済理論の専門家ではないからといつも卑下する。その通りなので、彼の主張のおかしさは、別に経済理論を知らなくても、常識でわかる。自分の属する企業の製品、あるいはサービスが世界でも非常に進んでいて、高値でも売れる――こういう企業がいくつもあれば、その国の人間の給与、一人当たりの所得は高いものになり、少々人口が減少しても経済規模は縮小しない。

端的に言おう。15世紀、人口20万のヴェネツィアは、人口約2000万のフランスに匹敵する政府歳入を有していた。ヴェネツィアはビザンチンと西欧、オリエントと西欧の間の通商をほぼ独占して大きな利益を上げていたからである。一人当たりの平均所得が、農業中心のフランスの人間の平均所得をはるかに上回ったのだ。

「縮み志向でも分配は待望」の身勝手

見ていると、「そんなにやらなくていいではないか」という人たちは、「生産性を上げる」の意味を「もっと働け」と言われたものと勘違いしている。そうではないのだ。低賃金や超過勤務で「生産性を上げて」いたのは、戦後の話し。今は、「一味違う」製品、サービスを生産することで効率よく利益を上げようということなのだ。

と言っても、そういうことのできる人間の数は限られているので、大多数は既存の体制の中で働くだけでいい、ただ賃金はしっかりもらって消費に向け、それで経済を回してほしい。一方、今の枠を超えて先を拓く意欲のある者には、一味違う製品、サービスを開発する環境を整備し――融資、研究設備など――、大いに稼いでもらい、それを再投資、そして税の支払いに向けてもらう。
それが「生産性を上げる」ということの意味なのだ。

国際化待ったなし

 そして、国際化は待ったなし。もう五十年ほども、「国際化」や外国語学習の必要性が叫ばれているのに、社会のマインドに大きな変化はない。日本では、外国語の知識が生活必需品ではないから――ヨーロッパの小国では英語ができるのは当たり前のことになっている――、いつまでたっても別物扱いが続く。

この頃はAIが発達しているので、「もう英語は勉強しなくていい」という安心感も見られる。しかし、AI同時通訳で外国人との間に信頼感を作り出すことはできない。企業は、国際要員の確保、彼らのキャリア・パス、彼等への権限譲与にもっと真剣に取り組まないといけない。

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