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街角での雑想

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2011年12月11日

米国をめぐる好悪の対立は日本を滅ぼす

最近の、TPPについての議論を見ていると、論者が反米かどうかで随分議論の方向が決まっているようだ。「アメリカをアジアから締め出して」アジアだけで話をつけようと提唱する者、逆にアメリカをアジアに引き込んで中国を抑え込もうとする者、この二つが勤皇・佐幕、あるいは戦前の英米派と大陸派(中国と仲良くするというのではなく、大東亜共栄圏的発想で日本が大陸を席巻するという思想)のように相争い、結局アメリカ、中国両方とも敵に回してしまうのではないか? 少なくとも、それが戦前起きたことだった。

戦前の英米派は中国侵略に反対していたが、戦後は冷戦が始まったことで、外交の対立軸は一変した。英米派はもはや親中ではあり得なくなった。代わって親中になったのは、戦後「世に出た」マルクス主義の知識人層である。そのマルクス主義勢力・親中勢力は反政府勢力でもあった。大衆は外交路線を考える時間もなかったし、所得増大をもたらした日米同盟路線を概ね是認していた。

1985年プラザ合意と冷戦の終焉で、日本は世界の荒波に突き出された。米国との関係から得られる経済的メリットが減ったのである。更に2009年には、日本の政権が民主党に交代した。民主党の中には、かつての反米・反(自民党)政府・マルクス主義勢力が多数いる。彼らは普天間基地移転をめぐって米軍常駐不要論を展開し、東アジア共同体を形成して米国をアジアから除外しようとした。

そしてこれまで日米同盟を容認してきた大衆は、バブル崩壊以来20年も所得が下がり気味、雇用も危ないという状況で、その「犯人」を無意識に探している。自民党、大蔵省、外務省を血祭りにあげ、今その矛先は日米同盟、と言うよりは日米同盟を支え、ここから甘い汁を吸ってきたかに見える「日本のエリート」全般に向けられる。TPPへの反対は、そうした大衆を反米の方向に動員する可能性を持っている。

日本はこうして、国論が憎悪さえ伴う分裂状態を示し、何も決定をすることができないまま推移していくだろう。米国は、海兵隊を中心として、日本駐留を減少させ、これをアジア全域に「分散」させると同時に、陸海軍についても日本でのプレゼンスを更に縮小して有事駐留の方向に転じようとするかもしれない。

戦前は関東軍の独走を止められなかったが故に戦争に至ったが、今回は関東軍はない。その代わり、何も決めない日本は、中国などから恫喝されても米国は守ろうとせず、かえって中国と取引をして、日本を実質的に分割管理しようとするかもしれない。その方が日本に米中の間でふらふらされるより、米国にとって安全だ。たとえばキューバはソ連陣営に入ったが、米軍の基地は今でもある。

このような状況のなかあと数年で、中国がGDPで世界一になるだろう。これは、既にぐらついている日本の世論を、いや民主党政権自体を大きく揺らすことになるだろう。そして米国自身も、揺れるだろう。

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