Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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街角での雑想

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2024年5月 7日

日本経済が地位を下げている理由

(これは4月末発行のメルマガ「文明の万華鏡」第144号の一部です)
 
 この頃の日本では、GDPでドイツに抜かれたとか、来年はインドに抜かれるとか、やる気がなくなるニュースが相次ぐ。過度の円安でこうなっているのだし、一度貯えた富は増えていくから、後続者がこれを抜くのは簡単ではないのだが、日本人の十八番、製造業が随分海外に流出した現在、成長力が落ちて、次第に抜かれるのは仕方ない。いちばん大事なのは、我々の生活水準。20年前に比べれば、新築の住宅の水準など随分上がったし、空前の数の外国人観光客は、日本が気持ちの良い社会であるからやってくる。

リーマン危機直後、利下げの後れで円高⇒製造業の海外流出とデフレ傾向

 1985年のプラザ合意後の円高で輸出の増加を止められ、1991年のバブル崩壊で内需も大きく失った日本は、以後万年危機で、金利は低水準に貼り付いたまま。短期プライムレートは1990年に8%だったのが、1993年には2,4%、95年には2,0%、リーマン危機直前には1,8%にまで落ちていた。

 リーマン危機で、米欧の中銀は協調して果敢な利下げに出て、連銀は2%を1,5%に下げ、半月後の10月31日には1%に下げる。12月16日には実質ゼロの水準に下げた。日本では、短期プライムレートは2009年1月になっても1,475%あり、米国に比べて金利水準が高くなる。これで円高になり、2008年には1ドル100円ほどだったのが、2013年には80円を割る。これで製造業を初め、日本の企業は海外への流出度を大きく高める。

 リーマン危機で日本企業への海外からの注文はぴたりと止まって、日本のGDPはこの時、円ベースで約8,3%(2007年から2009年にかけて)縮小している。更に製造業が海外に大きく流出したので、それによってもGDPは縮小した。

 2013年、安倍新政権の下で始まった異次元の金融緩和で日銀はGDP1年分に近い国債を買い込む。19世紀初めナポレオン戦争の際のイングランド銀行、第2次大戦時、米連銀による国債買い入れのマグニチュードに等しい。平時には異例のことだ。この異次元緩和で金利はマイナス水準となり、円は「下がって」(当時にしてみれば)、1ドル110円と120円の間を推移するようになる。

日本と欧米、異次元価格体系が生み出すねじれ

 このリーマン直後の数年で、欧米と日本は国内の価格体系が文字通り「異次元」のものになっていく。欧米ではインフレが続き、賃金もそれに追いついていったのに対し、日本ではモノの価格も賃金も変わらなかった。2008年から2022年にかけて、米国での消費者物価指数の上昇は合計で47%に達している。その間、米国の名目GDPは実にほぼ倍増しているのだが、その半分は水ぶくれだったことになる。

 言ってみれば、欧米はインフレを容認することで経済を維持し、日本はデフレによって生活の安定を維持したのだ

 2022年2月ウクライナ開戦で原油価格が急騰、インフレ上昇の引き金を引いたため、米連銀は利上げを開始する。日銀はこれに追随したくとも、利上げは中小企業の財務を悪化させるのでできない。そこを投機家はついて、円売り、ドル買いで円安を助長する。日本は自ら小さくなり、かつ小さく見えるように振舞い、そこを外人投機家にもつかれたのだ。

 円は下がり、日本のGDPの順位はどんどん下がっていく。しかしこれに反比例するかのように、外国人観光客の数は増えていく。それも先進諸国からの観光客が。彼らは以前、「日本という後れた、封建主義の残滓をひきずる国のチンケな神社や寺でも見物に」という感じだったのが、この頃は日本の文化、日本人の生活ぶりに憧れてやってくる。日本のマンガ、アニメに幼時から親しんで、日本への違和感を持っていない。

日本の都市は清潔で便利で店での対応はきちんとしている。人々は(一応)幸せで自由に見える。異民族の出稼ぎと高物価と格差の増大に悩まされる米国、欧州の連中には、今の日本はエルドラド、しかも低物価なのだ。

平均賃金は日本が約2000ドル、ドイツが約4000ドル。しかしビッグ・マックの価格は日本が3,17ドル、ドイツ(ユーロ圏)が5,82ドル。米欧は高賃金だが、それに見合って高物価。実質的な生活水準で、差はない。先方の価格表示が二倍になっているだけのこと。日本はまだまだ、以前の高度成長の残映を残している。 

今できること、やるべきことはある。まず第一に、「何くそ」という負けじ魂が大事。冷静に状況を分析して、熱い心で取り掛かる。連携・協力を大事にする。「海外」を常に忘れず、利用し、利用され、競争し、協力する。

「成長はもういらない」と言うのは自由だが、そういうことはそういうのが好きな人たちだけでやって欲しい。筆者はもっと稼がないと外国旅行もできないし、このままじっとしているのは嫌だ。

そして成長したらもちろん、税をきちんと払って利益をお裾分けすればいいのだ。米国のように、強い者、何かを考え付いた者は利益を独り占めしていい、都合が悪くなったら従業員はクビにすればいい、路上生活者になろうが知ったことか的なやり方は、キリスト教信者とは思えない。


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