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街角での雑想

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2018年10月18日

安倍政権長期化  立ち腐れより捨て身の改革を

(これは、8月7日発売のNewsweek日本版に掲載された記事の原稿です。時間がたっていますが、内容は古くなっていないと思います)

 9月には自由民主党の党大会があり、安倍晋三総理は多分、総裁に三選される。任期は3年。来年夏参院選で大負けする等ハプニングがなければ、2012年12月の就任から2021年9月まで合計約9年、大叔父の佐藤栄作の8年弱を抜き、日本では超長期政権となる。

とは言え、この長期政権を支えるものは、あまりにもひどかった民主党政権、あるいは政権交代への幻滅、拒否反応で、安倍総理個人に対する期待はさほどない。国民は、政府が適度に金融を緩めて景気を適度に良くしてくれればそれでいいので、あとは「とにかく静かに」やってくれればいいのだ。

長期政権は必ず腐敗し、ほぼ必ず勢いを失う。既に18年政権の座にあるロシアのプーチン大統領も、社会にみなぎる閉塞感をどうにもできずにいる。日本でもモリカケ問題や「カジノ法」採択に見られるように、権力者に群がる有象無象が次々に自分の野望を実現しようとしては、ボロを出す。

2012年発足したばかりの安倍政権は清新だった。日本を建て直すのだという気概があったし、また政権を失うことがあってはならないという緊張感・自制心もあった。外交は中国、韓国が抜けた片肺飛行だったが、オバマ米国と何とか関係を維持し、それなりに「日本」を世界に示すことができた。しかし今や安倍政権は、日本の建て直しよりも政権存続を自己目的として動いている気味がある。

従って、三選された安倍総理自身が何か斬新なアジェンダを打ち出さないと、折角の長期政権も、官僚・側近が小手先の「新政策」で国民の目をくらます中、有象無象が積み残しの利権案件を実現するのに使って終わってしまうだろう。

新機軸を

幸か不幸か、日本をめぐる内外の状況は様変わりしている。これまでの常識や、政治の進め方はもう古くなった。まず米国のトランプ大統領が、外交から理念を追い出し、大衆の「こうすればいいじゃん」的直観に基づいた外交を展開しつつある。北朝鮮もロシアも、首脳同士が握手をすればもう敵意は失せるので、「ロシアが攻めてくる」とか言って、大げさな同盟体制を組む必要もなくなるのである。世界では、首脳外交を前面に出し、機に応じて提携相手を敏捷に変えていくスタイルが目立つようになるだろう。日本外交は米国だけ見ていればいい時代は終わったのである。

経済ではトランプ関税によって、「中国でモノを安く作って欧米に輸出する」モデルが過去のものになりつつある。これからは「地産地消」がもっと重要になっていくだろう。そのためには日本企業も、世界のどこででも自社ブランドの製品を安価に製造できる体制を作っていかねばならない。

そして日本国内では、アベノミクスの賞味期限が過ぎているという問題がある。トランプが最近のドル高を批判したこともあり、これからは円高基調になっていこう。円高になれば、「消費者物価2%増」という目標の達成はほぼ不可能となる。そうなれば、アベノミクスも目先を変えなければなるまい。

課題はいろいろある。しかし課題を手堅く処理していくのは官僚のすることで、総理には社会を明るく、活力の満ちたものにする方向での旗振り役が期待されている。そのためには若者に焦点を当て、若者にわかる言葉で語りかけて欲しい。変にすり寄ることなく、同じ高さの目線で。

若年層が進んで働くようになれば、それは老年層の生活改善に必ずつながる。そして老年層自身が孫達の将来に貢献できるような仕組み(例えば孫への相続の免税拡大とか、老人が学校で自分の人生・職業経験を生徒に話すとか、生徒とともにディベートするとか)を公募で考えたりすれば、老年層に疎外感を持たせず、前向きに社会に関わり続けてもらうことができる。
それは同時に、政治家の世代交代にもつながることだ。安倍政権第三期の主要な任務は、次の世代にバトンを継ぐことでもある。今安倍総理の対抗候補と目される政治家の多くは、2021年には賞味期限を過ぎている。小泉総理が昔安倍晋三氏を意図的に育てたように、安倍総理にとっては若い世代を後継者として育てることも大きな使命となるだろう。

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