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街角での雑想

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2017年2月 2日

インフレ期待をあおれば 路線はハイパーインフレへの道ではないか?

最近、浜田宏一内閣官房参与などがかついでいる「シムズ理論」なる理論がある。マイナス金利は金融緩和のようでいて実際にはデフレにつながる、それよりも財政赤字を適度なレベルに導いて、それによって世間のインフレ期待を確保し、企業の投資意欲をかきたてろ、当面消費税増税などはもっての他、という御「理論」なのだそうだ。ノーベル経済学賞ももらったシムズ・プリンストン大教授の言うことだから、確かなのだと言うが、社会科学の「理論」、特に経済学の「理論」は眉唾。複雑極まる現実の一部を切り取り、都合のいい前提をつけてもっともらしい数式に仕立てているだけだ。

これまでのケインズ理論(財政支出で、不足している需要を補う)はもう時代遅れ、効かないではないか、ということで、このインフレ期待論は登場してきたらしい。だが、どうしてもわからない。インフレ、と言うかモノの値段が上がってきたら、みんな消費を控え、企業の投資意欲も萎えるのでないの? 

これまで政府は、「インフレ目標を達成する」とかで、しゃかりきになって国債を日銀に買わせてきた。普通だったらインフレになる。同時に金利も上昇して、政府の国債利払い費用は急増、国債価格は急落して日銀の資産を毀損、円への信認はガタ落ちになって円安。輸入価格の高騰でインフレはさらにいっそう進行し、遂にはハイパーとまではいかずとも、年率20-30%程度のインフレ、円下落にはなるだろう。こういう時、企業の投資意欲は亢進する? 馬鹿な。投資費用がどこまで上昇するかわからなくなるので、企業は投資を控えるのだ。それは1990年代、ロシアのハイパー・インフレの時、モスクワにいたから現地で見ている。

僕は、オーソドックスなケインズ理論、つまり社会で使われずに余っている資金を政府が吸い上げ、それを再配分したり、公共事業に回す(既存のインフラの修理だけで、毎年8兆円かかると言われる)ことで消費を掻き立て、それによって企業の投資意欲をかき立てるやり方の方が効くと思う。それほどインフレにもなるまい。円も下がるまい。

そして今のトランプ政権は、円安を容認してくれたオバマ政権とは正反対。金融総量緩和はもちろんのこと、「シムズ理論」なるものも円安につながれば、強力に叩いてくるだろう

もっとも、トランプ米国が叩いてきても、日本はもうどのみち高度インフレから逃れられないのかもしれない。それは米国の景気が絶好調で、金利引き上げ(ドル高になる)が必至だからだ。どういう意味かと言うと、トランプ政権はドル高が円安になるのを防ぐため、日本にも利上げを迫ってくるだろう。日本の金利が上がれば、既に述べた「国債の利払い費増加による財政の破綻、国債価格の急落による日銀資産の毀損と円への信認の低下」、つまり高度インフレへのスパイラル現象が起こりかねない――そういうことなのだ。

理論より、現実から出発することが必要ではないかと思う。米国が利上げに転じたことで、日本・EUの金融緩和は非常な危険をもたらす瀬戸際にある。特にアジアの場合、中国もこれまで指摘されてきた民間・地方政府債務だけでなく、財政赤字の急増を埋めるための国債発行が急増している。トランプが大統領になった、ならないに関係なく、米連銀の利上げで、アジア通貨危機の再来が懸念される。そして今度は日本がその主役になって、ドル・ベースでのGDPは半分程度にしぼみ、世界での地位をほぼ完全に失うだろう。

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