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街角での雑想

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2012年7月 3日

メドベジェフ首相国後行き これでは野田総理はウラジオのAPEC首脳会議に行けない

メドベジェフ首相が国後島に行った。島を向こうが支配している以上、日本人がいくら行くなと言っても、聴く耳は持たない。アジア人は国際関係における大義とか誠意を重視するが、ロシア人は力関係で動く。

そういうところで日本人が感情的に騒ぐと、こんどはロシアの一般国民が逆ギレしてくる。1年半前、僕は偶然モスクワにいて、ラジオ局に呼ばれたので、日本経済のことでもしゃべればいいのかと思って、のこのこ出かけていった。すると、いきなり、視聴者とのナマの電話対談で、スピーカーからは、「メドベジェフ大統領(当時)が国後に行ったことで日本人はどうしてあんなに騒ぐのか、戦争で負けたくせに」という青年の声が流れたのである。

もちろん、僕もそんなことには以前の仕事で慣れているので、1855年日ロが下田条約で外交関係を樹立して以来、北方領土は一貫して日本領であったことを静かに説明し、日本の立場の広報に活用させてもらったが(ディレクターは青い顔になったが)、ことほどさように、こういう時はスピッツみたいにキャンキャン鳴けば、馬鹿にされたり、嫌われたりするだけだ。かえって日本の立場を弱める。ロシアの一般国民は、日本が好きなのだ。それをことさらに敵に回すことはない。

こういう時、こういう相手にやるべきなのは、黙って居合い抜き。相手が痛いと感ずることをさらりとやって、あとは素知らぬ顔をしていればいいのである。
いい前例がある。5月初め、プーチン大統領は米国でのG8出席をドタキャンしたが(組閣で忙しいという理由で)、オバマ大統領はそれから数日後、そのことはおくびにも出さず、「大統領選挙で忙しいから、9月ウラジオストックでやるAPEC首脳会議には出られない」とさらりと宣言したのである。

これは、「俺がドタキャンしたことを根に持ちやがって、何と料簡の狭い奴だ」とロシア側に言わせない、泥試合が果てしなく続くのを防ぐ、うまいやり方である。

だから、大義も誠意もない外交をやる国に対しては日本もワルになろう。何をしかけても日本は何もできない意気地なしだ、とナメさせてはいけない。

野田総理は9月8日から始まるウラジオストックでのAPEC首脳会議には行くべきでない。国会も忙しいし。日本は天然ガスも石油もサハリン、シベリアから既に需要の10%弱を輸入しているが、ロシアはこれを圧力の手段に使えない。と言うのも、中国よりは日本の方が高い価格で買ってくれるし、買い手が中国だけということになると、ロシアは不利な立場に置かれるからだ。


日本も米国も参加しないAPECで、ロシアは中国を(極東ロシアと中国東北は、人口で1:20、経済ではおそらく1:80ほどの差がある)一人で相手にすることになる。6月初め北京でやった上海協力首脳会議でも、中国がその経済力にまかせて繰り出す数々の提案に、ロシアは圧倒されるばかり。結局、中国の提案のほぼすべてをつぶしたことで、会議自体も低調なものになってしまったのだ。

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