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日本史

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2016年11月25日

出版PR 米国人女性の書いた小説 はぐれ者 の日本語訳

時ならぬ大雪で驚いています。

1昨年かなりの時間をかけて翻訳した米国人女性の書いた小説「はぐれ者」を昨日、アマゾンのキンドル電子ブックで「出版」しましたので、PRさせていただきます。

これは、戦中から戦後十年余、日本で育ったユダヤ人の女の子サラの物語です。
一九四六年、一九五二年、一九五八年の三部に物語は分かれ、その間サラは六歳の少女から十八歳の乙女へと成長します。

サラの父母はラトビア出身のユダヤ人。第2次大戦でソ連、ドイツと何回も占領が繰り返され、ユダヤ人は弾圧される中、満州から上海へ、そして日本へと流れてきた無国籍者。小説の冒頭、一家は東京郊外の森の外れ、旧日本軍諜報将校の「西口先生」が持っていた屋敷に間借りしています。同居するのは、上海時代からサラの母に惚れ、なにくれとなく世話を焼くイタリア人の闇商人スカーリア。
西口家の女中だった大場と恵美子、二人が仕えています。

主人公サラは、作者Patricia Gercikの分身で、ここにはGercik女史自身が戦後日本で体験し感じたことが、懐旧の念とともに詰め込まれています。彼女の一家は本当にラトビアから流れてきましたし、サラと同様、Gercik女史自身、後に日本からアメリカの大学に渡って立身のきっかけをつかみ、後半生をボストンの名門MITの「日本プログラム」(MITと日本企業の間の関係を仲介)の代表として過ごしました。

その仕事は、日本との交流の仲立ち、両国間の文化的差異の克服であり、その底には、この物語でも展開される日本、日本人への拭いがたい思い出、恋情があったのだろうと思います。この物語はどこまでがリアルで、どこからがフィクションかわからないのですが、作者Gercikは「六十%リアル、四十%想像」だと訳者に言っています。

文中伝わる日本、そして日本人への尋常でない思い、そして焼け跡のにおいの消えない混乱と困窮の東京に、十二年のスパンで展開するユダヤ人少女と日本人少年との愛の物語は、既に70歳を超える作者Gercikにとって自分の生きたあかしとして是非、書きとめておきたいものだったのだろうと思います。彼女は、もう忘れていたのが、ある日突然記憶が迸り出てきたのだと言っています。

そして、トランプ大統領の誕生で日米同盟見直し論が盛んな今、この小説は終戦直後の困窮と混乱、反米運動と共産主義の浸透の様など、戦後日本、そして日米関係の原点をまた振り返ってみる良い機会を与えてくれるでしょう。

なお私は1996~1998年、ボストン総領事としてGercik女史の知遇を得ており、そのよしみで翻訳を頼まれたものです。もともと、終戦直後の焼け跡を舞台に、ロメオとジュリエットのような物語を書きたいと思っていたところに、この小説が現れてくれました。この小説が日米の交流、とりわけ在米ユダヤ系の人たちと日本人の相互理解を深めることができれば、望外の幸せです。


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