Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
ChineseEnglishRussian

世界はこう変わる

Automatic Translation to English
Automatic Translation to English
2013年11月16日

日韓関係仕切り直しを

なにか知らないうちに日韓関係がすっかり悪くなってしまって、朴大統領は外国人に会うたびに日本の一部政治家の(日本全体の、ではないところがミソなのだが)悪口を言っている――というのが、日本での対韓心象。

売り言葉に買い言葉で、日本の新聞では韓国を攻撃する激しい見出しが毎日おどる。自ら自分の品性を下げているようなものだ。日本は韓国に対してそれほど余裕がない状況なのか?

韓国の対日世論はこれでも、30年前ほどに比べるとはるかにましだ。韓国人が豊かになったので、それだけ余裕ができたのだ。他方、豊かになって日本と国力で肩を並べるようになってくると、1965年まだ弱かった時代に日本と国交を設定した「基本条約」が不平等条約に見えてきたらしい。韓国人すべてがこのことを毎日考えているわけでもなく、日本人がソウルに行っても親切に接してくれるのだが、マスコミに載るのは悪いことばかり。

しかし、安倍総理は14日、日韓・韓日協力委員会のメンバーと官邸で会談して、年内の首脳会議開催を呼びかけているし、同じ週には新任の韓国大使が安倍総理に個別で会っている(こんなことはいくつかの国の大使に限られている)。関係改善のための仕切り直しへの準備が粛々と進んでいるようだ。

10月の初め、ソウルに行って、韓国人の識者たちから話しを聞いてきたので、それを中心に最近の日韓関係についてまとめてみた。メルマガ「文明の万華鏡」第18号の2からの抜粋である。
(「」の部分は、識者たちが述べたところである)

(日韓関係)

・僕が韓国に初めて行ったのは1986年頃。韓国は高度成長を始めたばかりで、その勢いは大変なものだった。ソウルの街は大渋滞。大宇とか現代のぴかぴかの新車が、道をびっしり埋めていた。帰りは釜山から連絡船で下関に行ったのだが、船室は大きな畳敷き。そこで確かごろ寝したと思う。中小企業主風情の男性がステテコに腹巻姿で、「釜山に毎月遊びに行く」のだと自慢話、向こうでは釜山に修学旅行してきた九州の高校生達が、「おとおさんに言われて勝ってきた朝鮮人参」の話しなどを声高にしている。

・その頃は、韓国の学者と懇談するにしても、まず「日本の統治について謝罪」を求められたりしたものだが、その後金大中大統領の時代に「日本文化の解禁」があったり、2002年にはワールド・カップを共同開催、そして2004年は「ヨンさまフィーバー」、そしてそれに続く韓流ブーム、ノムヒョン大統領時代末期には竹島問題で一時関係が悪化するも、2008年に日韓中首脳会談の定例化と、日韓関係は右肩上がりでやってきた。

・李明博大統領時代末期まで良好だった日韓関係が暗転したのは、2011年8月韓国憲法裁判所が元慰安婦問題についての告訴を受けて、「慰安婦問題で韓国政府が日本と交渉しないのは違憲」との判断を示して以来のことである。民主党はもともと自民党よりも韓国に宥和的だし、野田総理も2011年10月外遊最初の地として韓国を選んだほどだったが、その勢いがくじかれてしまったのである。

同年12月来日した李大統領も、慰安婦問題について野田総理から譲歩を勝ち取ることはできなかった。その後も両国政府は水面下で交渉を行ったが、「韓国の大統領周辺と外交通商省の間で齟齬があったために」交渉は成立しなかった。大統領周辺は慰安婦問題を人道問題と定義して解決策を探ろうとしたが、外交通商省は慰安婦問題について日本が政府の責任を認めるよう強硬に主張し続けたのである。こうして埒が明かない中の2012年8月、李大統領の竹島訪問で関係は大きく悪化して、現在に至る。韓国司法界では、386世代の影響力が強いと言われる。日韓関係は、韓国世論の波に弄ばれているとも言えるのである。「大統領は世論を説得するより、世論がどう思うかの方を気にしている」。そして「韓国は中国には千年以上支配されていて恐怖感がしみついているし、米国を批判するわけにもいかない。その点、日本は叩きやすい」という事情もある。

・そして、「この頃は、両国関係が悪くなっても、これを救おうとする者がいなくなってしまいました。李大統領の時代には兄がよく訪日していました」
「これまでは韓国が強く出ると、日本は引いていました。ところが最近では、日本の外交官は反論してきます。韓国側は驚いて、まだどうしていいかわかりません」
(僕は、これでいいと思う。日本の外交官は、口論のための口論を挑んでいるのではない。両国の間に新しいつき合い方を確立しようとしているのだから)

・朴槿恵大統領の対日感はどうなのだろうか。反日教育を受けているからという韓国人もいたが、もとから反日ということではないようだ。「訪日した時は、さる自民党有力者の自宅に宿泊したし、民主党政治家も以前から交流していた」。
だがこの2月25日、朴大統領の就任式にやってきた麻生副総理が式後の会談で、朴大統領が「韓日間の真の友好関係構築のために歴史を直視し、過去の傷がこれ以上悪化せず治癒するようお互い努力しよう」と言ったのに対して、米国南北戦争を引き合いに「歴史の解釈にもいろいろある」との趣旨を述べたので、朴大統領は怒った。3月1日運動記念日演説では草稿に手を入れ、「歴史は1000年たっても忘れられない」という文言を入れた。これは、同大統領のそれまでの決まり文句でもあるが」

・韓国は日本と戦争をしたわけではないが、「総理による靖国神社参拝は、帝国主義を正当化することにつながるので問題にしている。小泉首相が久しぶりに参拝したので、韓国も問題にした」。別に中国が靖国参拝を批判するのを後追いして日本たたきをしているわけではない。

・「安倍政権が強いうちに関係改善を進めたい。安倍政権はあと3年はもつものと思っている」。

・「若い世代は、日韓関係のことばかり考えているわけではない。普段は別のことを考えている。」

・欧州では昔の宿敵、ドイツとフランスが手を握っているおかげで、NATO(本来は米国を欧州に引き込んでドイツの復興に備えるための組織だったのだが)が成り立っている。ところがアジアでは、日中韓の間でこのような関係はなかなか成り立たない。この三国の間には首脳会談を恒常的に開く約束が2008年行われ、種々協力を拡大していくための統一事務局がソウルに作られてもいるのだが、近年の事情で首脳会談を恒常的に開くという約束はいとも簡単に反故にされてしまった。

・日本の近くで、民主主義政体を持つ大国といったら韓国しかないのだが、上記の事情で、韓国はとても日本外交の軸にはなっていない。「問題が起きるたびに何とか片づけていく」という対症療法の相手にしかなっていないのだ。

・しかし、こういうすべてのことは、双方の政府の仕事である。経済関係は緊密である。韓国の経済は、日本からの機械機器、部品の輸入なしには成り立たない。故に、日本に対しては厖大な貿易赤字を抱えている。ソウルのホテルの中にも、日本の商社等が出資しているものは多い。

また市民の間でも、政府間とは別の雰囲気が見られる。僕は韓国に行くたびに、韓国人から親切に道案内してもらったり、病院で懇切な対応を受けたりしてきた。日本では「韓流」への関心が続いている。今回泊まった場末の二流ホテルの廊下で、日本の若い女性たちのはしゃいだ大声が聞こえたのだが、エレベーターで出くわしてみると、それは50がらみの女性達の一団だったのだ。「ヨンさま」詣では続いている。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/2669