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世界はこう変わる

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2011年10月31日

時代の不安 文明の黄昏

「レコード芸術」11月号に、吉田秀和さんが連載評論「これを楽しむ者に如かず」を書いておられる。ユーロ危機をはじめとして、世界全体がおかしくなっていることに不安感をはっきり述べておられて、しかも文章がぶつりと切れた感じで終わっているのだ。もうクラシック音楽評論どころではない、とでもいうように。

マーラーの9番だったか10番だったか、音楽がぶつりと切れて、運命の太鼓だけが何度も何度もギロチンが落ちるように、どすん、どすんと鳴り始める――そんな感じ。

吉田さんが一生を生きて来られたクラシック音楽――欧州文明が崩壊しつつあるのではないかという予感、予感どころか痛感、が吉田さんを揺さぶっているのではないか?

同じく戦後日本を体現する知識人、辻井喬氏は最新刊「世界を語る言葉を求めて」(毎日新聞社)で宮崎学氏と対談し、われわれは「産業社会の秋」にいる、次の新しいものが何なのかまだわからない、と述べている。

中国やインドは、「それ見ろ。やはり俺たちの古来からの生き方の方が正しかったんだ」と胸を張る。古来の生き方だけでは、今のようには発展できなかっただろうに。

思想の棚卸が必要だ。他人が書いたものを見るだけでなく、まず自分の胸に聞いてみる。いったい自分は何をいちばん必要としているのかを。それが出発点。

そして自分たちの「古来からの生き方。古来からの思想」を誇る中国、インド、アラブ、イランの支配階級の者たちがなぜか、子弟を欧米の大学に留学させ、自分たちもいつかは欧米に移住(亡命)するため貯金を置いておくのはなぜなのか――それも考えてみないと。

欧米の思想は、産業革命で人々の生活水準があがり、個々人の自由度が増した社会における価値観を集めたものだ。それはそれでまだ大いに参考になるし、日本では実現できていないものも多い。中国、インドなどでは、これから徐々に実現していくものだろう。

ヨーロッパがあたかも黄昏を迎えているのはさびしいけれど、われわれは自分でしっかりした目標と価値観と、それを実現するための能力を持っていればいいだろう。魔法の先生が死んでいこうとするときの、ハリー・ポッターのようなものだ。

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