Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
ChineseEnglishRussian

世界はこう変わる

Automatic Translation to English
Automatic Translation to English
2011年7月26日

中国不動産バブル崩壊のマグニチュードは?

6月13日このブログで中国の不動産バブルが崩壊する危険性を指摘する記事を出した。そのせいではないが、今は「中国のバブル崩壊」の大合唱が世界のメディアで始まったので、またそれも言い過ぎだろうということで、今日は少し軌道の微調整をしておく。

結論から言えば、中国の不動産バブルが崩壊したとしても、中国の現在の資金余力をもってすれば、そこは何とか乗り切れるのではないかということだ。これも仮説なので、大方の御叱正をあおぎたい。

1.まず地方自治体が作った「地方融資プラットフォーム」が国営大銀行(複数)から借りこんでいる金は総計10兆元、最大でも14兆元程度と見られる。

2.不動産価格が急落し、右のうちの70%が不良債権になった、つまり国営大銀行の資本金が12兆円分ほど損耗したとする。
しかし中国の政府予算は、毎年100兆円以上を計上している。しかも、日本とは違って財政赤字分は予算総額の10%以下である。つまり中国政府は、たとえば国債を発行して国営大銀行に資金を注入する余力を持っている。

3.中国政府は、外貨準備を国営大銀行の資本増強用に「注入」することがある。2003年12月、450億ドルが人民銀行管理の外貨準備から中国建設銀行に移管されている。
中国の外貨準備は3月末で3兆ドル(約19兆元)を超える。これはIMFの資本金額を大きく超えるもので、中国だけでも中国自身を当面は救えるだろうことを示す。
(但し、外貨を得た国営銀行が、その分だけ元の融資を行おうとする時、ドルを市場で元に換金すれば元のレートが跳ね上がり、市場で換金するのではなく中央銀行に元を発行させると、それはインフレ要因になる、という問題はある。他方、注入された外貨を見せ金として飾っておき、当面は融資を増やさずにおけば、問題は解決されるだろう)

4.リーマン・ブラザーズ危機で減少した中国の対米輸出は回復傾向にある。2008年3378億ドルだった中国の対米輸出は09年2964億ドルに落ちたが、2010年には3649億ドルという記録的レベルに達している。これは、中国の景気には好要因だ。

というわけで、高架から落ちた高速鉄道と同じく、不良債権も素早く地面に埋められてしまい、翌日には高度成長列車が高架を走っていく、ということになる可能性があるのだが、市場原理がそれをそのまま許すかというと、そうでもあるまい。
多分、不良債権の表面化が防がれるも、インフレの方はじわじわと亢進していくことになるのでは? 

8月2日にはアメリカがデフォルトするとかしないとか、ノルウェーで反イスラムの青年が一人で90人くらいも殺すとか、中国の高速鉄道が高架から落ちてそのまま地面に埋められてしまうとか、世は末の様相を呈してきた。最大のトレンドはおそらく、ドルという名の紙が世界中使われるカネとして流通していた、世界史上稀有のこの40年にturning pointが来たということでないか? 

これからもドルは使われていくだろうが、ペーパー・マネー=ドルは数年に1度バブルを作っては、それが崩壊する繰り返しとなるだろう。2001年のITバブル崩壊以来、そのサイクルはどんどん短くなっている。つまり富の蓄積がやりにくい時代になってきた。数年に一度、「御破算(御破産)に願いましては」とやられるわけだ。
金を買えばいいと言っても、その量には限りがある。どうやって蓄積をしたらいいか、どうやって数年に一度起きるマクロ構造の褶曲を中和するか、誰かいい知恵はないですか?

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/1759