幕末「ええじゃないか」の雰囲気――ロシア
昨年10月ロシアに行ったとき、ずいぶん雰囲気が沈んでいるのに気がついたが、年末、年頭にかけて終末論的な論調がずいぶんマスコミに出てきた。いちいち引用、翻訳するのはやめるが、まるで19世紀末チェーホフの時代の行き詰まり感、ゴルバチョフ登場直前の深く淀んだ停滞感によく似ている。つまり出口がない感じ、将来が読めない感じ、経済の近代化はできないだろうという感じ、政治家の言うことが空しい時代、社会がウソで固められていて法治国家でない感じ、等々が列挙されている。
つまり、ロシアは文明として、国家として、システムとしてこれからも成り立つのか、という疑問だ。なかには、体制側は締め付けの維持をはかるために、1991年8月のクーデター事件のようなことをでっちあげるかもしれない、と書くインテリもいる。
これらには、大袈裟な面もある。誰か海外に亡命した反プーチン分子があおっているのかもしれない。それにこういうことを書くのは、ユダヤ系の知識人に多いようで、彼らはロシアの大衆には好かれていない。
にもかかわらず、今年の12月に迫った総選挙、来年3月に迫った大統領選挙を前に、今にいたるもメドベジェフとプーチンのどちらが大統領選挙に出るのか、締め付けとリベラルのどちらが2012年からの基調となるのか、皆目読めず、一切はプーチン首相の胸先三寸次第、その状況がひょっとすると年末まで続くというのでは、その息詰まるような緊張にみんな耐えられなくなる。既に資本は海外へと流出を始め、流入する一方の石油収入をまた政府がやたら使うものだから、インフレは年間10%、実感では20~30%になっている。
インフレと黒船を背景に、幕末日本の大衆は、「ええじゃないか」踊りでやけのやんぱち、踊り狂った。ロシアではそうならないように、コスプレ大会でもせいぜい広めてあげようか?