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2010年11月 2日

次のロシア大統領? 新任のソビャーニン・モスクワ市長

今回僕がモスクワにいた9月28日、ルシコフ・モスクワ市長がメドベジェフ大統領によって解任された。日本で言えば、石原都知事が菅首相に解任されたようなものだ。ルシコフ市長は1992年から市長を務め、2007年に三選された。その後メドベジェフ大統領が長期にわたって座にいる公選知事に圧力を加えて辞任させていくなかで、ルシコフも血祭りに上げられたのである。

9月27日、ルシコフは海外での休暇から帰ると直ちに辞任を表明するものと皆から思われていたのだが、なんと帰国一番、自分では辞任しない、解任されるまでやると言明したのである。巷では、「ルシコフはプーチン首相の支持を頼みにしている」とか「これはプーチン首相がメドベジェフ大統領の権威を下げようという企てだ」とかの観測が渦巻いたが、翌日メドベジェフ大統領はルシコフをあっさり解任してしまった。

ルシコフも骨のあるところを見せ、一時は地方首長の公選制復活を標榜して民主主義者を気取って見せるかと思えば、数日後には「2012年大統領選挙でルカシェンコ・ベラルーシ大統領と組んで出馬する」というネタがマスコミに流れたりもした。だがそれもせいぜい1週間、政党を持っているわけでもないルシコフは、その74歳という年齢もあって、急速に過去の人となっている。ひとつの時代は終わったのだ。

あとに任命されたのは、副首相兼内閣官房長のソビャーニン。プーチン首相の最側近だ。
280px-Sergey_Sobyanin_2010-10-15[1].jpg (ソビャーニン。上品な人だ)
石油産地のチュメニ州出身で、先祖の出自はウクライナのコサックとも地元ハンティ・マンシ共和国土着、アジア系のマンシ人とも言われているが、本人はロシア人を名乗る。父方祖父はロシア正教会の異端とされる古儀式派で、これは酒もたばこも控える慎み深い人たちだ。ロシア革命前の大資本家モロゾフなどは、この古儀式派に属している。そして母方の祖父はいわゆる「富農」で革命政権に弾圧されたというから、勤勉で実業の才能に長けていたのだろう。

ソビャーニン自身はエリツィンに外見が似ていると言われるが、上品で有能なテクノクラートだ。その名の発音、そしてこれまでプーチンの大統領府長官、プーチンの政府官房長として尽くしてきた経歴から、「側用人」と呼ぶと覚えやすい。

彼は与党「統一」のモスクワ支部をも束ねることになる。これまでルシコフは大都市モスクワの票田を一手に握っていたのだが、それをプーチン首相がソビャーニンを通じて確保した――こういうふうにも見える。メドベジェフ大統領がルシコフを解任するのは認めてその面子をたてたが、2012年の大統領選で決定的に重要なモスクワの票田は自分が抑えた、というように見えるのだ。

だがこのソビャーニン、意外と大化けするかもしれない。この人がロシアのトップに座るとしっくりする。父方の祖父は100歳以上まで生きたというから、大統領になればロシアの安定をあと50年も保証できるだろう。

コメント

投稿者: 松宮 正浩 | 2011年1月 6日 11:05

我々にとってロシアの情報は少なく、ソビャーニン・モスクワ市長が次期大統領候補の可能性がるとは迂闊にも知りませんでした。
柔道好きのプーチン首相に対する近親感に比べ
続投を睨んだメドベージェフ大統領の行動には目に余るものがあり、菅首相同様辟易します。

やはり、トップの座に座る者は私利私欲を捨て国家、国民、ひては人類、地球の未来のために私財を投げ打ってでも引き受ける人物が出現すれば国民は挙って応援を惜しまないはずですが
現実離れした「無いものねだり」でしょうか?

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