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世界はこう変わる

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2022年3月 5日

ロシアのウクライナ侵略で変わる世界の秩序

今回のロシアのウクライナ侵略で、国連など世界ガバナンス体制をどう変えるべきか、世界で議論が起きている。日本は世界、アジアの中で埋没してしまっているので、現在のように世界の枠組みが問題となる時代には、生煮えでも積極的に世界に向けて発言し、「戦後の世界」における日本の発言権を確保していくべきだと思う。

まず、次の諸点を考慮しなければならない。

1)「ロシアがウクライナ全土を制圧する」のは不可能ではないだろうか? 第2次大戦後ソ連はウクライナ西部に残った独立運動分子を完全征圧するのに、3年間かかっている。ロシアは「ウクライナは東西に分裂していて、国家ではない」と侮っているが、貴族と農奴に分裂したロシアがやっと一つの国家意識を共有するようになったのは、第2次世界大戦でのナチ・ドイツの侵入を受けてのことで(今日でも「大祖国戦争」は正教会と並び、ロシア人団結のための数少ない象徴となっている)、今回ロシア軍の侵入と破壊行為は、ウクライナ人に強い国家意識を植え付けてしまったのである。難民をいくら欧州に送り出し、残った成人男性を殲滅しようとしても、しきれるものではなく、傀儡政権を作っても維持できないだろう。

2)しかもその間、経済制裁はこれまでにない程、ロシア経済にダメージを与える。西側は、ロシアの富の源泉である石油・天然ガスをirrelevantなものにしようとしているのである。中国が買うと言っているが、欧州向け天然ガス・パイプラインは中国に通じておらず、石油はバルト海、黒海の港からタンカーで運ぶことになり、非効率である。それに中国は買いたたくであろう。

3)その中でロシアは2024年の大統領選挙を迎える。ルーブルが2分の1以下に減価することで、インフレは数十%に達していよう。そしてウクライナでは、かつてのアフガニスタンでと同じく、ゲリラ戦による戦死者が絶えないことになる。プーチンを支えてきたシロビキと寡占資本家たちは、プーチンをすげ替えることを当然考えるだろう。すげ替えても、かつてのエリツィンのような梟雄が台頭してくると、シロビキ・寡占資本家連合候補者は選挙で敗北することになる。その場合、ロシアは民主化・市場経済化を標榜するかもしれないが、実際にはエリツィン時代と同じの大混乱に陥るだけのことだろう。


以上のとおり。中期的にはロシアはもたない。しかし世界は、ロシアが今回、つかの間であっても勝利を勝ち取った場合、ロシアが崩れるまでの数年に備えなければならない。そのためには、ロシアが拒否権を持つ国連安保理を暫時代替するものとしてG7(最近はテレビ会談ができるので、本当に便利である)、「国連軍」に相当するものとしてNATOの枠組みを拡大活用するなどが考えられる。そしてロシアを牽制するためにも、この種の議論を公開で盛り上げるべきである。

そして世界は、中国の対ロ関係が揺らぐかもしれないことに気が付いていない。ロシアのウクライナ侵略に対する中国の姿勢は、非常に煮え切らない。ロシアがクリミアをもともと自国領の一部だったと称して併合した(台湾と酷似)時すら、これを認めていないのに、今回ロシアは国際法的には完全な主権国家であるウクライナに白昼襲い掛かり、政権を替えようとしているのである。これを中国が大っぴらに支持することはできない。しかも中国とウクライナは2011年に「戦略パートナーシップ樹立に関する共同声明」に署名した仲で、中国としてはロシアの行為を見逃せば国際的な信用を失ってしまうのである。中国的な感覚で言えば、「弟分のロシアに顔に泥を塗られた」ということになる。
中国は戦争の帰趨を見て、勝馬に乗るだろう。ロシアが負けて世界の孤児になれば、中国は「水に落ちた犬は叩け」の格言を実行するだけだろう。中国がどういう分野でどこまで西側にすり寄ってくるかが、「ウクライナ後の世界ガバナンス」を考える上での大きな要素になる。

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