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世界はこう変わる

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2021年12月26日

バブルは崩壊するか したらどうなる

 我々の生活に響くのはコロナ、次に金融バブル崩壊の危険性でしょう。
バブル崩壊はどういう形で起きるか? 今回は、米国で進むインフレと、それを抑えるための性急な金融緩和縮小と利上げが、株・債券価格の暴落を呼ぶのではないかという疑念を膨らませて、いつかは本当に皆が手持ちの株・債券を売り払うというパニックを生むのではないか、ということが恐れられています。2008年のリーマン金融危機の時の構図です。

 そうなると企業の投資は縮小し、従業員はレイオフされ、消費も縮小するでしょう。日本にもこの波は確実に伝わってきます。

もしバブルが崩壊したらどうなるかを考えるために、2008年リーマン金融危機後の米国の数値をあげてみます。米国のGDPは2009年、マイナス2.6%の成長率を示しました。しかし2010年には早や、プラス2.7%の成長を示し、以降ずっと2%近辺の成長率を示しています。失業率は2009年12月には9.9%の高水準に達しましたが、その後徐々に下がっていって、2019年末には3.9%とほぼ完全雇用の水準に達しました。その後コロナで2020年末には6.9%に悪化しましたが、現在では4.2%(11月)に改善し、「大量転職時代」(Great Resignation)が起きていると報道されています。リーマン後、あるいはコロナ時代に「なんでもいいから」と就職した連中が、今もっとましな職に転換しているのです。

 この間米国では空前の金融緩和が行われていました。長期金利(10年もの国債利率)は2009年年末に3.85%だったのが低下して行き、2020年7月には0.59%、その後上昇を始めたものの現在1.38%となっています。

問題は、増えた所得の多くが金融分野などでの高所得層にほぼ独占されていることです。ダウ・ジョーンズ株価指数は、2009年末の約9250ドルから2020年末の約33.000ドルまでほぼ一貫してあげています。格差の度合いを示すジニ係数は2009年の0.38から2019年の0.40まで上昇しました。2017年のOECD統計で比べると、ジニ係数が世界で最も高い(格差がもっとも大きい)のは南アフリカの0.62。米国は0.39、日本は0.34、EU平均は0.30ということになっています。

面白いのは、よく指摘されることではありますが、カネ余りなのにインフレが起きていないことです。消費者物価は2009年、2.7%上昇しましたが、2010年には1.5%、2011年には3.0%、2020年には1.4%の上昇にとどまっています。この間石油価格は2009年平均が1バレル当たり62ドルで、2011年には92ドルに上がっていますが、2016年には37ドルに暴落し、コロナでの一層の暴落を経たあと、現在68ドル程度に上がっています。要するに、だぶついた金が賃金上昇、消費に向かわなかったこと、モノ・サービスの供給が潤沢であることが、インフレを起こさなかったのでしょうが、今では様々の一時的要因から年率7%近くのインフレに見舞われ、バブルの崩壊が懸念されています。

因みにこの間、金の価格は急上昇のトレンドをたどってきました。ドルの実質価格を示していると言えるでしょう。2009年には1オンス(約30グラム)1200ドルだったのが、2011年には1550ドルと上昇し、その後上下した末2020年には一時1950ドルの高値をつけています。この間、ドルは他の通貨に比べて減価していません。リーマン後の金融緩和は主要国が軒並みやったので、それらの国の通貨は軒並み金に対して減価しました。しかし、インフレは起きていない。何か不思議な。
     
今回、米国のバブルがはじければ、米国、そして他国の経済もこけるでしょう。リーマン危機の際、中国は60兆円相当の内需拡大でしのぎ、それで現在の夜郎自大な尊大さを見せているわけですが、今回米国のバブルがはじけると打てる手は限られているでしょう。米国の市場規模は中国の2.6倍。この市場が一時的にせよ消滅して中国が貿易黒字を稼げなくなると、中国では原価ゼロの国有地にカネをぶちこんで法外な利益をあげる、これまでの成長モデル(いかさまだと思います)が続けられなくなります。

米国のバブルが崩壊すると、お決まりの「米国終焉」、「資本主義終焉」論が出てくるでしょうが、今回も経済危機から真っ先に立ち上がるのは米国になるでしょう。ただ、金融緩和と言うか、政府による消費幇助が先進国で常態になるでしょう。それが、貧者救済にもつながるなら、それでいいのだと思います。生産力が非常に大きくなっていて、多数の人間を養えるようになっているのです。

問題は、危機を繰り返すたびに、市場につぎ込まれる救済資金の量がうなぎのぼりになり、それがまた次のもっと大きなバブルを生むという、いたちごっこになっているということです。ただ、「だからどうした」とも言えるようです。上述のように、リーマンのあと米国ではインフレは起きていません。市場に出回っていたバブルのカネは、インフレを起こすことなしに、自分で収縮して消えてしまったようです。これは多分、モノやサービスの供給が潤沢にあるし、足りなくなれば輸入できるからでしょう。

途上国はバブル崩壊の大波に翻弄されるでしょうが、国内の貯蓄が大きい先進諸国はこれを乗り切って、次の成長サイクルに進むことができると思います。要は、いろいろなバランス、モノとカネのバランスとか、収入と支出の間の適度のバランスなど、いくつかの重要なバランスを失って経済を停止させてしまうのを防ぐことだと思います。

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