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世界はこう変わる

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2021年4月 8日

賞味期限を過ぎた、中国の 一帯一路

(これは3月24日に発行したメルマガ「文明の万華鏡」第107号の一部の原稿です)

 中国も膨張ただ一筋というわけにはいかない。その証左として、「一帯一路」構想の停滞状況を指摘しておく。これは昨日発売のNewsweek日本版に掲載された記事の一部だ。詳しくは同誌をご覧いただきたい。
 
昨年10月、アメリカのボストン大学が出したレポートは、中国の一帯一路の退潮を指摘した。「一帯一路でのインフラ投資での主役、国営の中国開発銀行と輸出入銀行            による融資額は2019年39億ドルで、2016年のピーク750億ドルからは94%の減少だ」というのだ 。
 一帯一路を始めたころは、リーマン金融危機から間もなく。中国では、リーマン危機の火の粉を払うための合計60兆円相当の内需拡大が終息して、閑古鳥の鳴いていた中国国内の素材・建設企業は「一帯一路での海外の事業」に活路を見出した。政府各省は、一帯一路の錦の御旗の下、予算・資金枠獲得競争に狂奔する。例えば人民銀行傘下の「シルクロード基金」に対して、財政部がアジア・インフラ投資銀行AIIB設立の音頭を取る等である 。
 かくて、中国の融資総額は2019年までの5年間で900億ドルを超えた 。受益国の政治家・役人達は、この資金で港やハイウェーを建ててもらって大威張り。一部は自分のポケットにも入れたことだろう。

だが、こうしたエゴの集積は脆いもの。案件の採算性や住民の利益になるかどうかを考えていないからだ。それに、中国国内の状況も変わった。60兆円の内需拡大策は諸方で不良債権を膨らませたから、債権回収が大きな関心事になったのである。そして受益国の方ではスリランカ、パキスタン、マレーシアなどで見られたように、政権が交代すると前任者の手掛けた中国との案件は引っ繰り返される。さらに返済義務の意識が薄い諸国は、中国に債務免除・返済繰り延べの要求をつきつける。友人に金を貸せば、友情は失われるのだ。
 そういうわけで、「中央アジア経由で中国と欧州を結ぶ鉄道新線」、「新疆からパキスタンを南下してインド洋と結ぶハイウェー」等、多くの構想は掛け声だけで進まない。ロシア経由の東西の鉄道での物流も、安価な海上輸送に歯が立たない。あれだけ騒がれたアジア・インフラ投資銀行も、2019年末の融資残高は僅か22億ドルで、日米主導のアジア開発銀行が年間平均60億ドルの融資を行うのには及ばない 。

 こうして「一帯一路」の呪文の威力も薄れてきた。2月9日、習近平国家主席は中欧・東欧17か国の首脳とテレビ会議を行ったが、バルト三国、ルーマニア、ブルガリアは首脳が欠席。閣僚ですませたのだ。

 だが、これで中国の外交が退潮するわけではない。門に「猛犬います」のシールを貼るのと同じで、米国に民主主義を押し売りされないために、「中国います」シールがまだ必要とされているからだ。ただ、一帯一路がまた元の勢いで復活することはないだろう。

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