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世界はこう変わる

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2019年8月 8日

ロシアの将来に引導を渡す、米国のシェール・オイル

OPEC諸国とロシアが減産を続け、かつホルムズ海峡が通航不能になるかもしれないというのに、世界の原油価格は上がらない。その原因は需要が盛り上がらないこと、そして米国のシェール・オイルの生産が急増し、数年後には米国がサウジ、ロシアと並ぶ、あるいは世界一の原油輸出国になると見られていることがある。そうなると、世界の原油価格は40ドル近辺から上がらないことになるだろう。しかもロシア原油の大口輸入国EUは、米国からの圧力に負けて、ロシア原油の輸入を大幅に減らすかもしれない。

そうなると、原油輸出に過度に依存しているロシア経済は、お先真っ暗ということになる。ロシアはいろいろ嘯くが、国家歳入の半分近くは今でも原油生産、或いは輸出にかけた税に由来する。このカネを国内で回して増やしているのだから、GDPのうち原油・天然ガスに由来する分は半分以上になるだろう。

目下ロシア経済はGDP成長率が1-5月、対前年同期比で0.8%に下がり、西側では「不況の到来」だと囃している。2024年のプーチン退場までの「5カ年計画」的なもので、ロシア政府はインフラ投資を大幅に増やして経済を刺激することを予定しており、これが始まれば当面の成長率は回復するだろう。ただ原油輸出収入がこれから長期的に低迷、あるいは減少していくということだと、その「5カ年計画」も実行できなくなるかもしれない。

「インフラ建設で成長率をかさ上げ」という、中国のかつての政策に20年遅れで倣おうというわけだが、製造業という本当の原動力を欠くロシア経済は、米国のシェール・オイルにやられてしまう趨勢にある。「ロシア殺し油地獄」というわけだ。


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