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世界はこう変わる

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2019年7月28日

トランプは「戦後の世界体制」をどこまでこわすか その五 トランプは世界の同盟体制を破壊したか

 トランプは、米国は自分の力だけで世界での指導的な地位を維持できる、米国の圧倒的な力を背景に中国、ロシア等とは個別に取引をしていけばいい、と思っている。彼の頭の中では、同盟国というのは「寄生国」と同義語なのだろう。米国の軍事力を利用して安全保障をはかる一方で、米国市場を利用して一方的に儲ける勝手な存在――ということだ。だからトランプは、その代表格ドイツのメルケル首相を目の敵にする。そして彼女が「通商問題はEUの所掌」と言って逃げるそのEUを弱化、解体の方向に持っていこうとしている。

では、トランプは安全保障面での世界の同盟体制を破壊しただろうか? 世界最大の同盟であるNATO=米欧同盟は、トランプのせいで揺れている。NATOはソ連という好敵手を失って気が緩み、「GDPのせめて2%以上を国防費に使ってくれ」という米国の懇請に応じているのは英国、ポーランド、エストニア、ギリシャ等数カ国にとどまる。

米国が何か実のあることをしようとする度に、「29の加盟国すべてのコンセンサスが必要」の原則に縛られて、大きなことができない。従って、バルト諸国の防衛強化等を除き、米国一国で先行する例が増えている。例えばポーランドやルーマニアにMDを配備することは、米国との二国間合意によるものである。しかし、NATOは米欧双方にとって、まだ使い手のあるものだ。トランプがどんなに悪態を垂れようが、米国防省、そして欧州諸国はいなしていくだろう。

同じことは、アジア方面のNATOとも言える日米安保についても言えるだろう。トランプが「ホルムズ海峡は日本が自分で守れ」と言っても、米第5艦隊はバーレーンの基地を本拠としているのだし、トランプが入れ込むサウジ・アラビアに頼まれれば、トランプもホルムズ海峡防衛に乗り出さざるを得まい。だから日本が、トランプのツイッターに慌てて反応すると、売り言葉に買い言葉で、日米安保解体の引き金を自ら引いてしまうことになるだろう。日本にその準備はまだできていない。

つまり、世界の同盟体制はまだ維持されている。そして米議会は膨大な国防予算を採択し続けるだろう。

問題は、その空前の国防予算がどのように使われるのかがまだわからないということだ。戦闘機、軍艦、潜水艦、巡航ミサイル、あるいは全く新しいドローンの「ウンカ」部隊等、どういう新兵器をいくつ作って、どこにいくついつ配備するのかが全く分からない。2月あったように、議会が認めようとしないメキシコとの国境の壁建設に国防費を充当する、というような恣意的なことがこれからもまかり通るようなら、米国防費はトランプのポケット・マネーということになってしまう。

トランプはイラン攻撃にゴー・サインを出しておきながら、21日攻撃実施10分前に「150名もの戦死者が出るかもしれない」との理由で突如停止を命じたが、これは軍の最高司令官としては考えられない醜態である。米軍だからこそ、10分前の心変わりで作戦を止めることができたが、もし攻撃が行われていたら、どうなる。軍の現場はもはや、ワシントンからの指令を信じなくなるだろう。

そして日本や欧州諸国にとっては、米国防省が盛んに言っている「中ロは最大の脅威」という路線を、トランプがどのくらい支持するのかわからない。「中国、ロシアとは適当にうまくやっておかないと、トランプに梯子を外される」と日欧が思うようになったら、トランプのせいで同盟体制は大きく侵食されたと言えるだろう。

極端なことを言えば、米国を核とする同盟体制は空洞化している。「米軍はそこにいるかもしれないが、もう頼りにはならない」という時代がもうすぐやってくるかもしれない、ということだ。

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