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世界はこう変わる

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2019年1月19日

中国はまたポシャルのか

(これは12月26日に発行したメルマガ「文明の万華鏡」第80号の一部分です)

現在の世界史は、「産業革命後、あるいは工業化社会」の末期にあり、ロボット・AIによって生産性が飛躍的に増大するpost-industrial期の直前にあると位置付ける。工業化社会でも生産性は飛躍的に増大し、個々人の富は増大するが、それでも富の奪い合いは起きる。人類が発生して以来の争いのもとである、富の奪い合い、つまりゼロ・サムの原則がまだ生きている。

そのゼロ・サムの争いが現在、米中の間に起きている。産業革命以来、欧米そして後れて日本が独占してきた工業製品製造・販売とその利益は現在、中国に大きく吸い取られている。ひと時は吸い取られても、やがては中国国民の生活水準が底上げされれば、西側の製品への需要が大きく増し、ウィン・ウィンの結果となるだろう。

しかし今は、そうなる前に、中国と米国の間に争いが起きて、中国は締め出され、全てを失ってしまう瀬戸際にある。中国では戦前、国民党政権による国の再統一がほぼ完成した1927年からの10年間は、「黄金十年」と呼ばれる急速な経済発展を見た。1929-41年の中国経済は、毎年平均3,9%程度という高度成長を遂げたのである。これを駄目にしたのは、日本軍の侵入とこれとの戦いであると見られる。今回は、米国との紛争が中国の成長を止めることとなる。

こうなったのは、中国が中庸の原則、鄧小平の言った「韜光養晦」の姿勢を捨てたからである。2008年のリーマン危機までは、中国はアジアでの米国のプレゼンス、日米同盟関係を容認し、これがもたらす安定の中で経済的利益を収めようとしていたが、リーマン危機後60兆円相当もの財政支出・民間融資で危機を一人で乗り切ると、増長した。

「西側から得た金で、西側の土地・企業を買い占める」中国の姿勢は、西側諸国の怒りと警戒を招いた。また、米国では中国やメキシコに工場が流出したために職を失った白人労働者が多く、トランプは中国叩きで彼らの歓心を買うことを、止めないだろう。

このまま中国が西側経済から締め出されると、何が起きるか? 締め出されると言っても、全面的村八分ではなかろう。冷戦時代のソ連と違って経済力が大きいので、西側への影響も大きい。既に世界の株式市場は、米中貿易戦争で乱高下を繰り返している。

中国の経済成長がもたらした、対中国輸出の急増は(日本の対中輸出は1992―2017年間に13.8倍の1649億ドルに伸びている。ドイツの対中輸出は1996-2016年間に11.8倍に伸びている)、成長の天井に達している先進国にとっては、格好の成長のエンジンであった。と言っても、国内の工場が閉鎖されて中国に流出する時の生産設備移出も右の輸出増にカウントされていたわけで、若干奇妙なエンジンではあったわけだ。

この対中直接投資が減少する。中国にある先進国企業の既存の工場向けの生産財・部品の輸出も大きく減少する。他方、中国企業及び在中国の先進国企業が中国国内市場向けに生産するための、西側生産財と部品の輸出は伸び続ける。しかし、そのうち先端技術製品の輸出は、米国が音頭をとって規制するだろう。こうして、先進国と中国の間の貿易は、先端技術製品以外の貿易は可能であった、冷戦時代のソ連・中国との取引関係に戻っていくことになる。

これまで米国が中国から輸入していたスマホ等は、中国以外(米国本土も含め)で組み立てる方向で推移していくだろう。サムソンは既に、スマホの組み立て拠点をベトナムに定め、ベトナムで最大の輸出企業となっている。

この変動が落ち着くまでの数年間、日本からの生産財や部品の輸出は暫時停滞するかもしれない。しかしグローバルなスマホの需要は、中国での組み立てをやめたからと言って、減るわけではないし、グローバルな経済も縮小するわけではない。日本が生産する設備、機械、部品への需要も、全体として減少はしないだろう。しかし中国自身の経済成長は大きく低下し、世界中からの輸入も減るだろう。悪くすると、失業が増大して(毎年800万強の大卒者が増える)、国内は騒擾状態に陥るかもしれない。

これが「中国締め出し」(繰り返すが、すべて止まるわけではない)が世界経済に起こす影響だろう。要するに1,2年落ち着いて対処すれば、世界にとっては吸収可能なショックだ。一方、日本は戦前と違って、騒擾状態に陥った中国に絶対介入してはならない。他方、中国からの「観光客」が大量に押し寄せて、そのまま日本に居続けようとする可能性には十分注意していく必要があるだろう。

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