Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
ChineseEnglishRussian

世界はこう変わる

Automatic Translation to English
Automatic Translation to English
2018年11月29日

最近の内外情勢

昨日、メルマガ「文明の万華鏡」第79号を発行しました。そのまえがきを、最近の内外情勢としてここにアップします。メルマガは「まぐまぐ」社で、ご購読いただけます。
 
なぜか国際情勢に飽きてきて(先月の米国旅行で、米国のガバナンス喪失ぶりに呆れたからかもしれません)、今月の最大のニュースは日米野球で日本が圧倒的な勝利を収めたことだと思っています。5勝1敗。しかもうち4回は、派手な終盤での大逆転劇。かえって興ざめだったのか、観客数はどんどん減っていく始末。これまでの日米野球のパターンを引っ繰り返しました。米国が二流の陣容で来た、というものでもありません。

それなのに、日本ではこれが殆ど話題にならなかったのはなぜか? そこまで日本人が自信をつけてきたのか、それとも野球に関心を持っていないのか。いずれにしても今回の日本チームは、これまでの巨人軍主導というところがなく、ソフトバンク、広島、埼玉西武を中心に生え抜きの荒武者打者達の破壊力と闘争心が大リーガーと同等であったところが注目されます。巨人軍のあり方が一時代前のものとなり、自前軍団に力負けするという基本トレンドを印象付けたとでも言えましょうか。

米国では、中間選挙で下院の多数議席を失って以来、トランプが実質的に失速状態にあることが目立ちます。課題処理より、悪口雑言で視聴率を取ろうとする姿勢ばかり目につき、閣僚の大幅交代を示唆しておきながら、いっこうに具体化もしていません。希望者、適任者がいないのでしょうか?

欧州ではメルケルの黄昏が非常に重要だと思います。12月7日には与党CDUの党大会があり、新党首が選ばれますが、新党首がメルケル首相腹心であるかどうかとは無関係に、党内ではメルケル早期追い落とし(議会で不信任案を通して総選挙ということになります)の動きが強まるかもしれません。またそれよりも、ドイツでは(ドイツでも)既存大政党の新陳代謝が進みつつあることが、先行きを読めないものにしています。誰も頼んでいないのに、誰かが議員に選ばれて皆を「代表」するという代議制民主主義から、大衆疑似参加のポピュリズム、その中での世論の極右と左翼(「緑の党」)への二極化という変化が起きています。

これは、製造業における雇用の縮小と(ドイツでは、1970年には雇用の40%弱を製造業が提供していたのが、現在は20%弱に低下 https://fred.stlouisfed.org/series/DEUPEFANA)、それに伴う中産階級の収縮が原因でしょう。低学歴、かつ生活に不満を持つ者は極右勢力、高学歴の者は理想主義的な左翼に二極化、真ん中は空洞化するというわけで、既存の大政党はSPD(社会民主党)も含め、まさにこの空洞に中身があった時代の政党なのでしょう。

いずれにしても、メルケルの次の指導者は「ドイツ・ファースト」になる可能性大です。その時、フランスとの協力関係を崩すと、EUが瓦解する危険性が出てきます。いや、それどころでなく、二度の世界大戦の原因となった「ドイツの自己主張の増大」は欧州政治を大きく液化させることでしょう。そしてウクライナ、イラン情勢等で、メルケルは積極的な関与を見せてきましたが、それも断ち切られ、欧州は国際政治で一つの「欧州」として振る舞うことはできなくなるでしょう。

今月の目次は次のとおりです。
Ghosn is gone・・・
北方領土問題で予想されるロシアの出方
貧困の時代
トランプ政権で移民はどのくらい減ったのか
「日本の財政はもたない」というのは本当なのか?
日本社会・雇用の構造変化
日本経済はやっていけるか? ひとつの試算
ロシア、国際政治のルーレットに再びチップを積み増す
今月の随筆:米中の間の日本
今月の随筆:蘇る日本の青年の暴力
今月の随筆:ロシア人のウォトカ離れは石油離れにつながるか

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/3776