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世界はこう変わる

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2018年10月19日

冬支度 世界金融危機再来へ

(これは9月25日発行の日本版Newsweekに掲載された記事の原稿です。実際の世界同時株安の前に、それを予想したものです)

 リーマン金融危機から10年。8日付けのニュー・ヨーク・タイムズは、当時危機退治を受け持ったバーナンキFRB議長、ポールソン、ガイトナーの両財務長官、この3名連名の論説を掲載した。「バブルは必ずやってくる。いざという時のために、議会はFRBそして政府に、十分な破綻防止・救済権限を与えておけ」という趣旨。

 米国で、バブルがこうも頻繁に膨らんではつぶれるようになったのは、1990年代金融テクニックが発達し、銀行資金が大量に投機的債券の購入に向かうようになったためだが、右の三御所は、そのバブルの資金源を絞ることはもう言わない。米国のエリート達は、金融でほしいまま儲けておいて、「バブルは不可避。つぶれたら、政府=税金で救済すればいい」と思っているわけだ。野放しにされた「貪欲」Greedが、資本主義を食い倒そうとしている。

 米国では1990年以来、バブルはほぼ10年毎に膨らんではつぶれる。今回も、オバマ時代に苦心して財政赤字を2009年の対GDP比9.8%から2017年度には3.4%に下げた のに、トランプはタダ乗りして法人税を大幅削減、一方国防費は大幅増という大盤振る舞い。社会保障費は一貫して増えていくので、財政赤字はこれから増える。2028年には国債の利払いだけで、歳出の25%をも占めるという民間試算も出されている 。

もう10年も続く低金利であふれたカネは、企業を自社株買いに向かわせ、実力を越えた株高をもたらしている。リーマン危機で暴落したダウ平均株価は、2010年に2007年の水準に戻っているが、それ以来2倍強に上昇している。

 中間選挙までは、トランプもあらゆる手段を使ってバブル崩壊を阻止するだろう。その後はわからない。中間選挙での共和党の後退、中国経済の大崩れ、あるいは10年前のリーマン・ブラザーズ破綻のような想定外のできごとが、米国バブル崩壊の引き金を引くだろう。10年前は、中国経済が成長のエンジンとして残った。しかし今回は総崩れになるだろう。

「資本主義の終焉」が本当にやってきたのだろうか? 否、競争と市場メカニズムを保証する資本主義経済が最も効率的で、活力をもたらすものであることは変わらない。金融テクニックと投機で膨らんだ、ヴァーチュアルな富がはげ落ちるだけだ。まともな生活水準を持つ多数の人口、蓄積した資本と貯蓄、そして技術がある限り、経済は回り続ける。

しかし次の危機後の世界経済モデルは、今とは随分変わったものになるだろう。バブルとは別の話しだが、トランプの「製造業は本国に帰れ」の掛け声で、「地産地消」の比重が増えよう。グローバルなサプライ・チェーンは大幅に変わる。中国で輸出用製品を組み立てる企業は減るから、中国向け部品、機械の輸出は減少する。そして輸出主導の経済発展がしにくくなる、途上国の経済は停滞する。これは閉鎖経済ではなく、外国企業も投資・操業は認められるのだが、それでも世界全体の成長率は低下。反面工業製品の価格は上昇傾向を示すだろう。

中国経済が空前の成長を遂げ、世界に安価なモノを提供した時代は終わるのだ。低成長と高めの物価を前提にした経済・社会運営が必要になってくる。低成長でも回る経済、低成長でも満足する社会の到来である。

しかし危機の当初、日本はひどい目に会うだろう。輸出は急減して景気も急落、就職氷河時代が再びやってくる。資産の半分を株で運用している 年金積立金管理運用独立行政法人GRIFは、莫大な含み損を抱え、年金支給への不安が高まるだろう。政府の指令で経済を運営せよ、とか、金持ちの資産をもっと分かち合え等の声が巷に満ち、ポピュリストの野党が政権を取るかもしれない。

1990年、筆者はソ連の指令・計画経済が音を立てて崩壊していく様を、現地で見ていた。だから、言う。指令経済や国家資本主義への幼稚な期待はやめて欲しい。人間という、予測不能な生き物が沢山集まって作っている経済を、計画や指令で動かせるはずがないではないか、と。

政府がやるべきことは、危機後の公的資金注入、そして危機の日本円買いで法外な円高が再現しないよう、直ちに機微なドル買い介入をすることだ。

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