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世界はこう変わる

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2018年10月10日

中国後 の世界経済

(これは、9 月25 日に「まぐまぐ」社から発売したメール・マガジン「文明の万華鏡」第77号の一部です。このメルマガを毎月早く入手されたい方は、http://www.japan-world-trends.com/ja/subscribe.phpにて、講読の手続きをお取りください)
 
米中の貿易戦争が止まらないと、中国は大きな打撃を受けるだろう。これまで外国から貿易黒字、直接投資の形でかき集めた資本は残っているので、これを国内で回し、膨らませていくことはできるが、外資の新規の流入量は大きく減るだろう。中国は、成長のエンジンを大きく失うことになる。EU諸国は米国より輸入障壁が高いので、中国からの輸入を大きく増やすことはないだろう。

これまで中国から米国に向かっていた輸出の多くは、米国内での生産増、あるいは東南アジア、南アジア諸国からの輸出増(つまりこの地域への外国直接投資の増加)で代替される。

以上は、「世界貿易を縮小させ、世界経済も縮小させる」という議論がある。本当だろうか。米国、EU、中国等での消費の規模は基本的に変わらない。ということはモノ、サービスの総生産量も変わらないだろう。しかし米国での現地生産が増える分、世界貿易の規模は確かに縮小するだろう。海運・造船業にとっては、厳しい時代になるかもしれない。

中国からの輸入が減れば、米国でのモノの値段が上がってインフレになる? 1970年代のスタグフレーションの再来になる? 確かに先進国では資本主義はもう飽和していて、生産が停滞する中でモノの値段だけが上昇していくのが本当は常態。それがこの数十年、中国経済の台頭や金融バブルでカバー・アップされていただけ――なのかもしれない。

しかし、移民を受け入れたり、政府が所得を補償すれば、米国では消費も経済もそれなりに伸びていくだろう。中国の製品が入って来なくなっても、東南アジア等から代替の製品が入ってくるし、米本土で生産しても労賃は中国東海岸とさほど変わらない。それに、米国ではロボットが生産原価をどんどん下げていくだろう。つまり、70年代のスタグフレーションの時代とは所与の条件が違う。しかも、これからは無人運転車の登場、あらゆる種類のセンサーの普及と利用等々、むしろ消費は増えるトレンドにある。

従って、日本の企業は米国の次のバブルが崩壊し、物価が底を打つ頃を見計らって米国に投資、現地生産を増強し、米支社との連結決算で企業としての規模を維持・拡大していけばよかろう。もちろん、そういうことのできる人員をどんどん養成していかないといけない、と言うか、現地での生産管理は現地人に委ねて、本社は外国支社の人員をうまく監督・指揮できる社員を養成していくべきだろう。

また現在の日本経済は、自動車等の最終製品組み立て企業だけでなく、むしろ電機・自動車の基幹部品、そしてセンサー等を作り、輸出する部品企業によって大きく支えられている。うちデンソー等の大規模部品企業はこれまでも海外に進出してきたが、これからは更にその規模を拡大するとともに、中小規模の部品企業も海外の主要市場に進出、連結決算のできる態勢を取れるよう、誰かがサポートする態勢を作る必要があるだろう。例えば、商社が現地で工業団地を整備し、経営・運営人員を提供する等である。

AI、ロボットは経済の常識を破壊する?

現代は、バブル崩壊と再生の繰り返しからおさらばする時代かもしれない。AI、ロボットによる生産が普及していくことで、モノ、サービスの生産原価はゼロに近づいていくからだ。それは「限られた量のモノとサービスをうまく分配する」ことを課題とする、これまでの経済学の根本的見直しを迫ることだろう

まず、「ロボットのせいで生産性が上昇する一方、雇用は減少する」というこの奇妙な経済をまわしていくためには、今いくつかの国で小規模な実験が始まっている「ベーシック・インカム(最低所得)保証」――要するに政府が紙幣、あるいは金券を国民に配って、消費を支えていくこと――を採用する必要がある。

しかし、それは奇妙な経済なのだ。言ってみればそれは、「ロボットの雇用を確保するために、あるいはロボットを所有する資本家の利益を保証するために、政府が人間にカネを渡す」という方式なのだが、そんな回りくどいことをするより、「ロボットを破壊して人間を雇い、人間にカネを払って消費させる」方がよほど人間的だろう。

もう一つ起きる疑問は、そんな儲からないビジネスをあえて手がける人間=資本家はいるのか、ということ。資本家が何か画期的な製品を開発しても、その生産費や販売価格がすぐゼロに近づいてしまうのでは、利潤の上げようがない。新しい設備への投資さえ回収できない、ということになるのだ。従ってロボット経済は、「現在あるものをゼロに近い価格で大量に作る」という姿に経済を固定してしまうのではないか」ということ。改良、技術革新は止まる。いや、あるいはAIが技術革新を行い、ロボットが無料奉仕で新しい生産ラインを作り上げる――そういう世になるのだろうか?

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