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世界はこう変わる

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2018年8月 2日

トランプは世界にとっての織田信長か

(これは7月18日発行の日本版Newsweekに掲載された記事の原稿です)

 ドナルド・トランプ大統領はイラン核合意からの離脱、北朝鮮との首脳会談、対中関税引き上げ、そして米ロ首脳会談と、賭けの要素の強い政策を次々と実行し始めた。貿易赤字の大きさを基準に「敵味方」を定め、同盟も何もかも経済での取引の道具とし、海外の紛争は「金がかかる」ので放り出すトランプのやり方はわかりやすく、米国大衆の大方の支持を得ている。民主党はトランプを批判するだけで、反対票を広くまとめられる政策、魅力ある大統領候補を打ち出せていない。

米国では、極端な政策には必ず抑えがきいてくると言われるが、今回はトランプを諌める立場の側近はほぼ絶滅。共和党議員は、トランプ人気に乗って(共和党支持者の90%弱はトランプを支持している )選挙で勝つことに汲々としている。このまま行けば、トランプは二期合計8年間、大統領。いや既に1期目の終わりまでにこの世界は、全く変わり果てた姿を見せていることだろう。

戦後の世界の基本的な枠組み、つまり政治面では国際連合、安保面ではNATOのような同盟体制、経済面ではIMF、WTO等国際機関、これらは字面では維持されても空洞化、G7は多分消滅しているだろう。民主主義か専制かというイデオロギー対立は薄まる一方、19世紀後半の欧州のように「今日の友は明日の敵」、列強が提携の相手をご都合主義的に次々と替える時代となろう。

大国関係の中では皮肉なことに、米ロが最も「緊密」なものになるだろう。プーチン・ロシアに対外拡張する力はないし、米国経済の脅威にも全くならないからだ。ロシアは核ミサイルを多数保有するが、米国は2018年度の国防予算を13%増額する構えで(増額分だけで、ロシアの年間国防費全額にほぼ等しい)、その多くは核兵器の近代化、そして米本土の核防衛強化に向ける。ロシアはこうして抑止さえしておけば、手に負えない敵にはならない。

米ロが手を握れば、その分中ロ関係は薄くなる。しかし米国に経済面で圧迫された中国は成長力を大きく失い、ユーラシアでロシアの利権を侵食していく力は弱まるだろう。従って中ロ関係は、対立する程にはなるまい。

対立要素が最も大きいのは米中関係だろう。経済面での対立が台湾などをめぐる軍事対決にまで至ると、日本は難しい選択に迫られる。米国につき過ぎれば、中国からの先制攻撃を食らい、米国と距離を置き過ぎれば米国からしっぺ返しを食らうからだ。しかし在日米軍基地は16万とも推計される 太平洋戦争での戦死米兵の血で贖ったもの、しかも年間2000億円強 もの日本の「思いやり予算」で支えられるお得なディールで、米軍が東アジアでにらみを利かし中国と「取り引き」をしていく上では不可欠のもの。トランプは残すだろう。

ロシアが脅威と見なされなくなり、NATOが形骸化するとしても、欧州は独仏を核として大きな力を維持していくだろう。しかしそれは、米国に拮抗して世界を仕切るだけの力を持つものにはなるまい。

かくしてトランプ米国は、自分の要求を貫いていく。何者も、米国の政策に反する者には、「米国の銀行との取引を禁ず」れば、その者は世界との貿易ができず、米国への輸出を制限すれば干上がってしまうからだ。だから、極端なことを言うならば、トランプ2期後の2025年には、米国を世界政府とする世界の統一(或いは征服)が成っているかもしれない。米国は今でも多民族の国、小型版世界なので、それを全世界に広げるだけ。米国人にとってはけっこう自然な話しだ。

それで世界が平和で住みやすいところになれば、それでもいい。世界が「国」を単位にいつまでも相争っているのはおかしなことだからだ。しかし世界国家の利益を、米国という領域に住む人間達が独り占めするのは、困る。18世紀、北米植民地は宗主国英国に対して「代表権(議会での議席)なければ課税すべからず」という標語を掲げた。米国議会に(英語のできる)議員を送り込み、米国大統領選にも「世界選挙区」を設けてもらうべき時代になったのかもしれない。
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