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世界はこう変わる

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2018年5月 3日

米中貿易戦争は出来レースなのか

(これは、4月17日付日本版Newsweek誌に掲載された記事の原稿です)

 米中貿易戦争たけなわ。両方とも大幅の関税引き上げで脅しあい、一歩も引かじと見栄を切る。かつての日米貿易紛争での守勢一方の日本を思い出し、中国を羨ましく思う。日本は米国に安全保障を依存しているし、対抗措置を取ろうとしても、それで被害を受ける国内の業界の抵抗を恐れて結局、米国の要求をどこまで容れるかになってしまったのだ。
しかしこの米中紛争も、どこか芝居じみていて、双方空に受けて鉄砲を撃っている気配。適当なところで、両者は手を握ってしまうかもしれない。世界の株式市場もそれを察してか、下げてもすぐ上がっている。

米側はどれだけ本気か? トランプ大統領は明らかに秋の中間選挙、そして3年後の大統領選挙をめがけて話題作り、手柄作りができればいい。特に、彼が大統領になるのに決定的な役割を果たした「中西部の労働者達」に仕事を再び作ってやったと言えることが重要だ。

しかし中国製鉄鋼やアルミなどの関税を高くしたところで、中西部の工場は再開しないだろう。中国の対米鉄鋼輸出は2017年約120万トンの少量で、対米鉄鋼輸出国としては11位の低位にいる。中国の輸出の半分は、スマホなど、中国で組み立てられた西側企業の製品だから、この輸入を制限すれば、アップルやGMなど米国の企業が困るし、米国民の買うものの価格が上がってしまう。米国企業はこれら製品の組み立てを、中国から米国に移すことはせず、ベトナムやインド等、別の低賃金地域に移すだけだろう。従って、米国が中国つぶしを本気で狙わず、中国が米国からの輸入(特に航空機、自動車、医療機器、薬品)を大幅に増やすとともに、中国国内での米国企業に不当な罰金を科さない等、投資環境を改善するあたりで手を打つだろう。

中国は、一歩も引かないと言いながら、実は対応に悩んでいることだろう。脅し言葉のとおり、米国産大豆、航空機に高関税をかけると、他にこれだけ大量の供給をしてくれる国はないので、中国は自分で自分の首を絞めることになる。米国の国債を大量に売却しても、損を被るのは中国の方だ。売り出された米国債は日本等が買いあさるから、米国は困らない。他方、中国の方は米国債を売却して得た大量のドルの行き場に困るのである。
中国は経済大国と言われて自分でもその気になっているが、実際には戦後米国が築いた国際経済の枠組み、仕組みに悪乗りしているだけだ。元は交換性を欠き、中国はその貿易の多くをドル建てでやっている。ドルの支配を崩すため、上海に原油の元建て先物市場を設立したが、元に交換性がないままでは外国人は寄り付かないだろう。

そして米国の措置が実施されて、中国の貿易黒字が減少すると、中国はその急速な経済成長を支えてきた「原資」を大きく失うことになる。2000年代は年間4000億ドルにも上った貿易黒字と外国からの直接投資を元に替え、それを不動産・インフラ投資に向けて何倍にも転がし膨らませて行ったのが中国の高度成長の基本なのだが、そのパン種が大きく失われてしまうのだ。中国の対米貿易黒字は、中国の全貿易黒字(2016年で約5107億ドル)の49.0%に上る 。香港の対米貿易黒字を加えると、それは50%をやや超える

19世紀以来、米国は「西進」でその経済を大きくしてきた。「中国の富」は、その西進の究極の目標である。であれば、中国をつぶすようなことはするまい。貿易赤字の問題は、北朝鮮の核開発停止問題、台湾の独立性維持を含めた、米中間の広い取り引きのひとつの要素として扱われていくだろう。いずれも最終決着が可能なわけもなく、当面のつじつまを合わせるだけの中間的合意が果てしなく繰り返される展開になるだろう。

そして同時進行中のトランプの「ロシア・ゲート」捜査、あるいはシリアでのロシアとの対決などが、アジアの問題を瞬時に矮小化してしまうこともあるだろう。
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