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世界はこう変わる

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2017年8月19日

アングロ・サクソン支配から中華圏へ?

(これは、7月26日に刊行したメルマガ「文明の万華鏡」第63号の一部です)

 よく、「アングロ・サクソンの世界支配」とか言われる。これは、「米英の支配」に言い換えた方がいい。と言うのは、ゲルマン民族の一種であるアングロ・サクソン民族は、確かに一時英国を支配したことがあるが、1013年にはデンマークのカヌート大王、1066年にはフランスに移住していたノルマンのノルマンディー公ギヨーム(即位してウィリアム1世)に権力を奪われ、歴史の前面からは引き下がっているからだ。

それはともあれ、ここではアングロ・サクソンという言葉を便宜上使っておくと、この明治維新の頃から続いている「アングロ・サクソンの覇権」も、踊り場にさしかかっている。最近、その一つの例に行きあたったので、書いておこう。

 7月1日のEconomist誌によれば、マダガスカルの東、インド洋上にあるモーリシャス(英連邦に入っている独立国)は最近、更に東方の洋上、インド洋のほぼ真ん中にあるChagos諸島は自分の領土だと言って、国際司法裁判所に提訴した。このChagos諸島には、Diego Garciaがあって、米軍の一大拠点になっているので、注目された。

ICJでの判決はまだ出ていないが、6月22日、国連総会で投票が行われ、94カ国がモーリシャスを支持。EUの中で英国を支持したのはキプロス等4カ国のみ。独仏等EUの22カ国は棄権に回り、Brexitを標榜している英国を見放した。

Chagos諸島は元英国植民地で、1965年英国はDiego Garciaを米国に賃貸。このインド洋の真珠湾に相当する位置にあるDiego Garciaから、米軍爆撃機がアフガニスタン、イラクに出撃していった。
しかし賃貸当時、英国は1500名のChagos島民を追い出し、その多くはモーリシャス、セイシェル、一部は英国に移住を迫られた。

Brexitをもくろむ英国は、Empire 2.0のかけ声の下、英連邦諸国との関係増進をもくろむが、ボリス・ジョンソン外相は各国からまともに相手にしてもらえない。右の国連総会での投票でも、英連邦諸国の多くはモーリシャスを支持するか棄権した始末で、この状況を見たアルゼンチンは、フォークランド問題を再燃させるかもしれない。なお、ICJの裁決は2019年春ということになっている―――

英米は20世紀、世界を支配した感がある。まさに「アングロ・サクソン覇権」であり、日本は当初英国、ついで戦争を経て米国と同盟することで、世を凌いできた。その間、英米は当初力の源泉となった製造業のうちかなりの部分を失い、その地位の多くを軍事力と金融(決済・蓄積の手段としての「基軸通貨」を有している他、資本市場、オフショア市場で世界の金融取引の首根っこを抑え、更には膨大な資金を世界で運営することで、世界経済を左右している)に依存することになっている。

英国がEUから離脱することでその力を大きく弱め、アングロ・サクソンの覇権も危うくなった感があるが、実際にはこの覇権はまだ続く。ただ日本として気を付けないといけないのは、米国がいつの日にか中国と結託、アジアを中国に仕切らせ、その中国と利益を折半することで、世を渡っていこうとする可能性である。つまり、アジアの諸国は中国と朝貢・冊封体制を樹立、昔の中華経済圏を回復し、米国は中国と話しをつけることでアジア全域の国々と交易をさせてもらう、アジアの諸国は米国との問題は中国政府に交渉してもらう、ということだ。

これは、日本にとって不利になることか? 日本が中華経済圏の中にいた時代、中国の諸王朝は日本が貢物をすることを求めただろうか? いや、そんなことはない。遣唐使を派遣していた、つまり外交関係を持っていた時代でも、日本が対中貿易で搾取されたことはない。そして遣唐使派遣を中止して外交関係を持たなくなった後はなおさら、日本が中国から搾取されたことはないのである。

だとすれば、中国の台頭に目くじらを立てることは必要ない、現在のように米国があやふやになった時代には、頃合いを見計らって中国の船に乗り移れば、それで米中の力関係は逆になり、新しい時代が開く、ということなのだろうか? 日本は米中関係のキャスティング・ボートを握っているのか?
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