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2017年8月 3日

中央アジアは今どうなっている?

(本稿は、IIST・中央ユーラシア調査会 第162回(2017年6月19日開催)報告要旨を転載したものです)http://www.iist.or.jp/category/cesg/

「中央アジアをめぐる最近の情勢」                                    

1. アフガニスタンと中央アジア諸国、大国との関係

中央アジアの安全保障は、アフガニスタン情勢を抜きに語れない。そこで今日はまず、アフガニスタンから話しを始める。

アフガニスタンのガニ政権は、以前のカルザイ政権とは異なり、パキスタンを通じてタリバンを押さえる戦略をとろうとしたが、うまく行っていない。ガニ政権は現在、メルトダウンのような状態だが、タリバンがあまり伸びてこないため、助かっているところがある。ガニ政権はパキスタンの諜報機関との協力で合意し、アフガニスタンのタリバンを押さえようとしたが、うまく行かない。5月12日にはパキスタンのシャリフ首相がアフガニスタンを訪問したが、その翌日にはカブールでテロがあった。

要するに、タリバンは1つにまとまっていないため、誰も抑えることができない。昨年はタリバンが次第に伸びているというニュースが相次ぎ、タリバンはアフガニスタン北東部の中心都市・クンドゥースを数日間、制圧した。しかし、アフガニスタン北西部でウズベキスタンとの国境地帯を押さえる、ウズベク系将軍のドストムが反撃したようだ。タリバンは周辺の都市も占拠しようとしたが、跳ね返されており、その力は絶対ではないということだ。アフガニスタンと言うと、我々はタリバンと政府軍というようにマクロで考えがちだが、草の根ではおそらく地元の部落や長老が最も力を持っているのだろう。

2017年1月には、ロシアが仕掛けてモスクワでパキスタン、中国、ロシアの代表が会談し、タリバンに対して柔軟に対処していくことの必要性で一致したという。これは要するに、ロシアが中国やパキスタンから、タリバンと渡りを付けることへのお墨付きをもらったということだ。これに対し、会議に呼ばれなかったアフガン政府は反発している。また、イランも本格的に、アフガニスタンに地歩を築こうとしている。

ISISについて、ロシア外務省のアジア・中東局長はこの4月、「アフガニスタンには1万名のISIS戦士がいる。1年前は100名だった。彼らは中央アジア、ロシアでの行動の準備をしている」と述べているが、これはやや大げさな見方だ。おそらく「タリバンを仲間に引き入れて、ISISと戦おう」というメッセージを、アフガニスタンや西側政府に対し、発しているのだろう。

アメリカについては、アフガニスタンで戦争をしていたからこそ、中央アジアに関心を示し、政府開発援助(ODA)も行ってきたが、現在はアフガニスタンからは軍をほぼ撤退させている。にもかかわらず、トランプ大統領は、3000名といった規模でアフガニスタンに増派しようとしている。その一方で、アメリカの中央アジアに対するODAは大幅削減される見込みだ

現在、中国の武装警察、国内軍が「アフガン政府との合意」に基づいて、ワハン回廊に出現するようになっているが、アメリカはこれに目をつぶっている。中国は新疆地方のウィグル人に対して神経質になっており、2016年8月にはウルムチで、中国、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタンの参謀長が「テロとの戦い」への協力協定に署名した。中国がどの程度、アフガニスタンに軍事関与してくるかは1つのポイントだが、現在のところ、本格的な関与の兆候も能力もないと思う

中国とインドの関係については、影が差してきたという印象がある。インドの首相が昨年6月にイランを訪問し、アフガニスタンと3国で、アフガニスタンの海への出口としてイランのチャバハル港を共同開発することに合意したそうだ。インドはアフガニスタンと政治、経済的取引をする場合、敵性国のパキスタンを通るわけには行かず、イランを通る道を開拓したいのだろう。これはパキスタン、そして中国に対する当てつけでもある。インドはアフガニスタンに対し、以前からかなりのプレゼンスを持っているので無視できない。

このように、アフガニスタンをめぐっては大国や周辺国が入り乱れているが、どこも決定的な力を打ち立てていない。反面、総じて言えば、アフガニスタンは中央アジアに対する大きな脅威になっていない。

2. 中央アジア諸国と大国、ユーラシア連合

アメリカと中央アジアの関係は、米国がアフガニスタンでどの程度の軍プレゼンスを維持するか次第、という面がある。アメリカは中央アジアに対するODAを大幅削減する構えだが、まだ予算案は承認されていない。ちなみにアメリカのODAは米国国際開発庁(USAID)がほとんどだが、いわゆるODAではなく、経済支援のカテゴリーで括ると、国防省がやるものが桁違いに多く、決定も早い。このため、ODAが削られてもたいしたことはない。また、USAIDは中央アジア諸国にとって、あまりありがたくない民主化支援をやってきた。トランプ大統領は民主化支援やレジーム・チェンジはやらないというので、これについては、私は世界の安定のために良いと思う。

中央アジアとロシアの関係では、ユーラシア連合がかなり不評だ。ただ、旧ソ連諸国はモスクワに対して不満ばかり言いながらも、実際はかなりのベネフィットを得ており、ユーラシア連合についても同様なところがある。例えば、ロシアはキルギスやタジキスタンに安い石油を供給しているほか、ロシアへの多くの出稼ぎを認めている。

他方で、ロシアが中央アジアで抱える問題は、中央アジア諸国が相当、中国に傾斜していることだ。安全保障面ではロシアはしっかりやっており、集団安全保障条約機構(CSTO)は機能不全だが、2国間ではタジキスタンに核弾頭も付けられる短距離ミサイルを最近持ち込んでいる。

ユーラシア連合に関しては、食肉や酪農製品に関する基準が設けられ、キルギスやカザフスタンからの食品輸出に差支えが出ている。また、キルギスでは中国の輸入品を扱うビシケクのDordoi市場で閉店が相次いでいるという。ユーラシア連合に入って中国との間に関税が課せられ、従来のビジネス・モデルが成り立たなくなったためだ。ただ、中央アジアやロシアでは絶対に、物事が決まったとおりには動かず、新聞記事などが出ると、必ずその裏がある。キルギスがユーラシア連合に入った後、中国からの輸入はかえって増えており、これはおそらく税関が腐敗しているためだ。

タジキスタンに対しては、ロシアは年間100万トンの石油製品に関し、輸出関税を免除して出すという署名を行った。タジキスタンにおける石油の年間需要は約100万トンで、そのすべての面倒を見るというわけだ。ロシアは政治的な状況に応じて、石油を絞ったり出したりするが、タジキスタンにはそれに対する免疫もある。つまり、キルギスからガソリンを密輸できるのである。

キルギス経済は不思議なことに、旧ソ連諸国で随一の成長率を示している。理由の1つとしては、ロシアからの送金がまた増えていることが挙げられる。キルギスへの送金は昨年1~9月には12.9億ドルとなり、これはキルギスの国内総生産(GDP)が2、3%増えてもおかしくないという額だ。ロシアのプーチン大統領は2012年9月、ビシケクでキルギスのアタムバエフ大統領と会談し、カント空軍基地を2032年まで存続することで合意した。この基地はアフガンを狙っているのではなく、明らかに中国の新疆地方に睨みを利かせるものだ。ロシアの戦闘機が増派されており、これには対中国の意味があると思う。キルギスとの間では地位協定も発効しており、ロシアがキルギスに持っている4つの軍施設が統合されたという。

ウズベキスタンとロシアも、安全保障面でしっかりやっている。またウズベキスタンのミルジヨエフ大統領が4月に訪ロした際、いくつか新しい合意が行われ、10年越しで交渉していた出稼ぎに関する合意もなされた。ミルジヨエフの大統領就任以来、両国の貿易は急速に伸びている。ロシアの下院は4月4日、ウズベキスタンとの軍事技術協力協定も批准している。他方で、ミルジヨエフ大統領は中国を訪問し、経済面でロシアを上回る契約をしている。ウズベキスタンはさらに、米軍がアフガニスタンで使っていた兵器のお下がりももらっており、ロシアとはしっかりやるものの、くっついたわけではないということだ。

3. 中国の「一帯一路」、中央アジアと日本

カザフスタンやウズベキスタンはすっかり、中国の融資漬けになっている。中国はタジキスタンでも、道路や鉄道、トンネル、工場を盛んに造っているが、限界もある。東西横断鉄道はほとんどできておらず、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)には限界がある。「一帯一路」では3本の鉄道の案があるが、これが進まないのは1つに中国側の金融体制がしっかりしていないためだ。中国はこの1年、明らかに外貨を使うことを抑えていた。

AIIBの資本金は1000億ドルで、資金が足りないのだと思う。また、AIIBは資本金を貸し出すのではなく、債券を国債資本市場で発行して資金を集め、貸すことになっているが、資本市場で債券やボンドを発行するには格付けが必要だ。その格付けを西側の格付け機関が、一向にやってくれていないという。西側の機関はおそらく、中国での活動の自由を認めるのと引き換えに、AIIBの格付けをやるといった話をしているのだろう。約1ヵ月前にはムーディーズが、中国国債の格付けをワンランク下げているが、これは中国政府の求めに応じて中国政府国債を購入するに当たって、条件を西側投資銀行にとって有利なものにするための布石かもしれない。

(注:その後、ムーディーズはAIIB債には世銀債、ADB債等と同等の最高の格付けを与えた。これにより、AIIBは融資拡大のための資金を得られる可能性が出てきた

中国の「一帯一路」では今年5月14、15日に国際会議があったが、欧州諸国の抵抗によって宣言も出せずに終わった。中国についてはまた、中央アジア人に対する査証の手続きを強化したというニュースもある。やはり、ウィグルのテロリストが国境を自由に超えるのを防ごうとしているのだろう。これによって、特にキルギスと新疆の間でものを運ぶ運転手たちに問題が起きているようだ。

もう1つ、中国の軍はロシア軍のように、中央アジアに関与する能力や意図を持っているかどうかという問題がある。自分は、今のところその能力も意図もないものと思っている。

中央アジア諸国については、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領は、今のところ人気が高い。経済の問題はあるが、中央アジア諸国との外交を強化し、ロシア、中国とのバランスもうまく取っている。カザフスタンでは、ナザルバエフ大統領からの権力継承の準備が始まっているようだが、次期大統領が誰になるかは読めない。また、ナザルバエフ大統領が「カザフ語化」を進めていることから、北部のロシア人が流出し始めたという話がある。キルギスでは、今年10月中旬に大統領選挙が行われる。トルクメニスタンに関しては、お金がなくなってきたということが一番の話題だ。

日本の中央アジアにおける存在感は最近、見えにくくなっているが、日本が中央アジアに持つ地歩はかなりのものがあり、じっくりやれば良い。ただ、ウズベキスタンやカザフスタンを中心に、「ODAはもういらないから、直接投資してほしい」という声が高まっている。日本外交はこれまで見せ玉としてODAを使ってきたが、これが効かなくなってきたということだ。だからと言って、日本政府が日本企業に「中央アジアで、何々を作ってくれ」などとは言えず、どうすれば良いかについては真剣に考えていく必要があるだろう。

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