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世界はこう変わる

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2017年2月 8日

世界的デフレ傾向からの脱却が意味するもの

(これは1月末発行したメルマガ「文明の万華鏡」第57号の一部です)

トランプ支持者の中には、経済的に恵まれない白人層がいます。ところが皮肉なことに、大統領選末期には米国経済は回復傾向を鮮明にし、今や失業率4.7%(昨年12月)で、数字上は完全雇用の状況にあります。リーマン危機では約900万人が失職したのを、オバマ時代には1000万人が職を得ています。そしてこれまでは賃金上昇なき景気回復と言われてきたのが、昨年11月には7年ぶりの上昇を見ています。そして、オバマによる医療保険改革で(オバマ・ケア)、健康保険でカバーされる人の率がこれまでになく高まったこと、法で定める最低賃金が引き上げられたこと、男女の賃金差が史上最低に縮まったことなども特筆されるべきことです。

トランプはこの完全雇用状態の中でなお、「今後10年間で2500万人分の雇用を創出する」と豪語、国内への製造業呼び戻し、そしてインフラ投資で雇用を創出しようとしているわけですが、後者のための予算を握る議会は、公的支出の拡大に反対する茶会派共和党に掌握されています。ですから、どこまでインフラ投資(儲からない)に民間資金を動員できるか、それがトランプの腕の見せ所になるでしょう。多分うまく行かず、金利の低下、ドル安を招くでしょう。

EUでもデフレ傾向からの脱却が見えます。ドイツのインフレ率が年頭、昨年の0,8%から1,7%に上がりました。これは原油価格上昇に動かされた面が大ですが。
オバマ時代の世界的な不安定は、リーマン危機が世界各国の社会における雇用を悪化させたことに大きく起因しています。米国の景気が回復すれば(そして中国経済が崩れなければ)世界の状況も好転するでしょう。格差への不満を背景に出てきたトランプはその点、ワン・テンポずれているのです。

なお、トランプと類似の経済政策をしたと言われるレーガンの時代、金利、インフレ率などがどのように推移したか、数字を掲げておきます。今後を占うのに参考になるでしょう。

 1980年代初頭の連銀金利は、インフレ退治に重点があった1980年には実に20%もの高率でしたが、その後急低下、1985年のプラザ合意で更に低下して1987年頃には6%程になっています。GDP成長率は長短金利ときれいに反比例して動き、高金利時代はマイナス成長だったのが、1980年代後半には実に8%程度の成長率を示しています。原油価格急騰に起因するインフレは1980年には15%に届こうとしていましたが、高金利政策で冷やされて、1985年には4%に低下、その後5%周辺を推移しました。ドルのレート(実質為替レート)指数(1973年3月を100)は、1980年から85年に向けて90から130弱に急上昇、プラザ合意で1989年には95周辺にまで低下しています。

 財政赤字は1983年、GDPの6%弱に迫りましたが、その後成長率上昇による税収増で縮小に向かい、1989年には2,5%程度になっています。経常収支赤字は1983年頃から拡大を続けてピークの87年にはGDPの3%強に達し、その後縮小に向かって89年には2%を割っています。

 トランポノミクスがレーガノミクスとの類似性を指摘されるのは、「法人税や高所得者減税及びインフラ投資拡大で財政赤字が増えるだろう。そうすると金利が上昇するだろう。そうするとドル高になって輸出が減り、貿易収支が悪化するだろう。財政赤字・貿易収支赤字=「双子の赤字」は、1985年のプラザ合意、つまりドル安を引き起こすだろう」という連想に基づきます。

しかし先ほどあげた数字が示しているのは、プラザ合意は米国金利が低下に向かう中で起きているということです。またトランポノミクスの場合、議会共和党がインフラ建設のための公的支出拡大を認めるかどうか、あやふやなところがあります。つまり、インフラ建設がそれほど進まないなら、金利も上がらず、ドルも上がらず、むしろトランプによる社会保障縮小によって消費が冷え、景気が低下に向かう、第2のプラザ合意など起きない、という結果になります。 

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