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世界はこう変わる

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2017年1月 7日

トランポノミクスは米国没落の弔鐘なのか

(これは、12月末発行したメルマガ「文明の万華鏡」の一部です)

ある国などが大きな政治・経済問題を抱えている時、守旧勢力が権力を奪取して問題を強権で解決(と言うか、改革の動きを封殺)しようとする・・・これは往々にして守旧勢力の自滅、国の崩壊につながります。実例は1991年㋇ソ連でのクーデターとその失敗です。これはゴルバチョフがソ連構成共和国の自治権を大幅に強めることで何とか国の統一性を維持しようとしたのに対して、軍・KGBが決起したものですが、エリツィンの抵抗が核になって見事に失敗。数日後ソ連共産党は、エリツィンにロシア共和国内での活動を禁じられてしまいました。

米国のトランプは、生活に不安を抱える一部白人層、そしてより広範なキリスト教保守勢力の支持を受けて当選したものですが、彼の掲げる経済政策は前者の不満を解決するものにはならず、世界の経済・貿易体制を混乱に陥れるでしょう。プア・ホワイトも大きな利益を得ているはずの「オバマ・ケア」を大幅縮小、他方裕福な層に有利な減税を行い、企業には補助金をつけてでも海外への流出を止めさせる。そして中国製品に対しては一律35%の輸入関税をかける等々は、様々な支持層に向けて成されたご都合主義の公約で、このまま実行したら支離滅裂なことになります。

補助金をつけて企業の海外流出を止めたらどうなるか? 米国は生産性と技術力で劣る製造業を国内で温存、それを助成金で支えるための費用は年々増大、ということになるでしょう。家電製品、電子製品の多くは輸入に依存しているので、これに高関税をかければ消費者が苦しむだけになります。

これは、「米国のソ連化」、あるいは「米国のキューバ化」です。大衆の再教育・転職を進めることなく、現在の経済のまま生活水準を維持しようとすると、皆が貧しくなる結果となるのです。キューバと国交回復してキューバ経済の近代化に乗り出そうとする時、米国の方は1960年代の車が未だに幅を利かせているキューバのようになってしまう――滑稽なことです。
「中国製品に対しては一律35%の輸入関税をかける」ようなことは、WTO協定上はできません。できることは、特定の品目についてダンピングの疑惑があり国内産業が被害を受けていることが証明できる場合等のみ、関税率を数年間上げたり、輸入数量を制限したりすることだけ、しかも中国がWTOのパネルに米国を提訴すれば、米国は敗北する可能性があります。その場合、米国はWTOから脱退し、すべてを二国間の貿易条約で処理しようとするのか? そんなことは不可能でしょう。

もともとWTO、そしてその前身のGATTは、世界をブロック化していた植民地時代から脱却し、グローバルな自由貿易体制を作りたいとする米国の夢の実現だったのに、そして米国は今でもそのグローバルな体制を利用しているのに(製造業では日本、ドイツ、中国等に利用されていますが)、それを自ら捨ててソ連のようになると言うのでしょうか? 

ですからトランプも結局のところ、メキシコ、カナダとの自由貿易協定(NAFTA)は破棄せず、米国の一方的な行政措置で実質的な修正をはかるに止めるでしょう。この過程で、メキシコで生産し米国に輸出している「日本車」が割を食うことがないように、よく注視していく必要があります。また中国に対しては、特定の品目に対してWTO上のセーフガード措置が取られることになるでしょうが、「中国だけ狙い撃ちにしたわけではない」と米国が言えるよう、日本からの同じ品目も制限の対象とされる可能性があります。

なおニクソン大統領は1971年8月、金とドルの価値を切り離す「ニクソン・ショック」声明の際、すべての輸入品に10%の輸入税(Surcharge)をかけることも声明したことがあります。これが恒常的なものとなれば、GATT体制は崩壊に至ったでしょうが、この輸入税は、他の先進諸国に金・ドル切り離しによるドル切り下げを受忍させるための脅しの道具、つまりドル切り下げに対抗して他国が自国通貨を切り下げようとすれば、米国は輸入税で対抗するという姿勢を見せたもの。ドル切り下げが定着した1971年末にはこの輸入税は撤廃されています。

またレーガン大統領時代は日本の自動車に対して、輸入数量制限が課されたことがあり、日本の自動車メーカーが米国での現地生産を進める結果となりました。今回、トランプ政権が中国からの工業製品輸入を制限すると何が起きるか? 

中国の輸出の半分程度は、外資系企業が行っているものと見られ、中国で対米輸出用の最終製品を組み立てている日本の自動車・電子製品企業、台湾のホンハイ等が、米国に工場を増設する可能性があるでしょう。中南米移民の多い南部の賃金水準は中国の沿岸部に殆ど変わりません。製造業の米国への移転が実現すれば中国の経済を大きく下押しすることになるでしょうが、この20年にわたって中国の現地に築かれた部品等のサプライ・チェーンが米国南部には不在である点がネックとなるでしょう。またトランプが中南米からの移民を制限する方針を示している点も、米国南部での賃金水準押し上げ要因となります。
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