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2016年8月14日

中国の 中央国家安全委員会 NSC は米国型かロシア型か

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中国では2013年末、「中央国家安全委員会」なる組織が立ち上げられた。習近平を長に、中国の安全保障問題を決定する最高機関とされている。しかしこの会議は14年4月以来、報道から消えている。メンバーの全容さえ、わからない。

この委員会ができた時、日本や西側では、中国が米国ホワイト・ハウスのNSCにならって、軍・武装警察(「軍事研究」2011年2月号の洗堯論文では150万名と推計)・諜報を調整するための組織を作ったのだと言われたものだ。

僕は、それは少し違うのではないかと思っている。中国の国家安全委員会は、ソ連・ロシアの国家安全保障会議の方に近いと思う。ソ連、ロシアには国家安全保障会議という機関があって、議長は大統領、メンバーは首相、国会上下院議長、大統領府長官、国防相、内務相、外務相、対外諜報庁長官、連邦公安庁長官他で、これを「書記」(現在はパトルシェフ前国家公安庁長官)がまとめる。不定期に会合しては重要な安全保障問題を議論、決定することになっている。

ロシアの国家安全保障会議には絶対の権限があるわけではなく、大統領がこれをどのくらい使うか、そして書記がどのくらい各省を抑えるだけの器量を持っているかによるのだが、米国のNSCと違うのは40万とも推定される「国内軍」(外国との紛争に対処する軍と異なり、国内の騒動・天災等に対処する。中国では人民武装警察、米国では州兵に相当する。つい最近まで「内務省軍」等に分かれていたが、最近「国家親衛隊」に統合された)にも、大統領のにらみを利かせることができたということである。つまり、「力」を司る政府機関全てを大統領の指揮の下に置いているのがロシアの国家安全保障会議なのだ。

これを中国に導入するとどういうことになるか。まず、中国の国家機構は昔のソ連のものを参考にしているということを念頭に置く必要がある。そのため諜報機関の国家安全部は強力だし、ロシアの国家親衛隊に相当する武装警察は150万人とも推定されている。

習近平がトップに上り詰めた時、彼と争った薄熙来、そしてその薄熙来を支えていた周永康は軍の一部だけでなく、諜報機関、そして武装警察をも抑えていたことを思い出す必要がある。周永康はかつて共産党中央政法委員会書記を務めて諜報、武装警察を統括、習近平からは「独立した」権力基盤を形成していたはずなのだ。中国の中央国家安全委員会が創設されたのは2013年末、周永康失脚が確定したのは2014年12月。平仄が合っていると言うべきか。
周永康が失脚した今、中央国家安全委員会はその役目を当面終えた、だから最近開かれていない。こういうことなのではないか。
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