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世界はこう変わる

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2016年2月20日

ロシア GDPはメキシコとインドネシアの間に

(これは、2月2日付Newsweek誌に掲載された記事の原稿です)

ロシアが、見る見る収縮している。ルーブルの対ドル・レートが1年で約30%落ちたため、ドル・ベースでのGDPもそれだけ落ちる上に、この1年で40%も下げた原油価格が、ロシアの輸出を大幅に減らしているからだ。そして国民の実感の観点からは、インフレのために実質所得が一年で約6%も減少したことも大きいだろう。

2000年プーチンの大統領就任以来、折しも始まった世界原油価格の高騰(12年間で約4倍)に助けられ、ロシアはGDPが約7,8倍にもなる世界史の奇蹟を演じたが、プーチンはそれに乗っていただけ、製造業は国営企業主体で弱体のまま、今やロシアは原油価格と無理心中への道行きだ。そして今年9月には、議会選挙を迎えるのである。どこの国の指導者でも、(経済がわかっていれば)パニックになるだろう。

 リーマン・ショックで米国の力が落ちていたこの7年、中国、ロシアは居丈高になり、「多極世界の到来」を唱えて我意を通し、実力不相応に元やルーブルを「国際通貨化」することまで要求し始めた。そして中国は南シナ海で、ロシアはウクライナ、シリアで当たり前のように軍事力を行使している。ところが、米国経済が一応回復し、利上げを始め、資金が米国に還流し始めるのと反比例して、中国、ロシアの経済は降下し始めた。
 
 世界の風向きが変わってきた。そして風向きが変わる時よくあるように、世界の情勢もしばし風が止まって凪の様相を呈するだろう。つまり中国もロシアも、日米欧の協力を求めておとなしくなり、ウクライナ情勢もシリア情勢も、話し合いによって決着をつけようとするのである。この時、世界で残される紛争は目ぼしいもので、中東のISIS、パレスチナ問題、アフガニスタンの安定化、北朝鮮の核開発程度になってしまう。米国の新大統領は、全く新しい環境の中に就任することになる。
 
日本周辺大国間の力のバランスは変化するか

日本をめぐる大国間の力のバランスはどうなるだろう? 米国がいくら内向きになったと言っても、日米同盟は不変の要素として残るだろう。双方にメリットがあるからだ。ロシアと中国もこれまで通り、準同盟国としての関係を続けるだろう。両国は約4200キロもの国境で接しているので、紛争は避けたい。それに、人権や民主化問題での米国からの圧力をはね返すためには中ロでスクラムを組んでいる必要がある。モスクワの識者達は、中国経済の変調に気が付き、議論もしているが、中ロ協力を続けることで意見は一致している。

それでも、中国、ロシアに対する日本の立場はより強いものになるだろう。「中国では儲からない」ということになれば、欧米諸国は中国の人権問題をあげつらうようになるだろうから、中国にとって日本はそれだけ大事になるし、欧米にとっても日本は中国に対するバランスを取る上で重要性を増す。そして中国が日本を大事にし始めると、クリミア問題で日本が対ロ制裁をして以来、日本に逆ギレして拗ねているロシアも、そのままでいられなくなる。

日本から下手に出る必要はないが、何か水を向ければロシアは応じて来るだろう。追い出されたG8についても、再び加わる意欲を示してくるかもしれない。冒頭述べたように、ロシアのGDPは世界15位のメキシコ程度になってしまったのだが。

ロシアとの関係では、北方領土問題を今解決しなければならないと思いつめる理由はない。ロシアが米国に降伏でもしない限り、ロシアはオホーツク海の原潜(米国攻撃用のミサイルを搭載)、そして沿海地方の軍を守るため、北方領土は返さないし、自衛隊そして在日米軍への牽制を止めないだろう。日本が領土問題でベタ下りして、ロシアと戦略パートナーになったところで、弱体な極東地方のロシアには、中国を抑える力などありはしない。そして別にロシアにすり寄らずとも、日本はロシアから原油、天然ガス、石炭とも、年間消費の10%弱相当の量を既に輸入している。

日本の立場が低下していたこの10年程の間、北方領土問題をロシアに有利な形で解決する好機と見て、いろいろ働きかけをしてくるロシア人もいたが、それに乗るのはお人よしだ。領土問題が解決しないでいることがロシアにとって負担になるように、協力を続けスマイルしながらロシアの背に重い荷物をよいしょと乗せてやるような「ワルの外交」が望まれる。
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