Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
ChineseEnglishRussian

世界はこう変わる

Automatic Translation to English
Automatic Translation to English
2016年2月18日

米国外交の分裂と世界不在の米国大統領選

(以下はメルマガ「文明の万華鏡」第45号からの抜粋です)

シリアやISISへの対応で特に目立つのだが、米国の外交がホワイト・ハウス、議会、国務省、国防省、CIAの間でばらばらになっている。それぞれの組織の内部も一つにまとまっているわけではないので、動きは複雑になる。海外に介入するべきかどうか、海外のどんな勢力を支援するべきか、それに兵器を渡すべきか、どんな兵器を渡したらいいか、それぞれについて諸勢力が自分の判断、自分の資金で動くから、紛争国の情勢は荒れるばかりで、収拾がつかない。

例えばISISにしても、本来はシリアのアサド打倒のためにCIAやサウジ・アラビアが育成した勢力がその中にいるようなのだ。そしてISISが抑えた油田地帯からNATO加盟国のトルコに向かってタンク・ローリーの行列が延々と続くような(未確認)異常な状況も、米国にISISを本気でたたくつもりがあるなら、そのようなことは起こらない。ロシアがこの行列を爆撃していることが、ISISの財務を悪化させ(一部報道によると、最近、兵士の給料が半減した由)、アフリカ等の諸国での小型テロに走らせているのでないか。

今は米議会を野党の共和党が握っていて、ここが予算決定権を持っているのだが、それでホワイトハウスは政府の役人を従えられるのか? 国防省やCIAの役人は、共和党に働きかければ、予算をつけてもらえるのである。

米国の大統領選がようやく本格化してきた。長ったらしい選挙戦なのだが、米国みたいな大きな国で、有権者が大統領候補をためつすがめつ、あらゆる角度から見て判断できるという点では良い制度だ。その代わり、候補者にとってかかる費用は莫大。そのためには特定の勢力、特定のスポンサーにおもねることになる。そしてそれだけ選挙戦で揉んだ割には、出てくる最終結果はこの頃あまり冴えない。歳末のくじびきをガラガラ回したあげく、ポトっと出てきたのは外れの赤玉といった調子。

今回の特徴は、共和党も民主党も、「国内での分配」問題にかかりきりだということだ。政治は分配なのだから仕方ないが、世界における米国の役割についても考えることが多い共和党の候補までが、分配問題にかかりきりなのだ。トップ・ランナーのトランプは、男女平等とか人種差別撤廃とかで女性や少数民族に押しまくられてきた白人男性負け組の不満をあおって、人気を上げている。

米国は19世紀の植民地主義の波に出遅れ、戦後やっとIMFやGATTを作って世界全体を自分の市場にしたのだが(日本や西独もこの市場を使って米国以上の利益を上げた)、本来ならそのグローバル市場の安定維持に責任を持っているはずなのに、国内での分配にかまけて、世界はまるで存在していないかのようだ。日本としては、国防省を頼りにするしかない。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/3136