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世界はこう変わる

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2016年1月 6日

中国は、経済でもソ連型の専制主義国 ということを忘れずに

(以下は昨年末発行のメルマガ「文明の万華鏡」の一部です)

この頃は中国経済の不調ということで、その種のセミナーが花盛りですが、いろいろ聞いてみて不満なのは、ソ連と比較して現在の中国を論ずる人がいないことです。今、深圳の土砂崩れを取材に行ったCNNのクルーが取材を禁止され、カメラを動かすとそのレンズを警官が手でふさぐという場面が放映されていますが、この中国の役人の有無を言わさぬ取り締まり体質はソ連的。こういう上意下達で有無を言わさぬやり方を経済でもやると、経済は麻痺します。

そして習近平政権は、まさにそういうことをやろうとしているのでないか。習近平政権が行っている腐敗一掃は、もともとは薄熙来一派を掃討することがきっかけになりましたが、今では共産党への国民の信任を維持することを最大の目的としています。共産党支配を維持するための改革――これは1985年就任早々のゴルバチョフ書記長が始めたグラースノスチ、ペレストロイカの政策によく似ています。彼も、ソ連共産党の建前と腐敗の現実の間の乖離が甚だしく、このままでは国民の信頼を失うことに危機感を持っていました。ゴルバチョフの目指した情報統制緩和、民主化、経済規制緩和に党官僚が抵抗すると、ゴルバチョフは共産党から政治・経済運営の実権を奪い、それによって却ってガバナンスを失ったソ連経済は転げ落ち始めます。習近平の腐敗一掃は、党官僚の抵抗を受けると言うより、党官僚や企業幹部を恐怖で凍り付かせ、事なかれ主義にして、経済の活力を奪います。

中国経済を語る時、マクロの数字ばかり分析していないで、政治面、社会面も十分織り込んで語って欲しいのですが、この頃はものごとが専門化、細分化していて、あえてそういう素人っぽいことをやる人が少ないのです。

いずれにしても、中国人は経済でないものを経済と思い、右へ左へ極端にぶれ、儲けた者は逸早く外国へ高飛び、残った者は混乱の中に残されるのでしょう。中国の外にいる者は、中国が集計する数字を本当の経済力と誤認し、中国人が本当に経済をやっていると誤認して右往左往してきたのですが、相撲の力士で言えば分厚い脂肪の裏に果たしてどのくらいの筋肉があるのか、中国経済の本当の実力はナンボのものか、落ち着いて考えるべきものと思います。

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