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2015年9月30日

金融投機の抑制=ヴォルカー・ルールの効能

(これはメルマガ「文明の万華鏡」第41号に掲載したものです。全文ご希望の方は、http://www.japan-world-trends.com/ja/subscribe.phpでお手続きいただければ幸甚です)

 米国で大きな実験が進行中だ。銀行が、膨大な預金を使って投機まがいの投資をするのをやめさせようというのである。この銀行投機がリーマン・ショックの一因となったので、オバマ政権は抑制する方策を考えたのである。そして関連法改正のため、レーガン時代の連銀総裁ヴォルカー氏に取りまとめを頼んだので、これは「ヴォルカー・ルール」と呼ばれている。

世の中に流布する通貨の総額は、世の中の商品やサービスの取引総額とバランスしていないと、インフレやデフレになる。ところが米国では1972年、財政・貿易赤字に悩んだニクソン大統領が、ドルの価値を金からdelinkした時から、ドルはただの紙切れ、それが米国と言う超大国の力に保証されていて皆が使うから価値が維持されるという、フィクション通貨になってしまった。こういう純粋の「紙」幣は世界の歴史上、何回も現れているが、いずれもハイパー・インフレを起こして短命に終わっている。ドルだけは、周期的に切り下げながらも、ニクソン・ショック後40年以上にわたって世界経済の血液となってきた。

ドルのフィクション性は、1990年代後半、クリントンの時代の金融規制緩和で、飛躍的に高まった。その極めつけは1999年、シティバンク頭取などのロビイングによって、議会が「グラス・スティーガル法」(1929年の大恐慌後、銀行に株取引など投機性の高い取引を禁じたもの)を改正し、銀行がヘッジ・ファンドと同様の投機性の高い投資をできるようにしてしまったことである。これでマネー・サプライの量は跳ね上がり、住宅ローンを中心にバブルが膨れ上がって、2008年破裂する。

ヴォルカー・ルールはより正式にはDodd-Frank法と呼ばれ、全部で71ページの難解なものらしい(7月25日のEconomist)。しかしその胆は何回も言うとおり、銀行に自己勘定売買と未上場企業株投資、そしてヘッジ・ファンドとの関係を禁じたものである。要するに、銀行は投資銀行やヘッジ・ファンドのように行動するなということである。

この法改正の効き目はまだわからない。難解な文章で、解釈は何通りにもできる箇所がある。それでも銀行は、これまで体内に抱え込んでいた投資銀行やヘッジ・ファンド部門を外部に売却して、取り締まられるのを避け始めている。だから当面、世界をうろつきまわるドルの量は減るだろう。

ウォール・ストリートの連中は、この法律の抜け穴をこれから探していく。でも、せめて1972年から1990年代前半程度のマネー・サプライで止まって欲しい。現在世界で起きている多くの紛争のもとは経済悪化にあり、その経済悪化はリーマン・ショックに起因していることが多いからである。
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