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世界はこう変わる

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2015年4月17日

今のままでは太平洋に出られない中国海軍

世の中は「中国軍増強」への警戒心で一色だが、自衛隊、米海空軍を合わせればまだ万全な力を持っているので、あまり浮足立つと出方を間違えることになる。その意味で、最近雑誌「軍事研究」で読んだ二つの論文が面白かったのでご紹介する。

一つは4月号に文谷数重の名で出た「中国は太平洋第2列島線を目指す!」。文谷というのはペンネームで、インターネットで調べたところでは海上自衛隊で15年勤務した後退職したプロ。書いていることは、プロフェッショナルな裏付けを持っているように見える。

沖縄から台湾に向けて連なる南西諸島は日本領で、石垣島など観光名所だが、戦略の要衝でもある。と言うのは、台湾海峡から北に配備された中国海軍艦艇は戦時には台湾海峡を通れないので、南西諸島のいくつかの海峡を通らないと太平洋に出られないからである。太平洋に出なければ、台湾を武力で制圧する作戦にも差し支えるし、アジアにおける米軍の支配的地位に挑戦することもできない。

そこで数谷氏は、中国海軍は今の戦力では南西諸島を突破できないという、まあ常識なのだが、それの根拠をいくつか示している。一つは南西諸島の海峡を戦時に突破しようとする際、中国は制空権を確立できないだろうということ。嘉手納の米空軍、那覇の自衛隊が南西諸島上空の制空権を持っている。中国機は航続距離を欠くし、南西諸島上空での電子哨戒は日米側に完全に掌握されている。哨戒とは空域の状態についての情報把握で、これを欠く中国空軍は盲目状態で南西諸島上空に突入し、日米両兵力の格好の標的になってしまう。(等々、数谷氏は論文上でいくつかのシミュレーションを行っている)。

そしてもう一つは、中国海軍艦艇が航続距離を欠き、たとえ太平洋に出ても一日内外で帰投する必要が出て来るということである。また太平洋に出ても、電子哨戒は日米側に完全に掌握されていて、中国艦は格好の標的になるだけである。中国軍は現在のところ、哨戒機の数で日米に決定的に劣る。なお、中国南部に配備された艦隊は、台湾とフィリピンの間のルソン海峡を通って太平洋に出られるが、ここも米海軍が抑えることができるだろう。

なお文谷氏は、米国が参戦してくれない場合には、南西諸島の海峡を日本単独で死守するのは無理が伴う、その場合、中国艦船の安全通過を認めることと引き換えに、日本の海上輸送と日本艦船の安全保証を要求すれば良いと述べている。

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