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世界はこう変わる

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2023年11月 6日

第三次世界大戦は起きるか・・・Probably no

(これは10月25日発行のメルマガ「文明の万華鏡」第138号の一部です)

世界を仕切る大国が内にこもり、紛争が頻発する中、世界の論壇では「第三次世界大戦の臭いがする」という議論が増えている。ガザで衝突が起きた時、筆者もそう思った。しかし寝転んで考えてみると、「そうでもないな」というのが今の結論。

これまでの世界大戦はどのように起きたか
 
手始めに、第1次、第2次世界大戦がどのようにして起きたか、復習する(wikipediaを編集)。

第一次世界大戦では、7000万以上が軍に動員され、戦闘員900万人以上と非戦闘員700万人以上が死亡した。戦争が長引くうち、各地で革命が勃発し、4つの帝国(ドイツ帝国、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国、ロシア帝国)が崩壊した。

戦争の引き金となったのは周知のとおり、1914年6月28日、サラエヴォでオーストリア=ハンガリー帝国の帝位継承者フランツ・フェルディナント大公が暗殺された「サラエヴォ事件」。オーストリア=ハンガリーがセルビア王国に宣戦すると、ロシアが同族のセルビアを守るために総動員令を発し、これに対してオーストリアと同盟関係にあるドイツが宣戦する、これに対してロシアと同盟関係にあったフランスが1870年の普仏戦争での屈辱をそそがんものとドイツに宣戦、云々かんぬんという状況。このあたりの切迫感はロジェ・マルタン・デュ・ガールの大河小説「チボー家の人々」でまるで映画のように味わうことができる。

ドイツはフランスを攻略するためベルギーに進攻。これはけしからんということで、当時の超大国英国がドイツに宣戦布告すると、英国の同盟国日本もドイツに宣戦、騒動に付け込んで中国の青島,山東省を接収、南太平洋のドイツの利権を総なめにした。日本は太平洋、マラッカ海峡、インド洋にも軍艦を派遣し、英国の要請で地中海で活動した際には60名弱の戦死者も出している(これがあるから欧州は、日本が21個条要求を中国につきつけ利権を貪ったのに、目をつぶったのだろう)。日本、そして後に米国が加わったから、欧州大戦は世界大戦となった。

第2次世界大戦はどうだったかと言うと、1939年9月1日にドイツがポーランドに侵攻し、これに対して英仏がドイツに宣戦布告したのが発端。ソ連は同年8月、ドイツと不可侵条約を結び、9月17日には東の方からポーランドに侵攻、同国を分割占領しているのだが(余勢をかって同年11月にはフィンランドに侵攻、国際連盟から除名されている)、1941年6月にはドイツ軍が東方への進撃を開始してソ連に侵入したため、ソ連は米英仏の連合国扱いとなった。

日本は中国に侵入して英米の利権を侵害、更にその後、1941年12月8日にはマレー作戦を始め、真珠湾を攻撃することで、英米等を敵に回した。ドイツとイタリアも米国に宣戦布告し、欧州での戦争は世界大戦となる。

第三次世界大戦は起きるか

というわけで、これまでの二つの世界大戦で特徴的なのは次の二点
まず、世界中の大国が直接、互いに戦い始めた、ということ。第二に世界に張りめぐらされた同盟関係が、大国たちをいやおうなしに戦争にひきずりこんだ、ということ。

現在はどうか? 決定的な違いは、欧州がNATOとして一つにまとまっていること、特にドイツとフランスが同じ陣営に属していることだ。欧州で対峙しているのはロシアとNATO。ウクライナ、バルカン半島等、中間地帯は紛争のもとになりやすいが、今のところNATOとロシアのガチンコ対決は、双方とも避けている。事態は、まだコントロール下にある。

それでも、局地戦争が同時にいくつも起きると、大国が直接関与しない、新しい型の世界戦争に見えるかもしれない。しかし大国が直接関与しないと、世界経済が麻痺し、戦争経済が広がることにはならない。

 以上を念頭に、欧州、中東、東アジアという、紛争の三大巣が今どういう状況にあるか考えてみる。

1) 欧州
ウクライナ戦争をウクライナだけに押し込めることができれば、NATOとロシアの直接衝突は起きない。NATOがウクライナ戦争に直接介入したり、ロシア軍がNATO加盟国を攻撃したりすると、それは大国間の衝突を引き起こす。
そうやって米ロが衝突すれば、太平洋方面でも米ロは衝突するだろう。ロシアは在日米軍、あるいは自衛隊に対し、先制攻撃をしかけるかもしれない。
なお、クリミアが危なくなったりすれば、ロシアは核兵器を持ち出すだろう。戦場で用いればロシア軍、ロシア系人口も被害を受けるので、黒海の離島などで示威的に爆発させる。この場合、米国がどう出るか。

2) 中東
中東情勢は、米中ロシア間の直接対決は起こさないだろう。戦争がレバノン、シリア、イランにたとえ拡大しても、中国はもちろんのこと、米ロ間の直接対決にはつながらない。原油価格が乱高下することはあるだろうが、供給が途絶することは考えにくい。
 と言うのは、アラブ諸国はイスラエル、イランと関係を進めることに、利益を見ているようだからだ。ハマスのイスラエル攻撃があった後の10月11日、イランのライシ大統領とサウジアラビアのムハンマド皇太子は電話で対応を協議している。このレベルでの電話協議は初めてのことだ。エジプト、トルコも、調停への用意を明らかにしながら、静観の構えでいる。ハマスは、「アラブ諸国の協力がない」と不満を明らかにしている。そして米国は、イスラエルがガザへの陸上攻撃を控えるよう、働きかけを続けている。
このトレンドが続けば、ガザ情勢は抑え込むことができるだろう。しかしハマス内部、あるいは戦争の拡大を望むイスラエルや米国内部の一部勢力が何か偽旗作戦を仕組むと、事態はまたエスカレートするだろう。

ロシアは、事態の拡大を望むまい。ウクライナとシリアで手いっぱいで、これ以上手を広げる余裕はない。中国は3月、サウジ・アラビアとイランの関係正常化の保証人格で登場したが、あれは「米国でもロシアでもない、色のついていない大国」ということで、サウジ、イラン双方に利用されただけだろう。中国には、イスラエル・ハマス関係を仲介する人脈、実績がない。

3) 東アジア
東アジアでことを起こし得るのは、まず中国。「米国は欧州、中東で足を取られている」と見た中国が、台湾制圧に向かった場合には、米中の直接衝突が起きるし、日本は困難な対応を迫られる。

但し、中国は目下経済停滞で足を取られているし、後述のように軍も幹部粛清があったばかりだし、軍事費をめぐる汚職は、近年の軍備増強がどれだけ内容を伴うものであったか、疑念を持たせる。

なお、起こり得る大国間対決は米国と中国の間だけでない。中国とロシアは1960年代後半、深刻な路線対立の末、1969年には本格的な国境戦争をしている。今回は、習近平が対米関係を改善した時、あるいはロシアでプーチンが去り、彼の路線を否定する後継者が現れた時、中ロ対立の可能性はある。
北朝鮮の核兵器は、米国によって簡単に相殺されてしまうものであり、世界大戦を引き起こすことのできる力は持っていない。

では、かく言う日本はどうか? 敗戦で無力化され、すっかり平和勢力になったつもりでいるが、これから例えばトランプ第二期政権に捨てられて自立した場合、情勢と自分の力を見誤って、何をするかわかったものではない。何しろ、日本はかつて中国、東南アジアに侵攻し、英米と敵対して本当の世界大戦を招いた前歴があるのだ。
これから自衛隊を拡充する日本が、ポピュリズム政治の中でコントロールを失って海外に過剰介入。それによって中国、米国など大国の介入を招く可能性はある。しかしそれは、十年以上先の話しだ。


現下の不安要因

以上、世界大戦的な現象がすぐ起きる可能性は薄いのだが、今の世界の秩序が不安定になっているのは確か。そのいくつかの要因を挙げてみる。

1)不安要因の筆頭は、米国だ。民主・共和両党の対立は常軌を逸している。すべてのことが両党の間の取り引きの対象になるから、政府の人事、予算が決まらない。ローマ帝国の末期症状にかなり似ている。この時、ローマ帝国国内は大きな土地を支配する貴族たちが封建領主化して税と兵士の供出を拒んだから、ローマ軍は崩壊した。崩壊は10年間程度で完了した可能性が指摘されている。そしてローマ軍なしに、あの広大な領域は維持できなかった。

そして米国の外交路線は、「民主化のための積極介入」と「国内重視で海外の問題は外国に丸投げ」の両極端の間で揺れ動く。トランプの間は同盟国にとって、後者が頭痛の種になったが、現在は民主党、特にネオコンと呼ばれる「米国は民主化十字軍の旗頭」的発想をする連中が権力機構の諸方に入り込んでいて、中道のバイデンを自分たちの路線に引きずり込もうとしている(誰が何をやっている、という証拠はないのだが)。

民主化はいいことだが、権威主義政府を倒せば民主化が実現するわけではなく、かえって混乱と生活困難を呼ぶ結果に終わっていることを、彼らは反省しない。彼らは、途上国の人間のためにやっているのではなく、自分の理念、あるいは自分の祖先が東欧でソ連のために虐げられた過去を清算するためにやっている。

この数日、「国務省No.2の副長官にクルト・キャンベルが指名される」という報道がワシントンで駆け巡っている。彼は西太平洋地域を専門にしてきた人物で、彼が現在のヴィクトリア・ヌーランド=ネオコンの代表的人物とされる=に代われば、大きな意味がある。キャンベル氏は反中ではない。中国とは関係を維持しつつその攻勢は抑止するという、古典的な立場である。ただヌーランドがどうなるのかまだ不明なので、これからもフォローする必要がある。

2)中国の経済と内政
中国は1990年代の対外開放・改革で外資を呼び込み、外資工場の稼いだ外貨を人民元に替えて国内インフラ投資を膨らませ、さらに2008年以降は財政赤字の垂れ流しで、奇跡の高度成長を実現したが、トランプの中国敵視をきっかけに、この経済モデルには亀裂が生じた。成長率嵩上げに貢献してきた不動産部門、そして米国への輸出が不調になると、中国経済、そして社会と政治はどうなるか。

今、中国の公務員は夫婦共稼ぎの場合、月に40万円程度の年金をもらっている。それは、彼らが現役の時代に積み上げた金額ではとても支弁できない金額で、多分紙幣の増刷で支弁しているのだろう。インフレでけし飛んでしまう年金なのだ。
経済ががたがたの中で、習近平は時ならぬ軍幹部の粛清に乗り出している。李尚福国防相等が姿を消しているが、数名は汚職がらみとされる。汚職は中国官僚の宿痾なので、問題は「どうして今、粛清するのか?」ということになる。何か政争がからんでいるのかもしれない。

一方、前述のように、汚職も関係して、「世界2位の中国軍」が果たしてどれだけの実力を持っているのかが次の問題だ。日本と同じで、都市の青年は軍隊に入りたがらない。そして「最新技術の装備」もどこまで使い物になるかわからない。例えば中国の独自技術で建造した空母「福建」は、開発の難しい電磁カタパルトを装備しているという触れ込みだが、昨年6月堂々の進水の時、このカタパルトは木造の長屋のようなものでカバーされていて、見えなかった。電磁カタパルトは今でも長屋暮らしをしているらしい。

3)ドイツの漂流

 最近のドイツが盛り上がらない。敗戦国でありながら、実質的な欧州の盟主・金庫番になっていたのが、ウクライナ戦争のあたりから急に勢いを失っている。昨年末、成長率が一時マイナスの領域に入ったあとも、停滞が続く。

輸出の減少など、いろいろ「原因」が指摘されるが、基本的には2000年代、社民党のシュレーダー政権が市場経済活力重視の方向で一大改革をした果実を、メルケルの保守党政権が食いつぶし、それが現在のショルツ社民党政権でも続いているためではないか。食いつぶすというのは、世論に迎合して原発の全廃など、企業の負担になるような理想主義的政策を取ることが多かった、という意味である。これに、ウクライナ戦争で天然ガス価格が一時暴騰したことが拍車をかけた。そして企業の方も、自動車の環境対策面での対応が遅れる等の問題があった。

なお、ドイツはIT化で遅れていると言われることがあるが、それはGAFAのようなプラットフォーム企業がないだけで、ジーメンスやボッシュ、そして日本で知られていないSAPのような大企業があるので、それほど出遅れているとは思わない。
 ドイツが力を失うと、EU全体が力を失う。マクロン・フランス大統領が一人で頑張っているが、政策をカネで支えるドイツという存在が後ろについていないと、マクロンも口先だけ、かっこづけ外交で終わってしまう。通常、紛争を調停する方向で動く――ごまかしで終わることが多い――EUが弱化するのは、世界を不安定化させる要因となる。

4) ドローン登場のインパクト
コーカサスやウクライナの戦争では、大小さまざまのドローンが大きな働きを示している。無人のドローンは操縦の問題を抱えてはいるのだが(遠方で自律的に行動できる高度なものは少ない)、小型で敵陣のレーダーを突破して目標に神風攻撃を加えるから、うまくいけば高価なミサイル並みの戦力を発揮する。ウクライナではドローンを作る町工場が増殖し、今年は20万機ほどを生産する勢い。化学工業があるから、火薬の調達にも事欠かないのだろう。次々にロシアに撃墜、あるいは操縦電波を攪乱されて墜落しているのだが、替わりはいくらでも生産できる。

ガザで見るように、地上を制圧しようとしたら戦車と歩兵を航空機の掩護つきで突っ込ませるしかないのだが、たとえば尖閣の防衛ではドローンは有効な兵器だろう。
ドローンは安価でローテク。経済小国でもそれなりの軍事力を持って、紛争を起こし得るようになる

余談だが、日本ではドローンの開発・生産はどんな感じだろう。どこでどういう戦闘があり得て、そこではこういうドローンが有効だからそれを作ろう、というような検討は行われているだろうか?
 昨年12月発表された防衛力整備計画では、「5年後の2027年度までに、我が国への侵攻が生起する場合には、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除できるように防衛力を強化する」と言っている。

報道では、日本は世界に先駆けて(?)レール・ガンの発射実験に成功している。レール・ガンとは、リニア・モーターの原理で弾丸(非核)を超高速で発射し、その力で大きな被害を発生させる電子大砲。電磁誘導の大型パチンコと思ったらいい。大電力を必要とするので、護衛艦からはおいそれと発射できない代物なのだが、核ミサイルに代わる抑止手段として開発するのは賛成だ。開発しておけば、実用にならずとも、一定の抑止力になるし、外国の企業との取引の種にもできるだろう。
軍事技術の革新は不安定化要因でもあるが、日本にとっては有効な非核抑止力を強化できるチャンスでもある。

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