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世界はこう変わる

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2016年10月13日

世界のメルトダウン その15 国際紛争の新たなactor達3 諜報機関

(13年前、「意味が解体する世界へ」という本を草思社から出版した。
米国のイラク攻撃が、「自由」とか「民主主義」というスローガンへの幻滅をかきたてると同時に、米欧諸国の足元でも移民により多民族国家化が進行し、近代の「自由民主主義」が危殆に瀕している様を随筆風に書いたものだ。僕が自分の書いた中でいちばん好きな本。
そして今、13年前に書いたこのことが、世界のメルトダウンを起こしている。
それについて共著本の出版を策していたのが頓挫したので、ここに自分の書いた分を発表していくことにする。これはその第15 回)


国際政治の主体としての諜報機関

大国はどれでもそうだが、その諜報機関は外国に手先を持ち、秘密工作で国益を推進しようとする。例えば偽札を大量に持ち込んで、その国の経済をかく乱するなどである。最近の好例は、ロシアによるクリミア併合の際に見られた。

二〇一四年二月、ウクライナのヤヌコーヴィチ大統領は民主化運動(と言うか、民主化運動のお鉢を奪った極右暴力組織)に追われてロシアに逃亡する。すると黒海に突き出た半島である、ウクライナ領クリミアの情勢が一気に不穏化、国籍不明の緑色の制服を着た軍人たちが「湧き出て」、クリミア諸都市の役場を占拠してしまったのである。これは、ウクライナを民主化運動で不穏化させ、ヤヌコーヴィチ大統領--ロシア寄り――を追い出したのは西側の策謀だ、西側はロシアの黒海艦隊の主要基地セヴァストポリがあるクリミアの制圧まで狙っているのだ、と思い込んだプーチン大統領が、ロシア軍の諜報・工作機関であるGRUの要員を使って実現した事件であった。GRUはクリミアの住民の世論を調査し、ロシアへの併合に反対どころかむしろ賛成の方が多い(公務員給与、年金などが三倍にもなることが大きな要因)ことをつかんだ上で、併合への工程表をまたたく間に作り上げたのである。

このような話をしても、日本では秘密警察、諜報機関が戦後解体されて久しいために、信じてもらえないが、戦前日本軍の諜報機関は、清朝の最後の皇帝溥儀を満州国の皇帝として担ぎ出すため、幼稚な工作を随分重ねたし、中国大陸において暗殺等の工作をほしいままにしていたのである。つまり、外交を動かすものは外務省だけではない。NGOも、諜報機関も独自の動きで国際情勢を作り出しているのである。

国際情勢を作り出しているのであれば、これら組織は国際法で律せられるべきものだが、国民国家を代表するものではないために、国際法上の主体ではあり得ない。これら組織は海外では単なる法人、あるいは個人であるに過ぎないので、所在国の法律に従う。所在国の法律に抵触したことが明らかになれば、所在国の法律に則って裁判を受け、刑罰を受けることになる。
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