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世界はこう変わる

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2016年10月10日

世界のメルトダウン その14 国際紛争の新たなactor達2 NGO

国民国家以外の登場人物:NGO

既に述べたとおり、近年激化したいくつかの紛争では、「国家」以外の勢力の働きが目立つ。まずNGOがある。米国では一九七〇年代頃からNGO、あるいはNPOと呼ばれる民間団体が増加し、民間の募金、あるいは政府からの助成金を受けて、途上国の開発支援、医療援助、環境運動、動物愛護運動などを行うようになった。これは、当時の不況の中で、弁護士や青年に仕事の機会を与えるものでもあった。

そしてこうしたNGOの中には、途上国の民主化を支援するものも現れた。一九八三年、米国議会はNational Endowment for Democracyを設立、これは今でも、年間一億ドルもの資金をこうした民主化支援NGOに助成金として配布している。

このEndowmentの設立を受けて、共和党は自党の下にInternational Republican Instituteを、民主党はNational Democratic Instituteを設立、途上国、旧社会主義国の民主化を支援させた。これら団体は外国に事務所を設け、人員を配置して、その国の反政府運動を指南、支援し、レジーム・チェンジを助けるようになったのである。これら諸団体の活動は二〇〇三年のグルジア、二〇〇四年のウクライナ、二〇一一年からのアラブの春、二〇一三年末のウクライナ反政府運動等となって「結実」する(但し、NGOが全てを仕組んだのではない。NGOは触媒役を果たすに過ぎない)。ロシア等の専制主義国はこれを自国でやられることを極度に恐れ、米国政府を強く非難するようになった。

しかし、米国オバマ政権はアフガニスタン、イラクからの撤兵を実現することを公約にして登場した政権である。新たな軍事介入は極力避ける。ところがそのオバマ政権も、NGOのやることは止めることができず、政権に残るネオコン分子もNGOを利用しているので、世界中で民主化運動に火がついて不穏な情勢が起きる。するとNGOは、「何々国で民主主義を求めて立ち上がった者たちを助ける」ための武力介入をオバマ政権に求め、介入が実現しないとオバマ大統領を臆病者だと非難、次の選挙で民主党たたきの材料にしようとするのである。今の米国では民主、共和両党の対立が度を越えているところがあり、米国内での党派対立に世界中を巻き込んでいるのである。米国以外に超大国がないため、米国の行動に抑制が効かなくなっている。

ロシアにもNGOは存在するが、海外で米国のNGOのような動きを示すことはない。ロシアのNGOは以前なら、共産主義の宣伝をその生業とすることができただろうが、今では何もアピールできるものがない。米国のNGOが自由、民主主義というグローバルな価値観を旗印に掲げることができるのに対して、ロシアの団体はそれができない。ロシアの団体が民主主義を標榜し、これを途上国に教え込もうとしても、信ずる者はいないだろう。だからと言って、ロシア正教を布教しても、その効果は限られる。従って、ロシアの団体は利己的な目的、つまりロシアの国益を増進するために活動するしかない。
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