Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
ChineseEnglishRussian

世界はこう変わる

Automatic Translation to English
Automatic Translation to English
2018年11月 3日

2018年10月の世界情勢

(これは10月24日にまぐまぐ社から発行したメルマガ「文明の万華鏡」第78号の冒頭です。毎月の情勢のまとめとして便利なので、アップしておきます)

僅か1カ月半の間に15度も温度が下降とは、厳しいものがあります。
昨日からボストンに出張していますので、今月は少し短かくなりますが、早めに配信させていただきます。
今月の最大のニュースは、10月4日ペンス米副大統領がハドソン研究所で行ったスピーチで、中国があらゆる分野で米国に挑戦し、中間選挙にまで干渉していることをあげ、ことは貿易戦争を超えるとして、実質的な新冷戦宣言を行ったことでしょう。これがどこまで定着するかわかりませんが、もしこれが米中軍事衝突ということになると、日本は難しい立場に追い込まれます。米ソ冷戦の時のソ連は、日本に向けて使える核ミサイルを持っていなかったため、その対日脅威度は限られていましたが、中国は中距離核ミサイルを100発以上持っているからです。例えば台湾をめぐって米中軍事衝突が起きた場合、日本は米軍の助太刀をするのがいいのでしょうが、中国の核ミサイルに狙いをつけられている中では、それは難しいでしょう。

一方、日本の対中「経済依存度」が大きいので、米中新冷戦は望ましくないという意見もありますが、この議論は「依存」ぶりを過大評価していると思います。と言うのは、米国が中国からの輸入を減らすと、日本から中国に輸出する電子製品用部品や組み立て用機械(いずれも、中国で対米輸出品を組み立てるために用いられている)の輸出も激減し、それによって日本の対中貿易「依存度」も下がる構造があるからです。中国経済についての数字はどれも大きいので、圧倒されがちですが、水膨れしたものが多いことを念頭におくべきです。

次にマグニチュードが大きかったのは、世界株同時安でしょう。2008年のリーマン金融恐慌後の空前の金融緩和、そしてトランプ政権のその場当たりの経済政策――法人税引き下げの大盤振る舞いの一方で国防費等を大幅増額――で、いつかは金利上昇をきっかけとする株価低落が起きるだろうことはつとに予想されてきたところです。今そのとおりになってきました。米株式市場は、企業の年度決算が好調だったことを囃して上がっていますが、企業の収益が上がっているのはトランプが法人税を大幅に切り下げたためで、これを除くと米企業の収益は実は下がっているようです。また、米企業は余剰資金を投資より自社株買いに振り向けており、これもまた株式市況が実力以上に吊り上がっている原因です。つまり株式市場は下がって不思議ではない、しかしそれが2008年8月のように信用不安、銀行の金づまりを起こすかどうか――あの時は、取り引き相手が手持ち債券価格の急落でつぶれそうになっているのではないかという疑心暗鬼が広がり、誰も金を貸さなくなったことが契機でしたが――、今米国の金融機関がどれだけ悪質な資産を抱えているか知らないので、何とも言えません。

次に、韓国政府の北朝鮮宥和への前のめり姿勢が気になります。韓国にとっては、「北に攻撃されないこと」を確保すれば、あとはゆったりしていられるはずなのですが、文在寅大統領は経済不振で支持率が急落して追い詰められているのか、北朝鮮との関係を進めることに前のめりになっています。関係推進のためには対北朝鮮制裁を破り、38度線における国連軍の行動さえ、国連軍と協議することなしに縛るに至っています。康京和外交部長官は北との交渉の中には入れてももらえないのに、責任だけ負わされて、米日からの非難を一身に浴びる損な役回りのようです。しかし、15日Stars and Stripesの報道では、日本の横田米軍基地には、韓国人は同盟国の国民とは異なる特別な手続きなしには立ち入ることができなくなったようで、私が以前から言っている、「南北宥和先行⇒終戦宣言(南北間では9月19日の首脳会談で、実質上、既にしてしまいました)ないし平和条約締結⇒在韓米軍撤退⇒南北国家連合ないし南北統一⇒核つき大国の誕生」というシナリオが静かに、しかし確実に回り始めた感じがします。

もう一つは、サウジ・アラビア情勢がきなくさくなってきたことです。MBSことサルマン皇太子について西側マスコミは、「改革者」というレッテルを貼って持ち上げてきましたが、反政府記者のトルコでの殺害を彼が首謀したと目されることで、権威主義・専制主義者としての実像が露わになりました。それは前からわかっていたことなのでどうということはありませんが、問題は彼の地位がぐらつくと、王族たちがサルマン国王の後を狙って策謀を始めるのではないかということです。サウジの不安定化は石油市況に響きますので、心配なところです。

9月初めにはロシアのウラル地方で、マグニチュード5近くの地震が数回起きました。ウラルに山脈(と言っても丘程度のものになっていますが)がある以上、ここは昔プレートがぶつかったのでしょうから地震があって不思議はないのですが、ロシアではこれまで大地の上の政治・経済こそ激しく揺れても、大地そのものは揺れないことになっていたのです。いよいよ中国プレートがロシア・プレートを呑みこむべく、西への動きを開始したのかもしれません。

今月の目次は次の通りです。

目次

世界で進む地殻変動1:米中新冷戦
世界で進む地殻変動2:米欧も冷戦か?
日本史始原探訪4:戦国時代から江戸時代にかけての土地所有・村落形態
今月の随筆:米国が国連から脱退する日
今月の随筆: Kakistocracyって知ってますか

コメントを投稿





トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/3761