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世界はこう変わる

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2008年11月09日

アフガニスタンをめぐる新しい動きに気をつけよう

アフガニスタンについては米国が、日本もインド洋上の給油だけでなく、自衛隊を現地に送って反テロ活動をするよう要請していると報道されている。

ここでまた自衛隊海外派遣の是非をめぐって喧々諤々の論争を展開する前に、アフガニスタンをめぐる最近の動きを見ておきたい。自衛隊派遣をやっとのことで決めてみたら、その時には西側はもう撤退モードに入っていた、というようなことがないように。

一つは、情勢を不安定化させてきたタリバン勢力と話し合おうとする機運がアフガニスタン政府、そして西側の一部でやや本格化したことだ。
9月にはサウジアラビアで、英国の支援も得て両者が話し合っている。西側はタリバンをまずアル・カイダから引き離そうとしているが、タリバン側はカブールの政権と連立を組んだ場合のポストの配分とかNATO兵力の撤退計画策定とかを主張し、それも毎日要求をくるくる変えていたらしい。内部の統制が取れていないのだろう。

その話し合いの帰趨がうやむやのうちに、今度はアフガニスタン駐留の米軍がパキスタン領に越境してまでアルカイダ掃討作戦をするケースが頻発し(アルカイダは両国国境のバジリスタン地方を中心に活動しているらしい)、パキスタン政府から強硬な抗議をくらうという事態になっている。

この二つの情報をあわせると、アフガニスタンをめぐる西側の立場は悪くなる一方ということなのだが、そうでもないことを示すリークが最近のワシントン・ポストに行われた。つまり米軍の「越境」攻撃は、実はパキスタン政府の納得づくで行われている、「抗議」は世論向けのポーズだ、ということなのだ。

同種の情報はこれまでもインターネットでちらちら流れていて、今度のワシントン・ポストのはそれを裏付けるものだ。一体誰が何のために、こんな詳しいリークをしたのかはわからない。

いずれにしても、日本は他国の軍に守ってもらわなければならない自衛隊を派遣するより、カブール政権とタリバン・パシュトゥンとの話し合い、アフガニスタン・パキスタンをめぐる国際会議開催、パキスタンへの経済援助などで存在感を発揮する方が性に合っているのではないか?

11月4日付けワシントン・ポストの記事は、論説委員のイグネイシャスが書いたものだ。要旨は次のとおりだ。

①米軍の無人機Predator等がアフガニスタンからパキスタン領に越境して行動することに、パキスタン側は表向きは抗議を繰り返している。しかし、パキスタン側は芝居をしているだけだ。
9月にザルダリ大統領が訪米した後、Predatorによる攻撃を両国間で調整するメカニズム、そして主要攻撃目標のリストが合意された。
ザルダリ大統領、そしてキヤニ新参謀長が、パキスタンにとっての主要な脅威はインドではなく、イスラム・テロであることを認識したことが、この合意を可能にした。

②右攻撃目標リストにはアルカイダのみでなく、かつてはパキスタン軍の諜報組織ISIがかばっていたアフガニスタンの軍閥Gulbuddin HekmatyarやHaqqaniクラン、そしてタリバンのリーダーであるモハマド・オマールが含まれている。またパキスタン・タリバンのリーダーと目されてきたBaitullah Mehsudもリストに含まれている。

③先週、パキスタンの諜報機関ISIの新長官Shuja Pasha将軍(注:ムシャラフ大統領の息のかかった前任者に代わったもの)がワシントンを来訪し、米軍・諜報機関上層部と会った。
10月16日、アルカイダのNo.4と目され、要員徴募を担当していたKhalid Habibがアフガニスタンで殺された直後だった。彼は、米軍無人機Predatorによって殺されたのだが、これは最近米・パキスタン諜報機関同士のヒューミント情報面での協力が進んできたおかげである。

米軍の越境攻撃に口先では抗議しながら裏では協力する、というパキスタン政府のやり方がいつまで続けられるかはわからない。だが、しばらくはこの作戦の帰趨を見守り、平和的解決のために日本ができることも検討していくべきだと思う。
Copyright ©河東哲夫

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