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世界はこう変わる

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2008年05月24日

上海協力機構はそんなにスゴイものなのか?

 (東アジア共同体評議会のサイト「百家争鳴」http://www.ceac.jp/cgi/m-bbs/に投稿したもの)

「上海協力機構(SCO)」という妖怪の影に騙される人が多いので、その正体について卑見を述べる。元々この機構は、ソ連崩壊を受けて中央アジア諸国と中国の国境安定を確保するべく組成されたものである。2001年の9.11事件の後、米国がユニラテラリズムに急速に傾き、中央アジアにも軍事基地を獲得すると、SCOは、ロシア、中国にとって米国に対抗し団結を誇示するための手段となった。また中央アジア諸国にとっても、米国が権威主義的な中央アジア諸国への批判を強め、「レジーム・チェンジ」をちらつかせるたびに、ロシア、中国の胸に逃げ込むための手段となったのだ。だから、SCOは、ナポレオンに対抗して守旧諸国が形成した神聖同盟をもじり、権威主義同盟と呼ばれることもある。

 「SCOはユーラシアの東半分に鉄のカーテンを敷くもので、中央アジア諸国と話し合いたいと思ったらロシア、中国の了承を得ないと駄目だ。だからSCOに日本も入ろう。そうしておかないと東アジア共同体を話し合う際にも日本の立場が悪くなってしまう」と思っている人が多いようなのだが、それは杞憂だ。なぜなら、中央アジア諸国は独立しており、日本との関係を独自に進めているからだ。そして日本は2004年に「中央アジア+日本」という集団的な対話フォーラムを立ち上げた。EUもその後、「中央アジア+EU」というフォーラムを立ち上げている。アメリカも貿易・投資について同様のフォーラムを持っている。どの国も中央アジアの独占などしていない。中央アジア諸国自身、諸方をうまく天秤にかけ、最大限の利益を引き出している。

 SCOは内部に限界を抱えている。ロシアは、SCOに安全保障問題も所轄させ、昔のワルシャワ条約機構のような存在にしたいようだが、中国はそれを望んでいない。中国は経済面で米国に大きく依存しており、米国を過度に刺激したくない。中国は中央アジアに領土的野心を持っておらず、新疆地域の裏庭が安定し、エネルギー資源を輸入できれば、それで満足なのだ。もう一つ、中央アジア諸国にとって、アフガニスタンは安全保障上最大の懸念材料だが、1979年のアフガン侵攻失敗のトラウマを持つロシアは、アフガニスタンに兵力を送りたくない。こうして、安全保障面でSCOが中央アジア諸国の役に立たないなら、経済協力で役に立つかというと、そうでもない。ロシアも中国も、中央アジア諸国と二国間ベースでどんどんプロジェクトを進めているからだ。

 だから日本はSCOについては、安心していい。「アメリカがSCOのオブザーバー・ステータスを申請した」とか「インドがSCOに加盟したがっている」というのは、撹乱情報だ。それぞれの政府に確認してみれば、そのことは直ちにわかる。日本は、SCOに加盟することなど考えず、中央アジアの独立と団結を強化していけばいいのだ。そうすることが、中央アジア諸国自身の国益にも叶う。長いものにはすぐ巻かれたがるのが日本人の悪い癖だ。それにSCOは長そうに見えるだけで、実際にはそれほどのものでもないのだ。

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