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世界はこう変わる

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2006年12月03日

「新たな冷戦」? そのマグニチュード

Japan-World Trends Dec.4, 2006
     河東哲夫

「第二の冷戦」という言葉が欧米のマスコミに散見される。日本の新聞も、ロシアで政治・経済殺人が急増していることを批判し始めた。
1期目は改革の方向に動いていたプーチン大統領も、2期目には民主主義の抑圧と改革の後退を西側から批判され、「ロシア人はことごとにアメリカに、理由のない敵意を見せる。ロシアはソ連と同様に、我々の敵になったことを認めなければ成らない」と書く米国マスコミさえ現れた。
米国指導部の中では唯一プーチンを信用していたブッシュ大統領も、一部報道によれば最近では「プーチンはおかしくなってしまった」(We’ve lost Putin.)と嘆いている由。
米露間の心理的齟齬が、臨界点に近づいた。米ロはともに、08年が大統領選挙だ。両国の政治家は互いをたたくことによって支持率を上げようとするだろう。ロシアは米国の拡張主義を、米国はロシアの強権政治と軍拡をあげつらっていくことになろう。

だが一体どうしてこんなことになってしまったのか? 91年ソ連崩壊とともに権力についたロシア若年世代の多くは、アメリカ的な自由を夢見るリベラルだった。だが彼らはアメリカ留学を鼻にかけ、「俺が俺が」という世代でもあった。そんなことで利権の入り乱れた社会を改革できるわけもなく、彼らは大混乱を招いたあげく旧世代の復活を許してしまった。
ロシア人の多くは、西側からの「大型援助」に期待した。共産主義の政府に何から何までやってもらうことに慣れていた彼らは、政府に代わる「スポンサー」として西側政府に期待した(この頃のことは私が熊野洋のペンネームで書いた大河小説「遥かなる大地」〔草思社〕に書いてあるので、是非読んで下さい。さわりは、私のブログwww.akiokawato.comにも掲載してあります)。
確かに援助はやってきた。しかし「天から雨のごとくに降る」援助は遂に来なかったばかりか、ソ連圏だった東欧やバルト三国に西側はNATOを拡大し、友達になったつもりでいたロシアを圧迫してきた。僕はこの頃モスクワにいて、ロシアの友人達がどんなに憤り、絶望していたか覚えている。

 しかし、そんなことは言っても仕方のないこと。米ロ関係は悪くなる、という現実は動かせまい。ブッシュはロシアのWTO加盟に同意したではないか、米ロ関係は良い方に向かっているのだ、と言う人もいる。だがロシアと対立しているグルジアやウクライナが同意するまで、ロシアはWTOに入れない。米国がロシアのWTO加盟に同意したのは、おそらくイラン問題などとの取引の材料としてだったろう。

では、米ロ関係はどのくらい悪くなるのか? かつて米ソ対決がそうであったように、米ロの対立は世界政治のアウトラインを決めてしまうことになるのか? いや、事態はそこまでいくまい。米ロの口喧嘩は激しくなるだろう。ロシア制裁論議も起こるだろう。
しかし、今のロシアに米国との対決に耐えられる体力は到底ない。その経済成長は原油価格の上昇に支えられていて、脆弱だ。投機資金に支えられた原油価格は、米国が本気になれば下げることもできるだろう。
確かに軍事支出は急増していて(07年は17%増えて3兆円強となる。うち半分が装備取得費だ)、兵器の生産も再び増加してきた(2015年までに20兆円をかける兵器生産計画を採択したようだ)。だが陸軍総員は113万人にまで減っていて(北朝鮮軍は117万)、今のように若年人口の少ない人口構成では容易に増員できまい。またソ連時代に作られた核ミサイルは「賞味期限」を過ぎてきており、新規補充が追いつかない。ロシアは米国をミサイル削減交渉に引きずり込むため、自分の核ミサイルの就役期限を3倍に延ばすなどと威しをかけているが、これもどこまで真剣だろう? ロシアはその発電の5%程を解体した核ミサイル弾頭のウランに依存していることや、ロシアのロケットの固体燃料は米国よりも劣化が早いといわれていることなどを勘案すれば、「3倍」云々もやはりブラッフの勝ったものだろう。
 
従って、米ロ関係が悪くなると言っても限度がある。ロシアはミャンマーとは違って核大国だ。アメリカの思いのままに制裁措置を取れるわけではない。それにイランや北朝鮮情勢のように、ロシアの力が少しは必要な問題もある。他方、ロシアは米国を罵ることはあっても、その機嫌を徹底的に損ねることは避けざるを得まい。だから米ロのやり取りは、ポーズの勝った「できレース」になるのでないか。
     
それでも米ロ関係が悪くなれば、それは世界中に響く。中国にとってはどうか? 米ロは中国の支持を得ようとして言い寄ってくるだろうから、中国が米ロの間で踏み絵を踏まされるような局面よりも、中国が漁夫の利を得てほくそ笑む場面の方がはるかに多いのではないか。
2008年、G8サミットは日本で開かれる。この時、米ロ対立は抜き差しならないことになっているかもしれず、ロシアがG8のメンバーとしてふさわしいかどうかの議論を日本がさばかなければならなくなる。

米ロ対立とそれをめぐる事態は、「自由と民主主義の諸国と、強権主義と腐敗の諸国」の対立と形容されるようになっていくだろう。因果な話だ。外国からの投資があれば、強権主義の国でも次第に民主化、合理化していくのに、現時点での違いを固定したものと考え、その違いをベースに対立を煽っていこうというのだから。
ロシアや旧ソ連諸国自身が国内利権構造を打ち破って不公正な所得配分と腐敗を撲滅し、国内・国外資本が投資しやすい環境を作れば、事態は未来志向で解決していくことができるのだが。

コメント

投稿者: 電波少年 | 2006年12月05日 23:52

>ロシアや旧ソ連諸国自身が国内利権構造を打ち破って不公正な所得配分と腐敗を
撲滅し、国内・国外資本が投資しやすい環境を作れば、事態は未来志向で解決して
いくことができるのだが。

確かに理想ではありますが、こんなことは起こりうるのでしょうか。腐敗が撲滅さ
れると、逆に投資しづらいと感じる企業も出てきそうな気もします。

米国の人権問題批判なども、実際どこまで事態を案じて批判しているのでしょう
か。往々にして米国内の政治的取引の材料として持ち出されているに過ぎない気が
します。米国人の主義主張はとても偽善的に思えて仕方ありません。

私自身は、正直にがんばっている人たちがハッピーになる世の中が望ましいと常々
思っています。
電波少年

投稿者: 木下俊彦 | 2006年12月06日 00:12

中ロは軍事同盟にはいたらないだろう、というメッセージは大事ですね。
しかし、NATOが日豪印との関係強化を狙いだし、米中関係も微妙ということに
なってくると,不信を承知で関係強化ということはおおいにありそうですね。
現に共同演習はやっているのですから。
ポストネオコンの米国はどうなるのか。
クリントン時代のようにウォールストリー
トが国家戦略を創るようになるのでしょうか? NGOの標的は今度はどこに?

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