Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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世界文明

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2019年5月11日

中国のトリセツ

中国が日本に微笑んでいる。気味悪い。でも悪いことではない。どうしたらいいのか?
以下は、4月24日発行のメルマガ「文明の万華鏡」から。

 日中関係が改善のトレンドにある。いいことだ。不必要な対立を続けるのはばかげたこと。改善は、日本、中国双方にメリットのあることだ。

 と同時に、日本国内の感情的な行き過ぎが心配だ。国の間の関係改善は、「仲直りする」というような感情的なものではない。自分達を囲む世界の情勢、利害得失を見極めて歩み寄るだけなので、心を完全に許して何でも渡すというものではない。それに、日本人には反米感情が根強くあり、今のトランプ大統領下の米国への反感も手伝って、「米国に不当にいじめられている」中国に判官贔屓で近寄ってしまう危険がある。

 対中接近はいいけれど、二つのことを忘れないでいたい
 一つは、中国には日本人が戦後75年享受してきた自由と民主主義はない、自分の中国の友人がどんなに好い人物であったとしても、中国を支配する共産党は自分の存続を第一の目標に、専制・強権政治を決して改めないので、国全体は変わらない、ということ。

 僕は現役外交官であったある時期、ある政治家からの厳しい監視と脅迫の下で勤務した経験があるので、自由や権利が奪われるつらさをよく知っている。そういう目に会ったことのない人は、そんなことがあるはずがないと思っているので、言っても無駄だろうが、中国は共産党が一党独裁を続ける限り、自由と民主主義は抑圧され、殆どの人が画一的な考え方しかできない社会であり続けるだろう。

 もう一つは、中国は米国から入らなくなった先端技術、経営スキルを日本に求めてくるだろうが、それに対しては、米国の「過度の反中政策」にいやいや従ってと言うより、日本自身の利益のために、渡すのに慎重であるべきだということ。と言うのは、中国はそれを使って先端兵器を生産するだろうし、民需用製品を大量に生産してダンピング輸出して西側企業を窒息させ、稼いだ資金で半死半生の西側、そして日本企業を買いたたいてくるだろうからだ。

 中国とつきあうに当たっては、中国の実力を見極めることも重要だ。それによって過度に自信を失ったり、過度に警戒したり、あるいは逆に油断するのを防ぐことができる。
1) まず中国のGDPはバブルで、水ぶくれしているということだ。中国経済専門家の津上俊哉氏によれば、中国は2008年のリーマン危機以後、それまでの投資主導の成長モデルを一層強化、2009年からの10年間で7175兆円相当の固定資産投資をしており、返済負担からバランス・シート不況を生じている。解消するには普通、10年はかかる。

2) 「中国が技術的にも西側に追いつき追い越し始めた」という報道を見たら、眉につばをつけてみることだ。例えばスマホでの決済。随分便利なようだが、レジの前でアプリを開いてパスワードを入力する時間など勘案すると、西側のクレジット・カードとかデビット・カードとか、あるいは現金の方が便利で速い。

中国では電気自動車の普及がすごいと言うが、これにもウラがある。中国では「電気自動車を生産して販売した」と申告すれば政府の補助金がもらえるので、この数年「電気自動車」と称する車の生産台数はうなぎのぼり。しかし実用になるような電池はまだ世界のどこにもないので、実態はただ補助金をもらうために「何ちゃったって電気自動車」を地元政府や国営企業に買い上げてもらっているか、もっとひどくて数字だけか、いずれかだろう。この場合、電気自動車は、自動車企業が政府から大枚の補助金をせしめては、一部を地元の省に税金として流し、一部は企業自身で使うための、「補助金をもらうためのプラットフォーム」のように使われているだけだろう。

 そして普通の自動車にしても、その世界一という空前の生産台数にはウラがあるだろう。いくら人口が多いと言っても、GDPで米国にまだ劣る中国で、米国以上に車が売れるのがおかしいのである。筆者が昔在勤したスウェーデンは社会主義的色彩の強い国だが、ここではcompany carという習わしがある。企業が車を買い上げ、社員に自家用車として使わせるのである。誰も調べてくれないのだが、中国では政府(地方政府も含めて)、国営企業による車の買い上げがスウェーデンをはるかに上回る率で行われているのではないか? 地方政府は地元自動車企業の車を買い上げているに違いなく、そうやって資金をぐるぐる地方ベースで回しては、管轄地域のGDPをみかけだけ膨らませ、その功績で幹部が昇進していくのである。個人金融資産の大半を富裕層が独占している中国では、本当の自家用車は少なく、需要にも限界があるのでないか?

3) 中国では何でも製造できることになっているが、「産業のコメ」である半導体、そして半導体を製造する機械の大半は輸入に依存していることを肝に銘じるべきだ。最近、「Huawei製品がなければ5Gも使えない」と言わんばかりの報道が目につくが、5Gはまだ始まったばかり。これからフィンランドのNOKIAやスウェーデンのEricssonのような交換機の老舗が信頼性の高い製品を発売していく。そしてHuaweiも、半導体の多くを輸入しているし、「国内で生産している」分も、輸入した機械で生産しているはずである。半導体とその製造機械は、米国が旗を振れば西側の企業は中国への輸出を制限し、それは中国経済に大きく響く。

日本では、米国に「過度に叩かれている」Huaweiに判官びいきの同情を示す向きもあるが、シンガポールでは2016年12月5日、インターネットや電話が広範囲にわたってほぼ24時間不通となった。これが台湾の祭英文総統が当選したばかりのトランプに異例の電話をして世界の話題を呼んだ直後であったため、中国がHuaweiの交換設備を操作して報復(台湾と緊密な関係にあるシンガポールが電話会談の仲介でもしたのだろうか?)したのだとの風評が広がった。単なる風評だろうが、Huaweiを単純に信用するのもナイーブだろう。

 以上の事情があるからこそ、米国方面を「閉められた」中国は、日本に微笑んでいる。しかし中国という国は、他人の金で金持ちになると、軍備を増強してその他人に飛びかかってくる国だということを、我々は肌に刷り込んだ。共産党独裁を直さねば、中国はいつまでも変わらないだろう。何をするかわからない国は、壁の向こうに押し込めて、取り引きは城門を通じてのものだけにする。そういう態度が必要だろう。僕も中国人の友人を持っているし、その人達は素晴らしいのだが、そのことと国の間のつき合いは違う。
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