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世界文明

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2013年10月 5日

神々の黄昏 ジャイアンツのエラー

先日、N響のコンサートでワグナーの「神々の黄昏」を聞いてきた。ラインの川の向こうにそびえるワルハラの城の屋台骨が一つ一つ地に崩れ落ち、最後には悠久の川の流れが舞台一面を滔々と満たす(というのは、昔バイロイトで見た実演の話し)。
そして今、巨人―阪神の今年最終戦を見終わったばかり。ジャイアンツの若手がボロボロとエラーで、俊英投手の足(手)を引っ張った。あってはならない、この光景。

――この頃、世界の屋台骨が一つ一つ地に墜ちてきているような、「神々の黄昏」といった空気を感じている。米国ワシントンでエラーがボロボロと出ているからだ。おかげで世界の屋台骨も、みしみし言い始めた。まあ、こういうことは戦後何度もあったので、今回も米国は盛り返すだろうが、ワシントンでの足の引っ張り合いがあまりにひどい。米政権は加速度的に内向き、と言うか、内政に専念せざるを得ない状況になっている。

中国は、米国が混乱しているからと言って、それを利用するべく拙速に動くことはしないだろう。今、下手に動けば、米国内を団結させてしまうからだ。それよりも心配なのは、日本の保守層。時々米国に煮え湯を飲まされるような思いをしながらも、日米同盟を守ってきた人達。彼らが米国を過早に見限って、中国、韓国、北朝鮮に高飛車に出ることが心配だ。

それにしても、米国では今、多数の議員が全米税制改革協議会(ATR)代表のグローバー・ノーキスト(Grover Norquisthttp://en.wikipedia.org/wiki/Grover_Norquist)なる野心家に操られている。選挙に当たって、ATRが求める増税反対の誓約書に署名し、見返りに票を出してもらっているからだ。ノーキストは、極端に「小さな政府」を求める人物で、差しあたってはオバマが第1期に導入した国民健康保険制度を葬ろうとしている。「小さな政府」だから、世界に対する関与も大幅に縮小して愧じないだろう。

オバマは、この議会の状況こそが、今最大の課題だと思っているのだろう。シリアの化学兵器問題では「迷走」を批判されたし、10月アジア歴訪をキャンセルしたことで、TPPを年内に基本的に上げるという公約も先が見えなくなった。それでもあえて、ワシントン政治の行き詰まりに対処する。一年後の中間選挙で、議会と大統領の「ねじれ」を解消することが、彼の最大の課題なのだろう。

日本は今キレるべきではない。中国は嫌がらせ以上の挙には出られない(跳ね上がりはあるかもしれない)ことを見透かして、米国をしっかり支えることだ。オバマは、これまで同盟国からそうしてもらった経験がない。そういう状況では、同盟国を難事に支えようという気も起きにくいだろう。

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