2011年10月 1日
経済学初歩 社会は一度豊かになるとすぐには貧乏にならない
日本では産業の空洞化が叫ばれ、就職も難しいようだが、それでも1970年初頭、僕の初任給が2万円そこそこだったレベルにすぐ落ちてしまうわけではない。戦後の経済成長で築いた富(そのかなりの部分は、欧米に電気製品や自動車を輸出して吸い上げた富だ)が年長世代の貯蓄として残り、それが社会を循環してはみなを少しずつ潤し、GDPのレベルを維持しているからだ。
わかりやすい例。
僕の家の近くのテニス倶楽部。会員は引退世代がほとんど。それが今度、室内テニス場を作るので工事を始めた。つまり引退世代の貯金の一部を手に入れたテニス倶楽部が、その利益の一部を使って地元の建築企業に注文して大きな建物を作る。
今日見たら、まだ整地の段階なのに、5人くらいの若者たちが働いていた。この5人は働いて、社会に蓄積されている過去の富の一部をもらう。それは、彼らにとっての現在の富というか、収入なのだ。彼らはそれで食料を買い、貯金していつかは家も買うだろう。
こうやって一度稼いだカネは次から次へと売買を仲介していくので、GDPはなかなか減らない。
ならばカネを沢山印刷すれば社会は豊かになるのかというと、そんなことはない。モノやサービスが提供される以上にカネを印刷すると、それはインフレを呼ぶだけの話だ。
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