Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
ChineseEnglishRussian

経済学

Automatic Translation to English
Automatic Translation to English
2010年8月13日

日本経済、自縄自縛からの脱出Ⅱ ――デンマーク・モデル?

デンマーク・モデル?
品のいいデザイン、世界一と言えるほどおいしい食材の数々。シャイで親切な国民性。デンマークには日本に似たところがある。だが、この国が日本と同じだと思ったら大間違い。デンマークは小国だから、外国との関係なしには生きていけない。外国に取り囲まれているとは露知らぬかのように、「善い国」とだけ時々付き合っていけばいいと思っている日本人とは違う。デンマーク人は昔から、他を侵略し(アングロ・サクソンと言われる英国も、実はデンマークに支配権を乗っ取られたのだ)、あるいは他から侵略されて(近くは第2次大戦中、ドイツに占領されていた)生きてきた。

国内では昔から、英語やドイツ語のテレビを受信できたし、英語もドイツ語もデンマーク語に近いので学校で少し習っただけでできてしまう。輸出はGDPの33%分に相当し、これはドイツの約40%には及ばずとも、日本の約16%をはるかに上回る。自分の言語、自分の文化、自分の社会に強烈な誇りを持ちつつも、デンマーク人が生きていく上で外国で働くこと、外国人と通婚することは常にごく当たり前のオプションとしてある。つまり日本語で言う「国際化」された国なのだ。

そして人口が550万人だから、社会にいつもゆとりがある。過当競争があまりない。それでいて、大都市の繁華街にはにぎわいもある。
そして、北欧人はもともとはヴァイキングなのだから、日本人よりよほど自立心がある。個人と政府との関係ももっと合理的で、ドライである。

北欧というと、われわれはスウェーデンの方を思い浮かべがちだ。確かにスウェーデンは世界的大企業も多く(随分少なくなったが)、社会保障も整っている。自分はスウェーデンに在勤もした。だが今回は家内の国デンマークのことを少し真面目に勉強したので、そちらの方を紹介したい。

(イ)デンマークは、大企業こそ少ないものの工業国だし、食品の質の高さと美味しさは世界最高だ。工業製品も高い文化水準に支えられているので、性能はもちろんデザインの面では世界をリードしている(家具、Bang and Olufsenのオーディオ機器、Georg Jensenの装飾品等)。

(ロ)そしてデンマーク人の生活水準は高い。それも成金的でなく、質素さを維持しながらごく自然に高い水準で住んでいる。それは社会常識になっている。小中校教師で月給平均約60万円(ただしそのうち半分くらいは税金で持っていかれる)だが、それでも5 LDKくらいの広々とした家に住んで当然と、彼らは思っている。
介護つき(但し軽度のもの)老人ホームは市営のものでも待つことなしに入ることができ、1人で80平米ほどの1LDKを使うことができる(但し入居者の切実度に逆比例する料金が年金から差し引かれ、貯金を持っていると料金はさらに高くなる――以上8月15日に修正)。
街には石造りで高さ、様式の揃った家がならび、電信柱や電線はあっても景観を妨げないように按配されている。

(ハ)1990年以降、労働時間は週37時間で、毎年5週間プラス3日間の有給休暇が取れる。欧州ではこのような長期休暇は常識であり、「同僚に迷惑をかけるから」といった意識は見られない。
おそらく欧州では競争より住み分けが経済の原則になっていて、担当者が休暇のときはその担当の案件は誰も知らなくて当然、進まなくて当然、というぐあいに許容度が大きいからであろう。

(ニ)そして何よりも、高度な社会保障が経済の重荷になっていないようで、経済は活気があり(世界金融恐慌までは)、外国企業もデンマークに立地(して、EU全体をねらう)することを好んでいることが、われわれの関心をひく。日本の場合、大企業は多数あっても、それがもう生産の半分は外国に移してしまったがために、税収や雇用で以前ほど大企業に頼ることはできなくなっている。

従ってこの小論では以下、次の2点を点検してみたい。
①デンマークはどうやって社会保障と経済成長を両立させているか?
 社会保障の財源はなにか?
②もしかして、社会保障自体が社会全体の需要を高め、経済成長を実現する要因になっていないか?

続く・・・・

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/1136