Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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経済学

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2018年12月 5日

日本経済はやっていけるか? ひとつの試算

日本は、次第に輸出能力を失っている。貿易黒字より、海外生産で儲けたのを送金してくる方が大きくなっている。どこまでの輸出が最低限必要か。試算してみた。
これは28日配信したメルマガ「文明の万華鏡」の一部である。

 世界では、「地産地消」のトレンドがずっと続いていて、輸出するよりも現地に直接投資して工場を作るのが主流になっている。日本の製造業の生産の3分の1強は海外で行われているし、そのためもあって輸出額は2007年の7143億ドルに対して2017年は6981億ドルになっている。その代わり、日本企業が海外で稼いだ分の一部分(全部ではない)は配当とかライセンス使用料の形で(第1次所得収支)日本に年間約18兆円(2016年)還流している。これは2017年の貿易黒字額4兆円の4倍以上に相当する額である。これは税金、あるいは日本本社の社員への給料等の形で、日本経済に貢献している。

 そして日本の製造業は、最終製品は海外で作るのが増えているが、それを作るための機械や部品は日本から輸出する分が多い。この機械や部品は、韓国や中国、そして台湾の企業にも使われている。例えて言えば、台湾のホンハイが中国の工場でアップルのiPhoneを組み立てれば組み立てるだけ、日本からの機械や部品の輸出が増えるという構造になっているのだ。日本からの電子部品の輸出額は2017年8兆円で、1995年当時の自動車輸出額5兆円を大きく上回り、かつて日本が電気機器輸出で世界を席巻、電子立国と言われていた頃の面影を残している。

 これから、自動車の輸出は減るだろう。2017年の貿易黒字は4兆円だったが、対米貿易黒字は7兆円もあり、その80%は自動車輸出による。つまり日本は対米貿易がなければ貿易赤字になっているのであり、その多くを自動車輸出で稼いでいる構造になっている。米国の街頭では、目に入る車の7割以上が日本車である。これはやり過ぎであり、摩擦を招いて当然だ。

また電子部品、自動車部品の面での日本の優位も、侵食されてくるだろう(電子部品の面での脅威は中国の民営企業、そして自動車部品の面での脅威はドイツの企業である)。そして、自動車、電子部品に代わる、輸出の柱は出てこないだろう。

 となると、日本はどうしたら今の生活水準を維持できるのか。基本的には、今国内にあるカネで消費し、その分を生産し、生産に必要な投資をしていけば、そして必要な輸入を確保できるだけの外貨を入手できれば、そして円が外貨に対して減価しなければ、日本経済は回っていく。この中でのキーになる問題は、消費をどうやって維持、刺激していくかということと、必要な輸入を確保できるだけの外貨をどうやって入手し続けるかということである。このうち、後者について考えてみる。

 今の輸入額は67兆円(2017年)。うち食料の輸入額は変わるまい。変わり得る、そして変え得るものは、エネルギー資源、鉄鉱石等の資源、つまり加工貿易に必要なものである。輸出が減少すれば、これら資源の輸入量も減るからである。計量は難しいが。更にエネルギー資源の輸入は、日本国内での代替エネルギー資源の開発で、更に減らすことができるだろうし、これからはおそらく原油価格は低下の趨勢になると思われるので、輸入金額も減少していくだろう。と言っても、石油・LNG以外で大きく減額し得る品目は見当たらないので、毎年60兆円程度の輸入は必要であり続けるだろう。

  前述した海外での直接投資から上がってくる配当、ライセンス使用料等の年間約18兆円。これはあまり変動しない。だとすると、40兆円分程度の輸出を何とか確保していけば(2017年の輸出総額は78兆円で、うち12兆円ほどが自動車輸出)、輸入するのに必要な外貨は確保できるということだ。あとは国内で円を少々増発してでも、新しいサービス分野を拡張し、賃金レベルも上げて行けば、更に成長していくこともできるだろう。年間1%強以上の実質成長は確保しておかないと、増加する一方の予算ニーズに対処できなくなる。

ものづくりの分野では、日本が何を開発しても中国が2年もあれば追いついて市場を奪っていく今の時代、日本は何を輸出していったらいいだろう?おそらくパテントでがちがちに守った上で、人工筋肉のHALであるとか、飛行機・自動車製造用の炭素繊維とか、これに代わるセルロース・ナノファイバーとか、ヒートテックとか、燃料電池とか、手を変え品を変えて、単打、代打を積み重ねていくのだろう。スタート・アップ企業が先端を切り開き、大企業がその資力とネットワークで大量生産と販売・輸出を引き受けていく。

但し後ろ向きの気分で、「これで大丈夫」的なマインドになると、じり貧になるだろう。世界に進出し、世界で競争力を維持する気構えでやっていかないと、海外の工場で作る製品も競争力を失い、円は限りなく減価し、国内のインフレは進行して、生活水準は急落していくだろう。

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